第42話 テイマーは成長した
渓流での狩りは日を追うごとに効率化されていった。
やはり、テイムモンスターの召喚が大きいだろう。
中でも優秀なのは、Dランクのモンスターであるナイトバードだった。
『アレンさん! 前方100m付近にシルバーウルフの群れです! 獲物を仕留めている今がチャンスです!』
『分かった』
黒色の翼を羽ばたかせて、宙を舞うナイトバード。
テイムモンスター達の俺の呼び方は様々だが、ナイトバードは俺のことを「アレンさん」と呼んでいた。
見た目も少し小柄の黒い鳥といった感じで可愛い。
レナとシャルも可愛いと言っていたので、テイムモンスターの中のマスコット的存在になっている。
もう完全にお笑いキャラであるゴブリン達にも少しは見習ってほしいものだ。
ナイトバードは可愛いだけでなく、能力も優秀だ。
上空から周囲を見渡し、どこにモンスターがいるのか意識共有で知らせてくれるのだ。
戦闘力こそDランクの中でも低い方で、Eランクより少しだけ強いかな、というぐらいなのだが、それ以上に索敵能力が素晴らしい。
ナイトバードの≪通常スキル≫に【鷹の目】というものがある。
これは視界に入った敵を瞬時に認識し、自動で追尾してくれるスキルだ。
面白いことに、このスキルを使うと、眼球が自然に動き、敵を追ってくれる。
自分で意識せずとも、上下左右に素早く動くため、敵の動きがスキルを使用していないときに比べて、ゆっくりと動いて見える。
正直、めちゃくちゃ便利なスキルで所持しているスキルの中でもダントツの能力だと思う。
「この先にシルバーウルフの群れがいるようだ」
「了解! 私はシルバーウルフが瞬殺されるところを見ていればいいんだよね!」
「そうだよ……攻撃魔法とか覚えてくれれば有難いけどな」
と言ってるが、何だかんだレナは優秀なヒーラーである。
【無詠唱】のスキルを持ち合わせているため、勝手に回復してくれる。
それに加えて、強化魔法を覚えたレナは、回復以外の面でもサポートが出来るようになった。
攻撃出来ない事と自衛の手段がゼロな事を考慮しても、これ以上ない程のサポート役である。
こんな事を気軽に言えるのは、レナとの仲が深まった証拠なんじゃないだろうか。
「えー、攻撃魔法とか覚えたところで、アレンとシャルが倒しちゃうんだし、使う機会少なくない?」
「……そうだな。なんかごめん」
「えぇ!? そこで謝るのって何か逆にひどくない!?」
「レナはそういうキャラ」
「シャルまでひどいよ!」
ステータスが上がり、賑やかな雰囲気で狩りは行われていた。
テイムモンスター達も多く召喚しており、もう結構な数となっている。
Cランクモンスターを筆頭にモンスターの集団を作っているのだ。
もはや、いくつものパーティで狩りが行われるような感じだ。
そのせいで、ギルドで討伐報酬を受け取る際にいつも受付嬢を驚かせてしまっている。
その1日の討伐内容がこれだ。
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討伐内容
Eランク:ワイルドボア12体
Eランク:ウルフ26体
Eランク:大ネズミ6体
Dランク:シルバーウルフ72体
Dランク:ポイズンフロッグ45体
Dランク:ナイトバード12体
Dランク:ブルーボア51体
Cランク:ベアー6体
Cランク:アスモネラ4体
Cランク:オーク12体
Cランク:トレント2体
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EランクのモンスターやCランクのモンスターのトレントが何故討伐内容に含まれているのか、疑問に思うことだろう。
渓流内にはEランクのモンスターは存在しない。
だが、渓流の周囲に広がる森にはEランクのモンスターやトレントが存在している。
俺達は渓流でしか狩りを行っていないが、テイムモンスター達は森にも足を延ばしているようだ。
そういう訳で、このような討伐内容となっており、合計250体も討伐している。
もちろん、俺のステータスも自分でも怖いぐらいに成長した。
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種族:人間
名前:アレン=ラングフォード
性別:男
年齢:16歳
職業:テイマー
レベル:61
HP:60000
MP:60000
攻撃:60000
