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第24話 テレサの夢、叶う

 テレサの工房には、色々な物で溢れていた。

 とくに木造の長い机の上には見慣れない物が乱雑に置かれている。


「テレサ、机の上にある物ってなんだ?」

「ん? それはね、私の発明品達だね」

「発明品? テレサは錬金術師だろ? 発明なんて出来るのかよ」

「おやおや、アレン君は私の事を甘くみているようだね。天才に不可能の文字は無いのさ」


 テレサは、チッチッチ、と舌打ちをしてドヤ顔で人差し指を左右に振った。

 しかし、論より証拠だ。机の上には大量の発明品が置かれている。テレサは間違いなく天才なのだろう。


「……テレサ、私にはガラクタにしか見えない」


 机に近づき、テレサの発明品を間近で見たシャルはそう言った。

 どれどれ、とレナもシャルの後を追い、テレサの発明品の一つを手に取る。


「テレサさん、これどうやって使うの?」

「お、そいつは中々の発明品だねぇ。小さい物をセットして、引き金を引くと筒の先端からセットした物が飛び出てくるんだ」


 テレサの説明を聞いたシャルは、少しだけ険しい顔をした。


「ガラクタ……」


 声が聞こえた訳では無かったが、シャルは小さく口を動かしていた。

 声が聞こえなかった原因は隣にいたレナのおかげだ。シャルとは逆の反応をしていたのだ。


「うわー! 何か凄そう! 試しにやってみてもいいですか?」


 ワクワクとした表情のレナ。

 しかし、俺もシャルと同意見で、レナが今手に持っている発明品はガラクタな気がしてならない。


「いいよー。えーと、何か飛ばしたい物はあるかい?」

「飛ばしたい物持ってる方が珍しいんじゃない? そういう訳で飛ばしたい物は無いですよ」

「はっはっは、確かにその通りだね。なら、これを使うといい」


 そう言って、テレサがレナに手渡しした物は、小さな球。

 飛ばすのにちょうど良さそうな手頃な物だ。

 それにしても一体、何処から持ってきたのだろうか。


 レナは小さな球をセットして、引き金を引いた。


 ポーンッ。


 勢いが無い訳でもある訳でもない、そんな微妙な勢いで小さな球は放物線を描いて飛んで行った。

 なるほど、これは間違いなく()()()()だ。


「おー、結構面白いですね」

「だろう? 私の発明品の中で一二を争う発明品だからね! 舐めないで頂きたい!」


 しかし、何故かレナは楽しそうにしており、二人で何か盛り上がっていた。


「……シャル、やっぱりテレサは馬鹿なのかもしれない」

「うん、本人もそう言ってる」


初対面のときに言ってたな。バカと天才はイコールで結ばれているとか何とか。


「確かに、そういえばそうだったな」


 さて、テレサの工房にはガラクタで溢れていることが判明したところで、そろそろ本題に移すとしよう。


「それでテレサ、お願いってなんだよ」


 テレサはクルッと回転して俺の方を向いた。


「そうだったね! じゃあ、まずアレン君の職業を教えてくれるかい?」


 俺がテイマーだという事はギルドでの一件のせいで、冒険者たちには結構知られてるだろうから隠す必要もないか。


「テイマーだけど」

「うおおお! やっぱりテイマーかー! なら話は早い! アレン君! 君のスライムを1匹私にちょーだい!!!」

「あー、そういえばスライムをペットにしたいみたいな事を言ってたな」


 当たり前だが、テイムモンスターを誰かにあげたことは一度もない。あげれるかどうか分からないが、出来る限りテレサの望みを叶えてやりたい。


「うんうん! 言った言った! それでー? アレン君。私的には良い返事が聞きたいところなんだけどー」


 両手を合わせながら、くねくねと体を動かすテレサ。


「あげれるか分からないけど、やってみるか」


 グリーンスライムは1匹しかテイムしておらず、希少なので沢山テイムしてあるブルースライムを召喚する。


 1匹のブルースライムを召喚すると、テレサは目を輝かせた。


「キタアアアアァァァァ!!! スライムウゥゥゥゥ!!!」


 あまりの絶叫に俺達は顔を歪ませ、耳を手で塞いだ。

 声が大きすぎて少しビックリした。


「……うるさい」

「どんだけ喜んでるのよーもう」

「これを興奮せずにいられるか! ついにスライムをペットに出来る時がやってきたのだから! ふはははは!」


 そう言って、テレサはスライムに飛びついた。

 どうやらテレサは飛びつくの好きなようだ。俺とシャルも初対面のときに飛びつかれた。

 だが、スライムのHPは1だ。飛びついた衝撃とかで死んでしまう可能性だってある。


 スライムはテレサに飛びつかれ、ポヨンポヨンと身体を変形させながら抱きしめられている。

 よかった。スライムは無事だ。


「デュフフフフー可愛いなぁ! このこのー!」


 テレサは恍惚な顔でスライムに抱きついて、弾力のある身体をぷにぷにと触っている。


 ステータスを見ると、《テイムモンスター》にブルースライムの表記がある。

 うーん、念じたらテレサにあげれるとか出来ないかな。


 《ブルースライムの使役権限をテレサ=フィーヴァーに譲渡しますか?》


 脳内に恒例の無機質な声が響いた。

 ……どうやら、念じるだけでテイムモンスターを他人にあげることが出来るのかもしれない。

 まあ、ラッキー。そういう事なら、テレサにブルースライムをあげちゃおう。


 《ブルースライムの使役権限をテレサ=フィーヴァーに譲渡しました》


 よし、これでブルースライムはテレサのテイムモンスターになったはずだ。つまり、ペットに出来たってことだな。


「テレサ、ステータスを見てみてよ」

「ん?――うおおおおおおおぉぉぉぉ!!! ブルースライムが私のテイムモンスターになってる!」


 はい、本日二度目の絶叫。

 一度目より大きな声で叫んでおり、余程嬉しいんだろう。

 少しウザい気もしたが、そんなに喜んでくれたなら何よりだ。


「いやー、アレン君。本当にありがとう! 本当にペットに出来るとは思ってなかったよ。そういえば、お礼はゲブランの武器だったね。今、ゲブランを拉致して――」


 ()()()()()()、とテレサが言いかけたときに工房の扉が開いた。


「おい、テレサ! うっせえーぞ! 何回もギャーギャー騒いでんじゃねぇ!!」


 扉を開けたのは、怒った様子のゲブランだった。

 テレサは指をパチンと鳴らして、悪そうな笑みを浮かべこう言った。


「ゲブラン! ナイスタイミング!」

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