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平民である俺が王女のお世話係になったのは  作者: レモンチャンネル
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青オオカミ

青オオカミは王宮で手に入る物は何も食べなかった。ミルクや牛の肉を与えてみたが臭いを嗅いだだけで口にしようとしない。羊もヤギも同じだった。やはり家畜は口に合わないのだろう。


アリエノールは真夜中、そっと王宮を抜け出した。月明かりをたよりに馬に乗り山道をゆく。山の中に入ると様々な鳴き声が耳にはいってきた。フクロウの飛び立つ音、野ねずみのカサカサ走る音、甘い樹液に群がる昆虫のカチカチいう音。すべての生命体の位置や形が目を閉じていても鮮明に浮かび上がる。さらに五感を研ぎ澄まし目的の音を探す。

しばらくして草を食む音と水を飲む音をとらえた。馬を木につなぎ、弓を持ち足音をたてないよう風下から獲物に近づく。体からかすかにただよう月下美人の香りをこれから狙う獲物に警戒されないためだ。

森の木がまばらになり目の前に湖が広がった。たくさんの動物が集まって水を飲んでいる。その中にお目当ての鹿の群れがいた。

大きな牡鹿に狙いを定めて慎重に弓の弦を引く。「ヒュッ」矢が空気を切り裂いて鹿の喉に命中した。牡鹿が大きな音をたてて倒れる。他の鹿や動物はちりぢりに逃げていった。離れた所につないでおいた馬に鹿を乗せ、急いで王宮に引き返す。リミットは1時間以内。青オオカミは死後1時間以内の獲物しか食べない。


青オオカミの臭いにびくつく馬をなだめながら牡鹿をおろす。すぐに二匹が走り寄ってきた。牡鹿の臭いを嗅ぐと、いきなり鋼の歯で鹿の筋肉切り裂いてむさぼり喰らいはじめた。骨を砕く音が響き渡る。

「お前達、よほどお腹がすいていたんだな。そうだ名前考えないと」

アリエノールは胸に少し白い毛があるのをレト。尻尾に濃い黒いけがあるのをラトと名付けた。


レトとラトの世話をしだしてわかったのは、鹿以外はウサギや狐を食べること。

一度食べると2日は食べないこと。それに昼間はほとんど眠っている。夜行性のため夜、活動が活発になる。

あとアリエノールと王妃の手をなめるのが大好きだ。歯を立てることはないけれど、なめているときすごく恍惚としている。


「お母様、青オオカミは何年で成体になるのですか?」

「個体差があるのよ。3年から5年かけて成体になるわ。かなりの長寿で100年ほど生きるのよ。成体になると食事は一週間に一度。かなりの量が必要よ。」

「じゃあ、もっと弓の腕をみがかないと」

「お父様にバレないようにね」王妃は心配そうに眉を寄せた。


その時「ギャー」庭中に響き渡る悲鳴が聞こえた。



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