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9 メガネ、平等を問う

 やあやあ、どうしたんだい?

 眼鏡で見れば豚の重さを測れるなんて未来的な眼鏡を知ってしまったみたいな顔をして。

 私だよ私、メガネだよ!重さがわかるってすげぇな!


 さて、セレナードが矢で射貫かれて一日が経ちました。

 セレナードは無事に命には別状はないとはいえ、治療スキルを持っているミーティア様が一晩傍にいてくれたよ。ルデルやクデルも力を注いでくれたらしく、何かあればすぐに動けるようにセレナードの傍にいてくれた。アンちゃんはノヴィルの人に顔を出すのは避けたいので腕の傷をフォルモさんが大雑把に処置してくれて、まだ左腕を動かせないけれどすぐ治るだろうって言われた。ナハティガル君も警備兵が警戒してセレナードが倒れた瞬間にすぐにその場から離してくれたので危険は何もなかったそうだ。

 死者を出すことはなかったけれど、とんだ建国記念になってしまった。

 こんなトラブルがあっても客人として来た皆さんはメガニアを危険視してくれることはなかった。ノヴィルの人たちはこれからの発展を願ってくれたけれど、プレニルの人は帰れなくなってしまった事に絶望していた。でもそれも土スキルが得意な人が集まって土で不格好な橋を作ってくれたので、今朝プレニルの人たちは自分の家に向かって帰って行った。そのまま残れる人たちは橋を修理してくれている。

 帰っていくプレニルの人の会話の中で気になる事があった。でもその人たちに聞くと言葉を濁らせてしまったので、ルデル辺りに聞こうとセレナードが寝ている部屋にやってきた。セレナードは規則正しい寝息を立てていて、その傍の二人掛けのソファにミーティア様、その後ろに護衛らしい女性2人が立っていた。


「メガネ様、おはようございます」

「おはようございます。……ミーティア様、ここにルデルという犬とクデルという少女はいませんでしたか?」

「お二人は朝食を取りに行っております。先程まで私が朝食を取ってまして、歌姫様に何かないように交代で朝食に行っているのです」


 そうだったのか。と何度も頷いて見せたが、流石にそれは駄目ではないかと思った。何せミーティア様はノヴィルの姫巫女様で、本来は客人として迎えなければならないのに。そして本来はもうノヴィルに帰っているはずだったのに。


「ミーティア様、申し訳ありません。我が国で対応しなければならないのにミーティア様のお力を借りてしまいまして」

「気になさらないでください。治療スキルなんて特殊スキルを持っているのですから、非常時に使わなくては私の気が落ち着きません」


 その笑顔には迷惑だとか不安だとかもない、まさに天使の笑顔だ。初対面でも気づいていたけれど、ミーティア様すごくいい子。マジ天使、女神様。


「にしても……。やはり歌姫といえど黒人に害をなすなんて、プレニルらしいところではありますね」


 ノヴィルの姫巫女といえど、ミーティア様は何か知っているようだ。一言入れてからミーティア様の対面にあるソファに座る。


「あの、プレニルとは平等な国と聞いていたのですが、黒人に対しては平等ではないのですか?」

「えぇ。プレニルは平等な国ではありますが、その平等というのは一人の人間を基本として皆がそれに合わせるという意味での平等です」

「合わせる。そうなると、下の者も上の者もいるわけではないと」

「便宜上はそうですが、その実、平等なんて無い国です。指針となる人とは違う者、例えば手足の欠損、肌の色の違い、片親である、天涯孤独である、そのような者は下とみられ、下手をすれば殺されてしまいます」


 殺される。その言葉に思わず息を呑んだ。ミーティア様は私の様子に一度口を閉ざしたけれど、私はプレニルを知りたかったから続きを促した。


「……私もプレニルには行った事がありませんので、どこまでが本当かわかりません。ですが私達の考える平等とは違うという事だけはわかります」

「歌姫はノヴィルで奴隷をしていたと聞きました。ノヴィルでは黒人に対してどのような対応をしているのですか?」

「失礼。それに関しては私が」


 後ろに立っていた女性の内の一人が片手を挙げた。ミーティア様が許可を出し、彼女は私達の間に立つ。もう一人のイヤフォンをした少女はミーティア様の後ろから動く様子はない。


