第74話 覚醒スキル
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「皆の者いくぞ! フリエルドの底力を見せてやれ!」
「「「うおおおおおおおおおお!!!!」」」
ハロルドを先頭に衛兵部隊はモンスター達に突撃していく。
だが、そこに氷竜の姿はない。
氷竜はどこだ……?
「──皆さん、上空から来ます」
影が俺達を覆いつくす。
その大きな影は氷竜の大きさを物語っていた。
空を見上げると、白銀に輝く大きな竜が翼を広げ、咆哮をあげた。
「グォォォオオオオオオオオオオオオオオオ」
大気が震えるほどの咆哮をあげた氷竜。
青白い鱗に包まれた身体は、竜族であることを恐ろしく主張していた。
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種族:竜族
名前:氷竜
レベル:200
HP:200000
MP:150000
攻撃:220000
防御:170000
魔力:100000
敏捷:190000
《耐性》
【状態異常無効】
《スキル》
【氷輪吹雪:レベル8】
【絶対的支配者:レベル1(MAX)】
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ば、化物じゃねーか……。
圧倒的ステータスを前に手足が震える。
これがA級か……。
それでも俺たちは負けるわけにはいかない……!
氷竜はゆっくりと地面に降り立ち、余裕そうに佇んでいる。
どれから食べようかと品定めをしているようにも見えた。
「アレン、先に行くよ」
シャルは笑顔でそう言った。
なんでこの状況で笑っていられるんだ……?
不思議に思ったのも束の間。
シャルは剣を投げ捨て、地面を蹴り、氷竜へと向かっていった。
「シャ、シャル! 待て!」
一人で突っ込むのは危険だ。
それに武器である剣を持っていない。
俺は震える声を出してシャルを止めようとした。
「大丈夫。私が負けそうになったとき、アレンなら絶対に助けてくれるから」
──覚醒スキル【魔剣リムテッド】
シャルの手に漆黒の剣が生成されていく。
あの剣にはかなりの魔力が込められていることがすぐに分かった。
いや、込められているのではない。
あれは魔力を纏っているのだ。
今までのシャルが作り出していた魔剣は、魔力を消費し、強度を増した普通の剣だったのに対して、これは何か違うもののように感じる。
シャルが剣を振ろうとしたとき、既に剣は振られていた。
突如として黒い軌跡が現れ、氷竜に一撃を入れた。
しかし、氷竜は気にすることなく、鋭い爪でシャルに攻撃する。
だが、それは黒い軌跡によって弾かれる。
シャルの動きは最小限と表現できるものではない。
始まりと終わりの動作しか行なっていない。
「な、なんなんだ……あのスキル……」
「シャルさんは覚醒されたようです」
シャルのスキルをナナちゃんは知っているようだった。
「覚醒……」
「はい。それぞれの職業は最初の段階では本来の力を発揮できていません。何かしらの条件を満たすことで覚醒し、真の力を手に入れることが出来るのです」
「凄いです! シャルさん凄すぎます! 氷竜を一人で倒してしまう勢いですよ!」
「本当にね。シャルー! いけー!」
氷竜とシャルは凄まじい攻防を繰り広げていた。
しかし最初の一撃以降、攻撃が当たる様子はない。
氷竜が尻尾を振り払うと、宙を舞った雪が鋭く尖り、氷柱のように変形させる。
氷竜が魔力で雪を変形しているのだ。
その氷柱達がシャルを襲うも、黒い軌跡によって全て防がれる。
「魔剣リムテッドは剣を振るう瞬間に時を止め、斬ったという現象だけが残される」
シャルは呟いた。
そうか──だから軌跡だけが残っていたのか。
そして少しずつシャルが氷竜を上回っていく。
ステータスはきっと氷竜の方が上だろう。
だが、それ以上にシャルの魔剣リムテッドと戦闘センスが凄まじい。
「ゴオオオオオオオォォォ」
咆哮と共に突如として氷竜の鱗が氷に覆われる。
それはまさに氷の鎧で、名前の通りの姿をしていた。
……ヤバい予感がする。
「俺たちも見てる場合じゃない。早く加勢しよう」
「はい。ですが邪魔になる可能性もあります。シャルさんが優位である今は最小限の援護だけに抑えておきましょう」
「分かった。クラリスとレナは回復魔法や支援魔法でサポートしてくれ」
「了解。戦えない分、頑張っちゃうからね」
「任せてください。頑張ります!」
俺とナナちゃんがシャルに合流すると、
「シャルは攻撃に集中してくれ。俺とナナちゃんで氷竜の攻撃を防ぐ」
「うん」
氷竜は大きく息を吸い込んでいる。
これはもしや……!
「氷竜はスキルを使う気だ! あれは防げない! 避けるぞ!」
──【氷輪吹雪】
氷竜は銀色に輝くブレスを吐き出した。
俺とナナちゃんは無事に避けるが、氷竜が狙っていたのはシャルだった。
「……ん」
なんとか直撃を躱したが、シャルの右手は凍りついていた。
「シャル!」
レナの声だった。
──職業スキル【癒しの光】
【癒しの光】は状態異常を治すスキルだ。
だが……シャルの右手の氷は溶けることは無かった。