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第53話 倉庫前の戦い

 路地裏へと続く魔力の痕跡は、この先もまだ続いている。

 これを辿っていけば、クラリスの元へ辿り着く可能性が高い。

 魔力の痕跡を追い、路地裏の入り組んだ道を進んでいく。


 狭い路地裏を進んでいくと開けた場所に出た。魔力痕跡が続く先には使い古された倉庫があり、前にガラの悪そうな男が二人立っている。

 何かしらのアクションが起こされた際に反応出来るよう歩いて倉庫へと近づいていく。



「なんだおめえは」

「ここはお前みたいなのが来る場所じゃねえ。とっとと失せな」



 男二人は俺を睨みつけ、威嚇する。



「倉庫の中を調べさせてもらいたい」

「ダメだ。今は取り込み中だ」

「出直してきな」



 取り込み中か。

 クラリスがいるとは限らないが、魔力の痕跡がここに続いている以上、ここを退くわけにはいかないな。

 俺は歩みを止めず、倉庫に近づていく。



「帰れ。それ以上来るなら容赦しねえぞ」



 男達は携えていた武器を手に取る。

 一人は短剣。もう一人は斧。


 ――鑑定。


 二人のステータスは、平均40000。

 職業も特に目新しいものではない。短剣の方が盗賊。斧の方が戦士だ。

 どちらもレベルが高く、かなり戦い慣れしているだろう。

 1対2では勝てるか怪しいが、関係ない。

 俺はクラリスを助けると決めた以上、それを曲げる気は一切無い。



「止まらねえようだな」

「それ以上来るならやっちまうぜぇ!!」



 短剣を持った男は、威勢よく叫びながら俺のもとへ駆けてきた。

 その動きは早く、瞬時に俺のもとまでやってきた。

 そして俺の首を狙った一撃が放たれる。

 何の躊躇もなく、一撃で死に至る場所へ攻撃してきた。

 バックステップで躱し、俺も剣を手に取る。



 ──【ナイトエッジ】



 短剣の男が次に放った一撃はスキル。

 男の繰り出す攻撃がブレて見える。

 視覚を惑わす効果があるみたいだ。二撃目に入れることによって、どうしても先ほどの攻撃と比較してしまうため厄介だ。


 だが、【鷹の目】【気配察知】のスキルを持つ俺には相性が悪い。


 ブレはすぐに無くなり、ただの攻撃と変わらなくなった。

 剣で攻撃を受け止めると、男は驚愕の表情を見せた。

 この男は、俺を見て油断していた。

 俺はその隙を見逃さない。剣を振り、男の体を斬り裂く。



「がっ──」



 血を流して、倒れる男。

 返り血が腕と顔に飛んできた。

 人を初めて斬ったが、罪悪感や嫌悪感は現れることなく、自分でもビックリするぐらい冷静だった。

 クラリスを助けるために仕方のない行動。道徳的とは言えないが、合理的な判断。

 だから俺は躊躇することなく男を斬れたのかもしれない。

 ま、以前と比べて図太くなったのは間違いないだろうが。



「オラァ!」



 俺に向かって斧が振り落とされた。

 もう一人の男が動き出すのは【気配察知】で感じ取っていた。

 相手が自分よりステータスが低いから、と慢心してはいけない。

 だから俺は斧を避けた。

 剣で受け止めては、万が一力負けする可能性がある。こいつのステータスは見たが、スキルなど全てを把握したわけではないからな。



「うらぁ!」



 振り下ろしてからの薙ぎ払い。硬直時間が少なく、すぐさま次の攻撃に転じてきた。

 身体の使い方が上手いのだろう。

 だが、力任せに振るわれた攻撃という事には変わりない。



 ――【風魔法:レベル3】



 風魔法で地面を叩き、身体を宙に浮かせる。



 ――【水魔法:レベル3】



 水塊が男の顔を直撃する。

 ある程度の勢いで水塊がぶつかったため、男の顔には鈍い痛みが広がっているだろう。



「ぐあっ! 目が!」



 目に水が入った男は、咄嗟に目を閉じた。

 水魔法の狙いは、攻撃ではなく牽制。

 当たってくれたらラッキーぐらいに放ったが、見事的中してくれた。


 たぶん男は俺を剣士だと思っていたのだろう。近接戦闘をメインとしており、魔法が使える職業は限られてくる。戦闘経験が豊富だからこそ、俺が魔法を使うなんて微塵も考えていなかった、ってとこか。



「悪いな」



 男を斬り伏せ、剣についた血を振り払う。

 ふぅ、と一息つき、歩みを進める。


 倉庫の扉の前にやってくると取り付けられた鍵が壊されていることに気付いた。

 この先にいる奴が壊したのだろうか。

 扉を開け、中に入る。


 中は薄暗く、商品が貯蔵されているようだった。

 この様子だと今でも使われているみたいだ。

 貯蔵されているものから察するに商人の倉庫か?



「……何事も計画通り上手くいかないみたいだねぇ」

「誰だ」



 倉庫の奥に進むと、一人の男が立っていた。

 長い杖を両手で持ち、大きな帽子を深く被っている。

 煌びやかな衣装を着ており、独特な不気味さのある男だった。


 そして、その後ろには手足を縄で縛られ、口を塞がれたクラリスの姿があった。


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