「ミーティア様の護衛であるオクルスと申します。奴隷に関してはミーティア様は詳しくありませんので、口に出す事をお許しください」

「大丈夫です。お願いします」


 オクルスは微笑を見せてから少し言葉を選びながら説明を始めた。


「わが国では黒人を積極的に奴隷にしてはおりません。しかし、プレニルから奴隷としてノヴィルに連れてきて商売を始める者に対して処罰をすることはありません。何故かといいますと、彼らは従順な働き手となるからです」

「働き手?」

「えぇ。自由に扱える働き手、です。どんな仕事をさせても文句を言わずにこなしてくれる存在です。そういう存在に喜ぶものが多いのです。ノヴィルではその人の実力によって上に上がる事も出来ますので、最低の位置にいる奴隷も上に上がる機会は勿論あります。しかし奴隷によっては上から指示を出されて辛い仕事をしていても、食事や寝る場所を確保してくれるだけで有り難いからとノヴィルで奴隷としている事を良しとしているものもいます」

「それは、奴隷たちにちゃんと聞いているという事ですか?」

「そうですね。まぁ、隠れて無理矢理働かせている者もいますが、見つけ次第こちらで取り締まりするようにはしております。我々は不平等的な考え方ではありますが、だからこそ自由に動けるのです」

「……奴隷解放は国を通さなければできないと聞いた事があります」

「奴隷の持ち主が困るから、というところが大きいですね。奴隷の持ち主が目を掛けていた奴隷が攫われ、勝手に奴隷解放され、しかも奴隷の持ち主の弱みを握ろうと情報を聞き出していたという事件もあったので少し取り締まる事にしたのです。奴隷の中にも奴隷でいたいのに勝手に解放されて路頭に迷ったという者もいたりしましたし」

「……考えられているのですね」

「誰しもが実力で上がれる機会を増やす為ですね」


 ミーティア様が少し困ったように眉を寄せる。


「本当はそのような格差が無い方がよろしいのでしょうけど、そもそもそういう格差を無くそう!と言ってる方が一番差別をしているような物なのですよね。我が国は不平等な国と言われてますが、人々に平等に上に上がる機会は用意したいと思っているのです」

「簡単に平等とは言えませんね。……ノヴィルでは活躍している黒人の方はいらっしゃるのですか?」

「残念ながら……。プレニルにいる時と同じような対応をされると恐怖しているかもしれません。今よりいい暮らしというものを知らないのかもしれません」


 そう言ってからミーティア様はまだ眠っているセレナードに視線を向ける。


「だからこそ、歌姫という立場を与えられたセレナード様は黒人から見れば異質で、それでも上手くやれば彼らにとっての希望になると思うのです。目の前で傷を負ったから、というのもありますが、彼女の存在が我が国での競争心に繋がってほしいという気持ちもあって助けたのです。結局自分の為で申し訳ありません」

「人間というのはそういうものでしょう。それにミーティア様自身というより、ノヴィルの国の為のお考えじゃないですか。国の為に動こうなんて難しいと思いますよ」

「そう言って頂けると嬉しいです。ありがとうございます」


 ミーティア様の笑顔を見れるのが凄く嬉しい。無意識に笑顔にさせたくて褒めてしまうぐらいには。ミーティア様みたいな方が国の上の位置にいるのは国民が羨ましい。変な考えを持っている様子も無いし、実力主義なノヴィルとはいえ住みやすそうに思えてしまう。