防御:60000
魔力:60000
敏捷:60000
《恩恵》
【獲得経験値上昇(小)】
《耐性》
【痛覚耐性(小)】【物理攻撃軽減】【魔法攻撃軽減】【状態異常軽減】【毒耐性】
《職業スキル》
【テイム:レベル3】【鑑定(ステータス限定):レベル2】
《種族スキル》
【製糸:レベル4】【精力絶倫:レベル3】
《攻撃スキル》
【強撃:レベル5】【ウッドランス:レベル4】【ドレイン:レベル4】【ショルダータックル:レベル3】【突進:レベル3】【噛みつき:レベル3】【毒攻撃:レベル3】
《防御スキル》
【ウッドシールド:レベル4】
《強化スキル》
【身体強化:レベル5】
《通常スキル》
【棒術:レベル4】【剣術:レベル5】【斧術:レベル1】【槍術:レベル4】【疾走:レベル5】【鷹の目:レベル3】【危険察知:レベル4】【気配察知:レベル2】
《魔法》
【闇魔法:レベル5】【ポイズン:レベル5】【魔力操作:レベル5】【スリープ:レベル3】【パラライズ:レベル3】【水魔法:レベル3】【風魔法:レベル3】
《ユニークスキル》
【吸収:レベル1(MAX)】【自己再生:レベル1(MAX)】【意識共有:レベル1(MAX)】
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ステータスの上限値の法則が大体分かってきた。
レベルの十の位の数字がステータスの5桁目の頭の数字となっている。
つまり、今の俺は60レベルなので、ステータスの上限値は60000である。
色々とスキルは増えたが、中でも便利なのはCランクモンスターのベアーが所持していた《通常スキル》の【危険察知】と【気配察知】だな。
これは、いわゆる野生の勘という奴が鋭くなる。聴覚、嗅覚が敏感になるのか以前よりモンスターの気配や人の気配を感じ取れるようになった。
【危険察知】は、効果を実感した事は今のところ無いが、【気配察知】と同様に危険をいち早く感じ取れるようになるのだろう。
……で、厄介なスキルが《種族スキル》の【精力絶倫】だ。
オークが所持していたスキルで、やはりと言うべきか、オーク自体もエロモンスターだった。
『主人の連れているお仲間さんは、二人とも可愛いですなぁ〜。よかったらワシにも貸してくれません?』
召喚した矢先、こんな事を言い出すのだ。
とんでもないエロモンスターだ。
『お前、シャルとレナに指一本でも触れたら……どうなるか分かってるよな?』
『ひ、ひぇぇ……じょ、冗談ですって。主人の強さは重々承知しとりますがな。そんな恐ろしい事出来ませんよ』
『だといいけどな』
こんな感じで俺がテイムしているモンスターは、個性が強い奴が多い。
だが、オークの気持ちも分からなくもない。
【精力絶倫】を手に入れた日にシャルと一緒なベッドで寝ようとしたのだが、理性を失いそうだった。
性欲というものが顕著に現れ、シャルを襲ってしまいそうだったので、その日から一緒に寝ることは辞めた。
シャルは不機嫌そうだったが、渋々承諾してくれた。
……それにしても自分でも怖いぐらいに恐ろしいスピードで強くなっていくな。
シャルも順調にステータスを伸ばしていき、攻撃力の値は40000を超えている。
スキルも新しいものを覚えていて、凄く頼りになる。
今ならBランクのモンスターでも討伐出来るのではないだろうか。
しかし、最近はモンスターの数が少なくなってきており、狩りのスピードは段々と落ちてきている。
他の冒険者にも申し訳ないので、そろそろ狩りは控えた方がいいかもしれない。
やはり、テイマーの能力を最大限に活かすにはダンジョンで狩りをするのが一番だろうな。
でも、今日で狩りは一旦終了だ。
武術祭まで残り1週間。
武術祭の相手は、モンスターではなく人間だ。
俺とシャルは、対人戦闘を全くと言っていいほど経験がない。
ヴァレンスと戦ったときに思ったが、人とモンスターでは全くと言っていいほど違う。
だから、俺は明日から対人戦の経験を積める場所に赴こうと思う。
迷惑がかかるかもしれないが、そこで訓練をする事が出来れば、確実に良い経験となるだろう。
ダメ元で行ってみようかと思っている。
――俺が向かうのは、王国騎士団が訓練の場にしている訓練場だ。
副団長のラルフとは面識があるため、運が良ければ訓練に混ぜてもらえるかもしれないと踏んでいる。
さて、どうなるかな。