第62話 モンスターお披露目
俺たちは予定通りダンジョンにやってきた。
「ダンジョンの中ってこんな風になっているのですねぇー」
初めてダンジョンに入ったクラリスは興味深そうに呟いた。
俺もダンジョンに入るのは2回目だが、この光景には再び驚かされる。
「地下じゃないよね、こんなところ。地上より地上してるよ」
レナが哲学的なことを言っている。
てか地上してるって何だよ。
「そうですよね。ダンジョンについて知識はありますが……ほんと不思議です」
キラキラと目を輝かせるクラリスは、まるでオモチャを与えられた子供のようだった。
「ワクワクするか?」
「はい! これから冒険が始まるんだなって気がしてすごく楽しみです!」
「……それはどうなんだろうね。前回はアレンが気絶して終わったから」
「えぇ! 一体何があったのですか!?」
あぁ……ゴブ達のことか。
ん、そういえばクラリスには俺がテイマーだということを伝えてなかったな。
「たぶん見たほうが早いよ。アレン出してあげてよ」
レナがちょうど話を振ってくれたので、自然な流れで説明が出来そうだ。
「クラリス。今から俺がモンスターを召喚するから、ゴブリンとかその他大勢のモンスターが現れても驚かないでくれよ」
「大勢? アレンさんの職業は召喚士とかですか?」
「違うな。テイマーだよ」
──モンスター召喚
『お久しぶりッス!』
『あるじ! あるじ!』
『アレンさん! と、飛んでもいいですか!? 早く飛びたいです!』
『水が欲しいでゲコ〜』
『うひょー可愛い子がいっぱいいらぁ!』
召喚したのは上から順に、
ゴブリンのゴブ。
シルバーウルフのサッシュ。
ナイトバードのナイト。
ポイズンフロッグのゲコた。
オークのスケベ太郎。
個性豊かな面子だと召喚してから気付いた。
さて、スケベ太郎を出したのは失敗だったかもしれない。
こいつ……皆をいやらしい目で見てるし。
『スケベ太郎、お前戻れ』
『えええぇぇぇ!?』
スケべ太郎は驚いた顔をし、その場から消えていった。
スケベ太郎にはもう少し色々と教えこまないとダメな。
多すぎても混乱してしまうだろうし、少なすぎてもあまりよく分からないだろうから、このように5種類……いや、4種類のモンスターを1匹ずつ召喚した。
「モ、モンスターが出てきました! そして1体は消えてしまいました!」
「こいつらは俺がテイムしたモンスター達だ。みんな俺の命令には素直に従う」
「え、でもテイマーってそもそもモンスターをテイムするの難しかったですよね?」
「そうだな。だが俺はユニークスキルでテイムすればするほど強くなれる」
「凄いスキルですね……」
クラリスは驚いているが、俺としてはクラリスのスキルの方が凄い気がしてならない。
「今回は前回と違ってモンスターの数が少ないね」
「多分それは臭いからだと思う」
「そんなことないぞシャル。最初に多く出しすぎては混乱を招くと思ってな」
ただ臭いか否かを問われれば俺は何も言えない。
で、でもゴブリンだけだから。
近くて嗅いだことないから分からないけど、それ以外は大丈夫だから!
「まだモンスターを出せるんですか!?」
「そうだな。まだまだ出せる」
「よろしければ見てみたいです。……あ、図々しいですよね。すみません!」
「いや問題ない。これからもう少し召喚しようと思っていたところだからな」
追加でウルフ、ワイルドボア、ブルーボアと機動力があるそうな奴らを召喚した。
ついでにゴブリンも。
ウルフ達の背中に乗っけさせるの地味に強いからな。
「わぁ、ゴブリンがいっぱい……。でもどのモンスターも優しそうですね」
「そうだな。テイムしたら何故か顔つきが変わったよ」
「基本的に良い子ばかり」
さっき臭いと言っていたシャルがモンスター達を褒めてくれた。
なるほど、臭い=嫌い ではないというわけか。
「まぁそうよね。アレンの言うことちゃんと聞いてるみたいだし、私たちのことも襲わないし」
「それにアレンを慕ってる」
「え、シャルなんでそんなこと分かるの?」
「見てたら分かるでしょ?」
逆になんで分からないの? と言いたげにシャルは首を傾げた。
「……ごめん。なにも分からない」
俺も同感である。
「アレンさん実際のところどうなんですか?」
クラリスが興味深そうに聞いてきた。
「んー、そうだな。自分で言うのもなんだが慕われている自覚はあるよ」
本当にこういうことは自分で言っちゃダメだと思うけど、慕われてるんじゃないか? と曖昧に返してもモンスター達が可愛そうかなって。
『アッシらは兄貴のことを物凄く慕っているッス!』
『テイムされてるわけですからね!』
『私たちの幸せはあるじの役に立つことです! なので早く飛びたいです!』
おいナイトバード。
お前は飛びたいだけだろ。
「シャルの観察力は正しかったわけだね」
「ふふ」
シャルは軽くドヤ顔をした。
「とりあえず5階層までさっさと行っちゃいますか」
5階層からはトラップがある。
そこからが本格的なダンジョン探索になってくるだろう。
『これよりダンジョン探索を行う。下の階層に繋がる階段を見つけてくれ。出現するモンスターは各々の実力で圧倒できると思ったら倒してくれ』
モンスター達にそう告げると、みんな元気よく返事をしてくれた。
そして順調に地下へと進んでいき、5階層にやってきた。