表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/18

(9)〜クレアと、カイヤの願い。〜

「なあ、クレア。はじめて会った日から一度聞いてみたかったことがあるんだ。」



 そうクレアに向かってそう言えば、彼女の表情はさっと真剣で暗いものに変わっていった。


「それは、最初に言ってた『話したいこと』のこと?」

「ああ。」



 それはこの一年近く、カイヤがずっとクレアと関わってくるようになった理由だ。



 クレアは先を促すようにじっとカイヤを見つめた。

 そして、その視線におされるようにカイヤはゆっくりと口を開いた。




「君は『人を呪うことが嫌い』だろ?」




 クレアはハッと息を飲みかけた。

 しかし、それをグッと堪えて平然と問い返した。


「もし、もしそうだとしたら?」


 あくまで平静を装って。

 人と関わることを避け続けていた彼女には、この先が分からなかった。

 否、分からない()()しか、()()()()()()




 カイヤはクレアの返答を聞いて、一気に苦い思いが込み上げた。


 こんなこと、問わずにいられるのなら問いたくなんか無かった。

 彼女の心なんて、暴かずにいられるのなら暴きたくなんて無かった。

 彼女が分からない()()をする理由(わけ)なんて、突きつけずに済むなら突き付けたくなんてなかった。


 そして、本当はこの先を言うことが怖かった。

 反面、クレアはきっとはぐらかそうとするだろうと、予想はしていた。


 この先の言葉はきっと彼女を、彼女の、『魔女としてのプライド』という名の心の盾を傷つける。

 でも、だとしても言わなければならない、そう確信していた。

 だって彼女の心は、(プライド)()()で内側からもうたくさん傷ついているのにそれに気づかないままにしようとしているから。

 気づかないままに(プライド)にしがみついて、傷だらけの体を奮い立たせて、誰にも頼らずにたった一人で立とうとしているから。


 だから、真剣な表情でカイヤは言葉を容赦なく続けた。

 もう、彼女が自分の傷を見て見ぬふりが出来ないように。






「だとしたら、クレアはもう人を呪うのをやめるべきだ。君は優しい人だ。だから人を呪った時、君は辛そうなんだ。俺は君にそんな顔をして欲しくない」







 カイヤはそっと、しかし確固たる意志を持ってクレアにこう言った。


 今の彼女は生きたいから生きているわけではない。

 ただ死ぬ必要、死ぬ意味がないから惰性的に生きているわけに過ぎない。

 だから、いくら傷ついて悲しくても、麻痺したまま感じ取らずに済んでいたただそれだけだ。




 カイヤはクレアに生きることへの意味を、意思を、希望を、持って欲しかった。



カイヤは彼女に「生きて」欲しかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