第49話 テイマーは〜〜ってタイトル考えるの疲れた
さて、道場に通うようになってから6日経った。
道場で俺たちは積極的に模擬戦を行い、実戦経験を積んだ。
やはり、モンスターと人とでは戦い方が全然違うのだな、という事を実際に経験してみることで知ることが出来た。
その中の一つに例えば、人には癖というものがある。
剣を振るときや攻撃を躱すとき、というような何かしらの動作を行うときに癖のある場合が多い。
だから人によって動きは違ってくるし、戦い方も変わってくる。
当たり前のことだが、これを注意深く観察してみると相手の弱点が見えてくるのだ。
で、こんなことを語って何処か成長した気になっている俺だが、本当の意味で成長しているのはシャルの方だ。
2日目にシャルとガッドは模擬戦をしたのだが、ガッドの《職業スキル》【闘気】によってステータス差がついてしまったシャルは敗北してしまった。
しかし、その後のシャルの上達速度は異常だった。
2回目、3回目とこなすうちにステータスの差など無いかのような五分五分の戦いを見せるように。
そして、4回目。
シャルはガッドに一太刀を入れたのだ。
「いやー……まいったね……まさかガッドを遥かに凌ぐ天才がいたとは……」
シャルの剣術を見たウォルスは、驚きのあまり顔を引きつらせていた。
ガッドの敗北を見た門下生の皆も大変驚いたようで、大きく口を縦に開けていた。
……ん? 俺?
もちろん俺もガッドに勝ったよ。
まぐれで一回だけ。
「もう、アレン。何ボーッと突っ立ってんのさ。図書館に行くんでしょ?」
掲示板に張り出された武術祭の記事をボーッと見ていた俺は、レナからお叱りを受けた。
『武術祭、明日開幕!』
デカデカと書かれているものだから、つい見てしまっていた。
「悪い悪い。今行く」
道の先で俺の方を振り返って、待っているレナとシャルのもとに小走りで向かう。
街は3日ほど前から武術祭の準備に向けて慌ただしかったが、1日前ともなれば皆ウキウキしているのがハッキリと分かった。
「武術祭1日前だからしっかり身体を休めよう、って訳で今から図書館に行くんだよね?」
追いついた俺にレナは話しかけてくる。
「なんだその説明口調は」
「気にしない。気にしない。なんか会わせたい人がいるんでしょ?」
また説明口調。
さっき話したのに。
「ああ……って言っても俺も一回しか話した事ないんだけどな」
てかそれ以来、色々あって図書館に行ける時間なんて無かったからな。いない可能性だってありえる。
……いや、いないんじゃね?
「ちなみに、その一回はいつ頃?」
「図書館行ってたときだから……一ヶ月ぐらい前だな」
「え、その人はそれから毎日図書館に来てるの?」
「分からないけど、多分そうなんじゃないかな……」
「あぁ、これは普通に図書館行くみたいな感じになりそう」
呆れた顔で言うレナ。
「それを言わないでくれ。俺もそう思ってるから」
「ハァ、こんなのでコンディションは整えられるのかなぁ〜」
「レナは出ないでしょ」
前を向きながらシャルはそう言った。
「応援のコンディションを整えるの! 喉の調子とかさ!」
「よーし、頑張れ。応援してるぞー」
手を振りながら言った。
応援される側の人間が応援する人を応援してどうするんだか。
図書館に着くと、俺はクラリスの姿を探した。
前に座ってた場所に向かってみると……いた。
本を机の上に置いて、ページをペラ、ペラ、とめくっている。
とりあえず話しかけてみるか。
「ようクラリス。久しぶりだな」
「わぁ、アレンさん! お久しぶりですね!」
話しかけると、クラリスは明るい笑顔で対応してくれた。
「前に言ってた俺の友達を連れてきたんだ」
「どうもー、レナです」
「シャルです」
俺の後ろからレナとシャルが挨拶をする。
「わー、お二人とも可愛いですねー。私はクラリスと申します」
「クラリス、こいつら本読むの苦手だからさ、場所を変えないか? それに話してると騒がしくなりそうだ」
「そうですね、出ましょうか」
パタン、と本を閉じて立ち上がるクラリス。
「ごめんね、クラリスさん読書中だったのに」
レナは、申し訳なさそうな顔で謝る。
「いえ、全然大丈夫ですよ」
「それなら良かった」
レナは結構コミュニケーション能力が高いな、と実感させられる。
シャルは人見知りしている訳ではないのだろうが、少し無愛想だよな。
(シャルも苦労してきたようだし、色々な人と仲良くなって貰いたい)
と、思うのは俺の独り善がりだろうか。
図書館から出た俺たちは、どこか座れて話せる店を探していた。
すると、図書館の近くに喫茶店があり、そこに入ることにした。
店内は白を基調とした内装だ。
何席か空いており、そのうちの一つに座る。
すると、店員がやってきたので何か注文する。
「あ、私紅茶!」
「私も紅茶でお願いします」
「アレンと同じでいい」
俺と同じでいい、か。
俺はコーヒーを注文しようと思っていたので、コーヒーを2つ注文すればいいのかな。
「コーヒーを2つお願いします」
「はい、では紅茶2つとコーヒー2つですね。ただ今お持ちします!」
元気で明るい店員さんだ。
そして、暫くすると注文した飲み物が運ばれてきた。