 プレニルの内情を思ったより知っているようなので、この際だから黒人の事とかも聞いて見よう。


「黒人の方はプレニルに多いのでしょうか?」

「そうですね。黒人の村があったと言われているのもプレニルですし」

「だからこそ、プレニルが黒人を奴隷にさせやすかったと?」

「黒人はどうしても目立ってしまいますしね。奴隷ではない黒人がどれ程残っているかは流石にこちらでも把握できません」


 オクルスもこれ以上は知らないようだ。ミーティア様は不思議そうにオクルスを見る。


「貴女のスキルでもそこまではわからないの?」

「見るだけでそれが奴隷か奴隷じゃないかなんてわからないわよ。プレニルのほうを見ているのも嫌だし……あ、失礼しました」


 口調が崩れた事を気にしてオクルスは口元に手を持っていく。気にしないでくれと首を振っておいた。

 にしても、差別関連はなかなか面倒だ。その辺はプレニルとは仲良くなれそうにない。いや、今の時点で仲良くしたいなんてほとんど思えてないけれど。

 他国の話ばかりでは失礼かと思い、ノヴィルの話を聞こうと口を開く。でも私の意識はミーティア様ではなく今上半身を起こしたセレナードに向かって行く。


「セレナード!」


 無事に目を覚ましたことに安堵して立ち上がり、セレナードの傍に駆け寄る。セレナードは何か言おうとして口を動かすが、その口から声は出てこなかった。怪我のせいかと私は足を止めてしまったが、ミーティア様がすぐに駆け寄ってセレナードの首元に手を翳した。


「……怪我は治っております。恐らく精神的な物かと」


 精神的な物、となると治療は難しいだろう。折角勇気を出して人前で歌ってもらえたのに、それが仇で矢を打たれてしまったならそうなっても仕方がない。


「後で筆談できるもの持ってくるね。声が出なくてもそれで意思疎通は出来る……ん?」


 私が言っている途中でセレナードは私の服の袖を掴み首を振る。どういう意味だろうか。


「……恐らく、セレナード様は文字が書けないのでは」


 オクルスの言葉に目を丸くした。ミーティア様もあぁと納得する。


「わが国でもまだ識字率は低い状態でした。元奴隷であった歌姫様が文字がわからなくても仕方がありませんね」

「あー……識字率は盲点だった」


 メガニアでは識字率はどのようなものなのだろう。文字を知る事でやれることも増えるはずだ。好きな事をしてもらう為にも、今後に役立てる為にも、文字を知らない人に教えるのもいいかもしれない。小説や漫画もこっちでも作りたいし、どうにか教育しなければ。

 セレナードの表情を伺えば、絶望を感じているような暗い表情に変わっている。恐らく、好きな歌を歌えないからだろう。好きな事ができないなんて辛い気持ちはすごくわかるけれど、でもこれはすぐになんとかなる問題ではないだろう。気にするなとは言えないけれど、今はとにかく療養する事を重視してほしいものだ。


「大丈夫じゃないかい?かすかに声は聞こえるし」


 そう言ったのはミーティア様の後ろにいたイヤフォンをした子だった。彼女は自己紹介なんかはする様子はなく、仕方ないと言ったようにオクルスはため息をついた。


「失礼をお詫びいたします。彼女はアウリス、人より耳が良い騎士です」

「耳が良い?セレナードの声が聞こえるなんて本当に良いんですね」


 私にはそのかすかな声も聞こえない。ミーティア様もオクルスも聞こえていた様子はない。良いにしても本当に超人レベルのようだ。


「精神的な物ならミーティアもここにいてもやれることないだろ?さっさと帰ろうじゃないか。ここは騒がしいよ」

「アウリス、もう少し我慢できない?」

「無理。この子が歌う前のあの変な音がどこかから聞こえてくるんだよ。すごくうるさい」

「ごめんなさい、あの楽器はまだ完成とは言えなくて」


 本当に耳が良いらしい。私には楽器の練習の音なんて聞こえない。

 不機嫌そうだったアウリスだったけれど、その視線を再びセレナードに向けた。


「うるさい音ばかりだったけど、彼女の歌は凄く気持ちいい音だったんだぞ。早く声出るように頑張ってくれよ」


 その言葉にセレナードは目を丸くしたが、すぐに目を細めて小さく頷いた。

 ミーティア様がセレナードから離れ、別れの挨拶に入ろうとしたけれど、部屋の扉が叩かれた。こちらから返事をすれば、扉が開いてクデルとフォルモさんが入ってくる。クデルはセレナードの起き上がっている姿に嬉しそうに近寄った。


「セレナードさん、目が覚めたのですね」

「……まだ声はでないようです。クデル様、私はそろそろ帰らねばなりませんので、後はお願いします」

「い、いえ!むしろミーティア様がいなければ私だけではセレナードを救う事はできませんでした。助力頂きまして本当にありがとうございます」


 そう言って頭を下げたクデルに習ってセレナードもミーティア様に向かって頭を下げた。

 思えば、クデルとルデルがやってきてからずっと世話を買って出てくれたのがセレナードだった。その縁で仲良くなったのか一緒にいるところを見る機会が多かった。だからこそクデルもセレナードを救おうとしてくれたのだろう。後でクデルの行動を聞いて褒美に何か渡さなきゃ。美味しい物がいいかな。

