第66話 No.7という名の少女
「こ、こんな威力が出るとは……」
「さすが私。やるときはやるね」
驚くクラリスとは対称的にレナはドヤ顔をしていた。
まぁお手柄だけども。
「レナ、グッジョブ」
「レナさんのおかげですね!」
そんなレナにシャルとクラリスは素直に称賛の声を送っていた。
「へっへーん。これからもスーパー万能回復術師のレナちゃんを頼ってちょうだい!」
「本当によくやってくれたよ。戦略の幅も広がったし、パーティとしての連携も問題無さそうだ」
「今日だけは私、調子に乗ってもいいよね」
「おう。存分に調子に乗ってくれ」
「ハッハッハ、くるしゅうない!」
マジで調子に乗ってるな。
ま、それがレナの良いところか。
アイアンゴーレムは残念ながらテイムすることが出来なかった。
【物理攻撃半減】は、かなり魅力的だったが仕方ない。
◇
その後、10階層の奥へ進むと魔法陣があった。
どうやら転移魔法が施されており、乗ればダンジョンから出ることが出来るみたいだ。
ダンジョン攻略が目的でない俺たちは、引き返すことにした。
そしてギルドに戻って戦利品の換金を行った。
換金の際にはギルドカードの討伐記録を確認することが決まりとなっている。
「おや、Bランク指定のアイアンゴーレムを討伐されたようですね。これまでの実績を考えればBランクへ昇格することが出来ますが、どうなさいますか?」
Bランクへ昇格できるとのことだ。
詳しく話を聞くと、俺とシャルとレナはBランクとして認められるようだ。
クラリスは冒険者になって日が浅いのもあり、Cランクとして認定されるみたいだが、実績を重ねればすぐにBランクになれるようだ。
「ぜひお願いします」
「かしこまりました」
Bランクの申し出を断る理由が無い。
手続きに少し時間がかかるようで、今はギルド内で待機している。
するとギルドが急にざわつき出した。
人だかりが出来ている。
何かあったのだろうか。
「なにか揉めているのでしょうか?」
「気になるわよね。アレンちょっと見てきてよ」
「へいへい」
気怠そうに返事をした俺は椅子から立ち上がり、人だかりに近づいた。
「この子に勝てる者を私は募集している。腕に自信のある者は是非名乗り出てくれ」
片眼鏡をかけた細身で知性を感じさせる男が冒険者達に向けて言葉を発していた。
この子とは隣にいる女の子のことだろうか。
小柄で華奢なあの子に勝てる冒険者なんていくらでもいるだろう。
そう思い、鑑定をしてみると驚愕した。
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種族:魔法機械生物
名前:No.7
レベル:1
HP:100000
MP:100000
攻撃:100000
防御:100000
魔力:100000
敏捷:100000
──────────────────────
異様なステータス。
そして種族名が先ほど見たアイアンゴーレムと全く一緒だった。
女の子のように見えるが性別は無く、No.7という名前。
興味がわく反面、少し不気味だった。
「ハハハ、舐めてもらっちゃ困りますよ。ここにいる大半の奴らは、そのお嬢さんより強いはずだぜ」
冒険者の一人がそう言うと、他の冒険者もそれに頷くように同調した。
「それなら良いのだが、確認のために腕相撲をしてくれないか? もし勝てたら金貨を1枚渡そう」
「マジ……? いいの?」
「ええ。勝てたらの話ですがね」
片眼鏡をかけた細身の男はニコッと笑った。
対戦する男を鑑定したが、攻撃のステータス値は20000ほど。
勝てるわけがない。
男と女の子は机の上で腕を置き、互いの手を握った。
腕の太さは倍以上違う。
ステータスが見れなければ、誰もが男の勝ちを確信するだろう。
「お嬢ちゃん、手加減してあげるから安心しな」
「手加減するのは私のほうです。貴方は思う存分力を発揮してください」
「ハハハ、面白い冗談だね」
男は余裕の表情だった。
他の冒険者達も微笑ましそうに、そして羨ましそうにその光景を眺めている。
冗談なんかではないことが分かるのは俺だけのようだった。
「では始めなさい」
片眼鏡の男がそう告げ、腕相撲が始まった。
しかし何も動く様子はない。
「お嬢ちゃん、ほら力を入れてごらん」
「分かりました」
決着は返事と共に着いた。
分かりました、と言い終えた一瞬で男の手の甲が机についていた。
「──え?」
男は目を見開き、何があったのか分からないようだった。
「おいおい、何負けてあげてんだよー」
「優しいなぁー、金貨もらっておけよー」
「い、今のは気を抜いていたんだ。もう一度相手してくれないか?」
他の冒険者達をよそに男は再戦を申し込む。
額からは汗が垂れていた。
「お父様どうしますか?」
「相手してあげなさい」
「分かりました」
再び腕相撲をするが、少女の腕はびくともしない。
「ぐっ、うぐぐぐ」
本気の男に対して、少女は顔色一つ変えることはない。
そしてゆっくりと男の腕を押し、勝利を収めた。
「……マジか」
「……どうなってんだ?」
観戦していた者、対戦した本人を含め、理解が追いついていないようだった。
そんな中、俺は片眼鏡の男に近づいた。
理由は簡単。
恐怖よりも興味が先行したからだ。
「あの子より強いか分かりませんが、良ければお時間頂けませんか? No.7について話がしたいです」