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(15)〜クレアと母娘の生活〜

(それでも…いい。あいつを…カイヤの仇を、取れるのなら!)


 出来上がったばかりの魔法陣をつかみ、紙が散乱しインクの瓶が床に転がり、先の曲がったペンが放り出されたままの部屋から飛び出そうとして……。




 小さな子どもの泣き声が聞こえた。




「セレスタイト…」




 誰に言われずとも分かる、当然だ。

 何故ならそれがわが子の声で、自分がその子の母親なのだから。



 クレアの手から先程まで掴んでいたものが溢れ落ちたが、そんなことは気にも留めないままに火のついたような声で泣くあの子の部屋に糸か何かで引っ張られるように向かったんだ。



 ―――あの子はその頃、もうほとんど夜泣きをしなくなってたんだ。

 でも、やっぱり子供ながらになにかに気がついていたのかもしれないね。―――




「大丈夫…大丈夫よ、セレスタイト。私が…母さんがあなたのそばに居るわ。だから泣かないで、大丈夫よ」


 クレアはそっと抱き上げて、泣き止んで再び寝付くまで、愚図るあの子を何度も何度も言葉を掛けながら、そっと背中をたたいてあやしていた。




 しばらくして、すやすやと穏やかな寝息を立て始めたわが子の体に毛布を掛けてやり、そっと涙の跡を撫でていると、彼女の耳に今際の際のカイヤの言葉が蘇ったんだ。




『ごめ、んな…クレ、ア。……セレ、ス、タイトを…あの子を、頼ん…だ……。』




 その瞬間、彼女の中に先程の荒れ狂うような激しい感情は風のない日の海のように凪いでいった。

 そして、静かになった所からまた湧き上がるように想いが溢れ始めた。

 ―――彼はきっと知って、気づいていたのだね。

 彼女が抱くであろう感情(痛み)に。

 だから…だったのかな。―――








 彼女は初めて『泣いた』。



「ああ、そうだ。『呪い屋の魔女』だった私に、カイヤしか居なかったように。この子には今はもう、私しか居ない」



 涙を流したことは、今まで何度かあった。



「私が、この子を守らないと…。」



それは確かに間違いなく悲しくて、辛くって。



「そう、そうね。絶望して暇なんて、無い」



 でも、違う。

 その時とは流す涙とは違う。



「私は、いえ…。私がこの子の()()なのだから。」







 その日その時、感じた初めての涙は、彼女の心の奥底から熱く溢れるものだった。





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