 と、脱線しそうになる頭を振ってフォルモさんに視線を移す。


「フォルモさんはどうされたのですか?」

「アン坊と当主……、猊下と共に地下の牢にいるんだ。嬢ちゃんも行った方がいいと思って呼びに来た」

「な、ナハティガル君も地下に!?」


 ここナハティガル君の屋敷には地下があり、そこは倉庫と数個の牢屋が並んでいる。捉えたシバをとりあえず牢の中に入れているわけだけど、でもナハティガル君が行くような場所じゃない。すぐに移動しなきゃ。


「それと、ミーティア様に会えると思ってここにきた」


 フォルモさんの言葉にすぐに動こうとした私の足が止まる。ミーティア様も懐かしそうに目を細めてフォルモさんを見ていた。


「お久しぶりですねフォルモさん」

「お久しぶりです。話は聞いておりましたが、お元気そうで何よりです姫様」

「姫様はやめてください。フォルモさんはもうノヴィルの兵士ではないのですから」


 あぁ、ノヴィルで知り合いだったのか。ミーティア様が監禁された姫様、フォルモさんが元軍隊長。そりゃ多少の接点はあったでしょうよ。そう思っていたけれど、次のミーティア様の言葉に出ていくわけにはいかなくなった。


「アンブラは見つかりましたか?」

「残念ながら、姫様の依頼の少年らしき者は見つかりませんで。プレニルの方はまだ探しておりませんが」

「そう……。ここにもいないなんて」


 確かフォルモさんは誰かの依頼でアンブラを探していると言っていたけれど、まさかその依頼主がミーティア様だったなんて。

 できるだけ自然に、こちらの動揺がばれないようにミーティア様に声を掛ける。


「ミーティア様はアンブラという人を探しているのですか」

「はい。ずっと探しているのですが」

「何か罪を犯した人なのでしょうか?よければ私も探しますよ」

「本当ですか?あ、罪人というわけではないのですが」


 そう切ってからミーティア様は少し頬を染め、恥ずかしさを含めながら言った。


「アンブラは、私の運命の方です」

「は?」

「え?」

「失礼しました。予想外の答えに驚いてしまいました。お許しください」


 予想外のことすぎて思わず声が漏れてしまった。ミーティア様は少し驚いた表情を見せていたけれど、気にしていないのか言葉を続けた。


「驚かれるかと思いますが、その、天啓を受けまして。出来うる限り探しているのですが見つからないのです。メガネ様も探してくださるのはとても有り難いです」


 私はフォルモさんに視線を移す。フォルモさんも探す理由は知っていたらしく、なんとも表現しがたい表情を作っていた。これが権力乱用か。実はこのためだけにフォルモさん騎士団長辞めたわけではないよね?

 なんとか笑顔を作り、私はそれをミーティア様に向けた。


「フォルモさんから特徴は聞いておりますので。ミーティア様が早くアンブラさんと会える事を祈っております」



 ○―○



 用事があると言って部屋でミーティア様と別れた。念のための送り迎えはフォルモさんに依頼してある。セレナードの事はクデルに任せたし、残りの不安要素はナハティガル君の無事ぐらいだ。

 地下の牢屋に向かうと一つの牢の前にアンちゃん、ナハティガル君、ルデルが集まっていた。特に拷問している様子も無く、少し戸惑っているようにも見える。


「そこに集まってなにしてるの?」


 その空気を変えようとのんびりした声でそう声を掛けると、三人の視線が私に集まった。そして三人は牢の方に指を指す。ルデルは前足を使っている。近づいて牢の中を見るとシバは正座をしていた。……一応簡易ベッドもあるし、椅子も用意されてるのに床に正座だ。ジャパニーズ土下座でもしてくれるのだろうか。

