第70話 温泉発見
アイスベアーを難なく倒した。
そしてアイスベアーが仲間になり、幸先の良いスタートとなった。
それにレベルも1上がっている。
「B級モンスターの経験値ってもしかしてめちゃくちゃ高い?」
「どうしたの急に」
「いや、もうレベルが1上がってるんだよ。早すぎないか?」
「え? ……ほんとだ。私も上がってるし。今までC 級モンスターしか倒してなかったから、上がりが早いのかな?」
「B級モンスターはC級モンスターと比べて、かなり強さに差があるため、経験値も段違いです。また、皆様個人のレベルがあまり高くないことも理由の一つとして挙げられます」
俺達の疑問をナナちゃんが応えてくれた。
「ナナちゃんは物知りですねー」
「ある程度、お父様が有用だと判断された情報はデータベースにインプットされています」
「……よく分からないが、ブルーノさんが凄いことだけは分かった」
あの人マジでヤバい。
ヤバすぎて語彙力が無くなった。
「じゃあナナちゃん、C級とB級の中間ぐらいの強さのモンスターっていないの?」
「C級の中でも強い個体、弱い個体はありますが、強いものでも精々ステータスは4万程でしょう。この差が生まれるのはモンスターの進化が関係していると考えられています」
モンスターの進化……。
テイマーである俺にとって、かなり興味深い情報な気がする。
「え、モンスターって進化するんだ」
「はい。条件を満たしたモンスターは進化するようです」
「その条件って分かってたりするのか?」
俺はナナちゃんに聞いた。
「一部では研究されていますが、あまり進んでいません。結果の応用が難しいため、優先度の低い研究として見られているようです」
「なるほど……」
確かに、その情報が欲しくなるのは不遇職であるテイマーぐらいなものだろう。
興味のあるものだけに取り組めるほど世の中は、甘くないってことだな。
「とりあえずさ、氷竜を倒すために強くならなきゃいけないんだし、再開しようよ」
「レナが久々にまともなこと言ってる」
「こらシャル! 私はいつもまともだからね!」
「ほんと?」
シャルはジーっとレナの方を見つめている。
「……少しほんとじゃないかも」
「レナさん、私は根は真面目な人だと思ってますよ!」
クラリスがフォローしていたけど、微妙にフォローになっていない気がした。
◇
その後も俺達はナナちゃんのサポートのもとモンスターを倒していった。
ここにいるモンスターは群れで行動することが無いようで、遭遇するときはいつも単体だった。
おかげでかなり戦いやすかった。
Bランク アイスベアー
Bランク スノートレント
Bランク ブリザードホーク
Bランク アイシクルウルフ
遭遇したモンスターは、この4種類。
どれも仲間にすることが出来て、かなり戦力が上がった。
仲間に出来次第、モンスターを召喚し、戦わせていく。
これで効率はとてつもないことになる。
なにが凄いってレベルがめちゃくちゃ上がることだよね。
もう80レベルだ。
1日で10レベル上がるってヤバくないか?
すぐにレベル上げられるだろこれ。
Bランクを圧倒できなければ氷竜を倒すのは難しいだろう。
少なくとも100レベルまでは上げていきたいところだ。
「ん? なんか煙が出てるね」
もう少しで夕暮れを迎えそうなとき、前方に煙が蔓延していた。
レナがそれを見て指をさす。
「あれは煙ではないです。湯気です」
「湯気? こんな寒いところに何で湯気が出ているんだ?」
「ここフリエルドの地下には多くの湯脈が存在しており、それが湧き出しているのでしょう」
なるほど。
フリエルドは温泉街として昔は有名だったと聞いたことがある。
ブルーノに街を案内してもらったけど、そういった気配は感じられなかった。
「じゃあこれって天然の温泉じゃない!」
レナが嬉しそうに言った。
「この雪景色のなかで暖かい温泉につかるのは気持ちよさそうですね〜」
「入ってみたい」
女の子達は皆、温泉に興味津々のようだ。
「うんうんっ。アレンさえいなければみんなで入れるのにね!」
「もうすぐ夕暮れだし、現れる魔物も強い。俺がいてもいなくても入るべきじゃないよ」
「ハァ〜、そんなだからアレンはモテないんだよ」
「ちょっと心にグサってくるから、止めてくれない? いや、止めてください」
涙が出そうだ。
「え、アレンさんってモテないんですか?」
「そんなことない。アレンはカッコいい」
「やっぱりそうですよね。アレンさん、安心してください。きっとモテてます!」
「ありがとう……そう言ってもらえると助かる」
シャルとクラリスから励まされた。
胸に染みる……。
「ちょ、ちょっと二人とも!? ……えっと、アレン。冗談だからね?」
「お、おう」
「……ふぅ、これで私が悪者になる展開は避けられたわね」
「お前賢いな」
レナを素直に称賛した。
口にするのはダメだろうだけど、こういうところは見習っていくべきだと思った。
「まぁ冗談なのは私もシャルさんも分かってますよ」
「うん」
なんだ、冗談だったのか。
良かった。
……じゃあ俺はモテているのか?
あれ、そんなことない気が……。
よし、この話は、俺はカッコいいということにして流そう。
ポジティブに生きていこう。
「……まぁなんだ。みんな温泉に入りたいんだったら氷竜倒してからお祝いに入ろう」
「お、それめっちゃいいアイデア! やる気出てきた!」
「良いですね〜。楽しみです」
「私も楽しみ」
みんなの士気が上がったようで何よりだ。
氷竜を倒す理由がまた一つ増えたのだった。