第19話 テイマーはトレントを吸収する
周りにいたトレントは消え、残る2体のトレントは俺とシャルにヘイトを向ける。
だが、もう遅い。
負ける要素は全て消え、もう俺達の勝ちは確定しているのだから。
地面を蹴ると、いつもより大きく踏み込めるのが分かる。
一瞬にしてダメージを負っているトレントに近づき、斬りかかる。
――ウッドシールド
キンッ。
トレントの枝によって、剣が弾かれる。
ステータスが上がっても、流石にウッドシールドを破るのは無理そうだな。
シャルの魔剣と攻撃力でも突破出来なかったのだから当たり前か。
だったら、さっきのようにショルダータックルをぶっ放せばいいだけだよな。
――ショルダータックル
剣を空中に投げ、トレントにショルダータックルをお見舞いする。
ステータス値が上がったため、突進を組み合わせなくても同等の威力が出た。
トレントは案の定、地面に倒れる。
俺は飛び上がり、空中に投げていた剣を掴み、落下と同時に横になっているトレントに剣を突き刺す。
「GOAAAAAAAAAAAAA!!!!」
トレントを倒した俺の脳内に、あの声が鳴り響く。
《トレントが仲間になりたいようです。仲間にしますか?》
このセリフが聞けるのをずっと待っていた。
Cランクのトレントを吸収出来れば、一段と強くなれる。
《トレントが仲間になりました》
トレントには申し訳ないが、サンタ=クロースが見ている手前、トレントが再び姿を現わす前に吸収しておきたい。
何も喋ってやれずに悪いな、と思いながらすぐに吸収した。
種族:人間
名前:アレン=ラングフォード
性別:男
年齢:16歳
職業:テイマー
レベル:30
HP:22210
MP:8890
攻撃:19630
防御:18420
魔力:11430
敏捷:14090
《恩恵》
【獲得経験値上昇(小)】
《耐性》
【痛覚耐性(小)】
【物理攻撃軽減】
【魔法攻撃軽減】
【状態異常軽減】
《職業スキル》
【テイム:レベル2】
【鑑定(ステータス限定):レベル2】
《攻撃スキル》
【ウッドランス:レベル4】
【ドレイン:レベル4】
【ショルダータックル:レベル3】
【突進:レベル2】
【噛みつき:レベル2】
《防御スキル》
【ウッドシールド:レベル4】
《強化スキル》
【身体強化:レベル2】
《通常スキル》
【棒術:レベル1】
【剣術:レベル3】
【斧術:レベル1】
【槍術:レベル1】
【疾走:レベル2】
《魔法》
【スリープ:レベル2】
【ポイズン:レベル2】
【パラライズ:レベル2】
《ユニークスキル》
【吸収:レベル1(MAX)】
【自己再生:レベル1(MAX)】
【意識共有:レベル1(MAX)】
顔がニヤけるのを必死に抑える。
ついにMPを除いたステータス値が5桁になった。
少し前までは考えられなかったステータスだ。
ああ……堪らないな。
強くなるのが楽しくて、楽しくて仕方ないな……。
――おっと、今は目の前の敵に集中せねばならないな。
もう負けることは万に一つもないだろうが、慢心しすぎるのも良くない。
そう分かってはいるが、気が引き締まらない。
心の何処かで、余裕だと高を括っている。
気持ちを切り替えれそうにないな……。
だが、あと1体程度なら大丈夫だろう。
残る1体のトレントに視線を向けると――シャルが仕留めていた。
……あれ?
シャルの攻撃はウッドシールドによって防がれるはずなのに……。
何故だろうか。
「シャル、ウッドシールドはどうやって対策したんだ?」
トレントを仕留めて、魔剣状態を解除して鞘に収めているシャルに近づく。
相変わらず無表情で、この戦いでの疲労を全く感じさせなかった。
「レベルが上がったから倒せた」
ほう、どれどれ。
シャルに鑑定を使い、ステータスを拝見する。
種族:ハーフエルフ
名前:シャルレ=ハーティスメル
性別:女
年齢:15歳
職業:魔剣士
レベル:27
HP:270
MP:19000
攻撃:270(20000)
防御:270
魔力:18000
敏捷:19500
《職業スキル》
【魔剣作成:レベル3】
【効果付与:レベル3】
《攻撃スキル》
【剣舞:レベル3】
《通常スキル》
【魔剣術:レベル4】
ステータスの伸び方おかしくないか?君。
30レベルの回復しか能のないレナは1万程度なんだが……。
「お疲れー、2人共」
そう言ってレナが近づいてきた。
戦闘中、視界に入る事はなかったが……どこにいたんだろうか。
「お疲れ、ありがとなレナ。あのとき助かったぜ」
「はは、あれぐらいしか仕事してないけどね。予想以上に強くて、他に回復する機会が見つからなかったよ」
「いや、あれだけで十分な活躍をしてくれたよ。ありがとう」
「……そうかい。なら、有り難くその言葉を受け取っておこうかな」
レナの笑顔は……柄にもない純粋な笑顔だった。
そこにサンタ=クロースが腕の怪我を抑えながらやってきた。
「……感謝はしねえからな」
「感謝されたくてやってんじゃねーよ。てか、これで俺のこと馬鹿にすんじゃねーぞ」
「しねーよ。俺より強い奴を何で馬鹿にする必要があんだよ」
それだけを言うと、サンタ=クロースは仲間の元に行き、仲間を背負いながら町の方へ戻って行った。
「俺達も帰るか」
「うん」
「あれ、彼の後をついていかないのかい?あの状態でモンスターに襲われたら一溜まりもないよ」
「いや、いい」
俺もそう考え、付き添ってやろうかと思ったが、やめた。
それは、あいつのプライドを踏みにじる行為だろうから。
◇
道中のモンスターを倒しながら冒険者ギルドに帰った。
フォルトリアの森に出るEランクのモンスターは、もう相手にならないな。
最初は少し緊張感を持って、戦っていたが、これぐらいのステータス差になると、スライムを倒すような感覚だ。
冒険者ギルドに戻ってきた俺たち。
ギルドに入ると、受付嬢が慌ててやって来た。
「アレンさん!フォルトリアの森にトレントが5体も発見された報告があったのですが、大丈夫でしたか!?」
この慌てようだと、ここで倒したと言えば、騒ぎになりそうだな……。
しかし、結局ギルドカードを見せるため、遅かれ早かれバレることになる。
ならば、今さっさと言ってしまおう。
「トレント5体なら倒しましたよ」
受付嬢は、ポカーンと静止した。
そして……
「えええええええ!!!!!アレンさん達が倒しちゃったんですか!?」
と、騒ぎ出した。