 目を閉じていたシバは私の存在に気づきゆっくりと目を開く。


「メガニアの姫巫女様でしたか。このような形でのあいさつを失礼いたします。私プレニルの犬の一匹、シバと申します」

「ご、ご丁寧にどうも」

「大変恐縮ではありますが、私の願いを聞いてくださいますでしょうか」


 ここから出せとでもいうのだろうか。流石にそんなことを許すような眼鏡じゃありませんよ。


「この度のお詫びの為、自害をと思いましたが武器を奪われている状態です。もしよろしければ剣をお借りしたいのです。そして介錯して頂ける方も用意してくだされば有り難いのです」

「いやいやいやいや」


 何この人怖い。昔の侍ですか。切腹でもするんですか。


「俺らにもこんな態度だ。こいつから情報を得る前にこいつの処遇を決めた方がいいかと考えてた」

「皆集まってそんな状態なのはどうかと」


 私は少し考えてからアンちゃんとナハティガル君を見る。この二人が拷問とかできそうに見えない。ここは私が前に出よう。


「後は私に任せてアンちゃんとナハティガル君は戻っていいよ。やることあるんじゃない?」

「しかしメガネ様が危険では」

「ルデルがいるから大丈夫だよ。こんな大きな犬も用意して脅されたら怖いんじゃない?」

「……わかりました」


 少し不安そうな表情を残しながらナハティガル君とアンちゃんは地上の方に向かって行った。それを見送ってから私はルデルを見る。


「ルデル、他の人には内緒にしてねー?」

「別にいいけど、こいつなかなか喋らないっすよ」

「それでもいいよ。私それなりに怒ってるんだから」


 そう言ってから私は足を上げ勢いよく牢の柵を踏みつける。思ったより音が響いた。


「貴様が我らの歌姫に害をなしたのか」


 出来る限り神様っぽい口調で。前世でも怒る事は少なかったけれど、本当に怒った時を知っている友人からはマジ怖いと言われていた。その時を思い出して、感情を最大に出さないように。でも虫を見るような目線で。

 結構聞いたのか、シバはごくりと唾を飲み込んだ。


「はい。確かに私が歌姫を射貫きました」

「弓矢は、もう一人の仲間が大槌を取り出したのと同じ魔法か?」

「……我らの神の奇跡の力です」


 それに関しても詳しく聞きたいけれど、今はそれではない。


「何故彼女を射貫いた」

「……それは簡単ですね」


 シバはにっと笑って手錠でまとめられた手で頬を指す。


「肌の色が違う。我が神が好む平等を目指すには目障りな存在でしょう。奴隷として生きていく立場であるにも関わらずあのように前に立つ行為をするなんて」

「肌の色が違うだけで平等じゃないと言うのか」

「我らの肉体は神が授けた者です。そこでもう神は肌の色で人を分けているのですよ。神と同じ肌の色であるものこそは平等な存在であり、黒い肌のものは生まれた時点で平等になれない咎を背負う」

「何故肌の色で決めつける。プレニルの平等の事を聞いたが、酷く気持ち悪い」

「全くですね」


 怒ってくるだろうと思ったが、シバの口から出たのは同意の言葉だ。相手を怒らせて理性を無くさせてから上手く情報を聞き出そうと思ったが、その作戦は出来ないようだ。表情に出てしまったのか、シバはふっと笑い楽し気に言う。


「驚きますか?でも白い肌の全員が平等に生きていると知るには十分でしょう?私も、下手すれば彼女と同じだったのですから」

「……貴方も平等ではなかったと?」

「私は孤児でした。両親と死別したのか、捨てられたのかはわかりません」


 先程ミーティア様が言っていた。指針となる人と違う人は皆下とみられると。孤児だったシバもその内の一人なのだろう。


「……それでもプレニルの犬にまでなれるのですね」

「偶然猊下の目に留まったおかげでしょうね。とはいえ、幸せとは限りません」

「どういうこと?」


 聞いてみたけれどシバは微笑するだけで答えはなかった。ただ、その微笑は消えて突然唸り出す。


「何?仮病?」

「いえ、その。トイに殴られた場所が、ちょっと痛み出しまして」


 そういえば大槌でぶん殴られていたのだった。少し考えてから息を吐き出し、ルデルの頭を撫でた。


「治療できる人を呼んでくる」

「いいのか?」

「貸しをつくるのも手でしょ。まぁ、治せる人がいるかはわからないけれどね」


 あまり期待はするなと一言入れてから地上に繋がる階段に向かった。

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