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第58話 クラリスの屋敷

 翌日、クラリスが言っていた通り迎えが来た。


 ──豪華な装飾がされた四輪の馬車で。


 やっぱり、クラリスって良いとこのお嬢様なんだなーと実感した瞬間だった。

 というわけで現在、俺達パーティはクラリスの屋敷へ向かう馬車の中に乗っていた。

 クラリスも一緒でニコニコと嬉しそうな表情をしている。

 めちゃくちゃ高そうな馬車で乗り心地も快適だ。


「私、実はお友達を屋敷に呼ぶの初めてなんです」

「それは光栄だねー。クラリスと仲良くなれてるって感じがするよー!」

「私もクラリスと仲良くなれて嬉しい」

「私も嬉しいです!」


 3人は会って間もないのに凄く仲が良いな。

 俺も見習いたいものだ。


「アレンさん、昨日は取り乱してしまい申し訳ありません。友達を屋敷に誘うのは初めてで、なんだか緊張してしまって……」


 クラリスは一瞬俺の方を見てから、俯き加減に視線をそらした。


「気にしなくていいさ。そういうことだろうとは思ってたからな」


 やはりガッドの考えは外れていたな。

 クラリスが俺に惚れているわけがないだろう。

 馬車は大きな門を抜け、貴族区に入った。


「もう少しで到着しますよ」

「楽しみだなー、どんなお屋敷なんだろ」

「普通の屋敷ですよ」


 ……屋敷を所有している時点で普通ではないと思うのは俺だけでしょうか。

 貧乏人は貧乏人の悩みがあるように金持ちには金持ちなりの悩みがあるのは間違いない。

 しかし、どうしても羨ましいと思ってしまうのは貧乏人の性だろうか。


「見えました。あれですね」

「「でかっ!」」


 俺とレナは同じようなリアクションを取った。

 何故ならクラリスの住む屋敷は周りの貴族のものに比べて一回り大きかったからである。


「……でかい」


 シャルも思わず呟いてしまうぐらいだ。


 馬車を降りると、執事服に身を包んだ初老の男性が待ち構えていた。


「ようこそおいでくださいました」


 驚くほどに礼儀正しく執事は挨拶をした。


「どうも」


 俺もそれに倣い、一礼するが、無作法なのだろうなと自覚出来た。


「ルドルフ様がお待ちです。こちらへどうぞ」


 執事はそう言って、歩き出した。

 ルドルフ様って誰だろうか……。

 よく分からないまま俺達もそれについていく。


「なぁ、ルドルフ様って一体誰だ?」


 俺は隣を歩くクラリスに小声で尋ねた。


「お父様ですよ。お礼がしたいそうです」


 昨日言っていたお礼ってそういうことですか。

 クラリスの父親が直々に褒美をくれるってことになるんですか……。


「おー、すごいね。貴族のお偉いさんから褒美がもらえるんだ。やるじゃんアレン」


 呑気そうにレナは言った。


「はい、アレンさんにはそれだけの事をして頂いたので当たり前です」

「うん。アレンは凄い」


 こんな風にみんなから褒められるとめちゃくちゃ恥ずかしいんですけど。

 やめてもらえますか?

 ……なんて言えるはずもない。


「あはは、ありがとう」


 俺は乾いた笑みを浮かべていた。


 屋敷のなかは豪華の一言に尽きた。

 入ったのなんて初めてだし、他と比べようがないけれど、壁にかかった絵画はどれも高そうだ。

 壺なんかも高いんだろうな……。


「こちらの部屋になります」


 執事は、扉を開けてから俺達に一礼をした。

 目的の場所についたようだ。

 部屋に入ると、豪華なソファに座った金髪の若く見えるが、貫禄のある男性がいた。

 この人がクラリスの父親か?


「お父様、この方達が私の恩人です」


 やっぱり父親なのか。


「初めまして。僕はルドルフ。この度は娘を助けてくれて本当にありがとう。君達がいなかったら今頃どうなっていたことか……」


 深々と頭を下げるルドルフ。


「い、いえ、友達を助けるのは当たり前のことですし、そんな深々と頭を下げなくても……」


 正直困惑した。

 貴族ってもっと傲慢なイメージがあったから、こんな風に頭を下げられるとは思っていなかった。


「友達……。クラリスは良い友達を持ったものだ……。本当にありがとう……」


 ハンカチを取り出し、ルドルフは目頭を押さえた。


「お父様! そういった反応をされると恥ずかしいです!」

「すまない。歳をとると涙腺が緩くなってね」

「聞くのは失礼かもしれませんが、おいくつなんですか?」


 レナは興味深そうな顔をしてルドルフに質問をした。

 丁度俺も気になっていたので、内心グッジョブとレナに親指を立てた。


「僕かい? 48歳だよ」

「ええっ!」

「全然見えない……」


 20代に見えなくもないルドルフさんの口から48歳という数字が出たことは、かなりの衝撃だった。


「あー常に魔力を体内で循環させているから身体の老化が遅くなっているんだ」

「それってめちゃくちゃ難しいことやってませんか?」


【魔力操作:レベル5】を所持しているため、その凄さがよく分かった。

 ステータスのMPは魔力の量を示していると俺は考えている。

 そのMPは体内の奥深くに溜められており、体内を循環する事などない。

【身体強化】を使う際も魔力を身体能力に変換しているだけなので、決して体内を循環させているわけではない。

 俺が【魔力操作】でしていることは先日のように魔力の痕跡を発見したり、魔法を使用する際に魔力を効率よく動かし、消費量を減らしているぐらいだ。

 仮に【魔力操作】が10レベルになったとしても、同じような事は出来ないだろう。


「そんなことないよ。僕の所有するスキルさえ持っていれば少し練習するだけで誰だって出来るさ」


 試しに鑑定を使ってみたが、やはりルドルフのステータスは見れなかった。


 《【鑑定】のレベルが低いため、対象のステータスを閲覧することは出来ません》


 その原因は今までと違って、【鑑定】のレベルが低いからのようだ。



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