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第16話 テイマーは人助けを決意する

 翌日、レナを連れてフォルトリアの森にやってきた。

 レナは、俺がテイマーだと言う事は知っているだろうが、何故俺がテイマーなのに強くなれているのか、については知らないはずだ。

 俺のユニークスキル【吸収】は俺にとって一番大事な秘密であり、握られたくない弱みだ。スキルや魔法というのは種類が多く、【吸収】のように想像を超えた物があってもおかしくは無い。

 つまり、【吸収】の事を会って間もないレナに伝えるには危険があるという訳だ。



「さーて、私はする事がないからお二人さん頑張ってね」



 レナは腕を上にあげて、ぐーっと体を伸ばしながら言う。



「お前、本当に俺たちが怪我するまで仕事ないのか?」

「うん、ないよ」



 ケロッと答えるレナ。

 レナを本当にパーティに加えるべきなのだろうか。



「ま、私が役に立つのなんて強敵に相対したときだよ。出来れば、私が働くことが無いように祈っててくれたまえ」

「何で偉そうなんだ、お前は。そういう態度ならパーティに入れてやらんぞ」



 この発言をした後に、

(あれ?俺の器ってもしかして小さい?)

 と、思ってしまった。

 小物くさい発言に自己嫌悪した。……いや、俺は十分小物か。なら問題ないな。



「ごめんごめん。冗談だよ。本当は私にも仕事があるんだ。そう、モンスターのヘイトが私に向かないように影を薄くするのが私の仕事さ」

「なるほど、つまり何も目立った事をしないように立ち回る事がレナの仕事な訳か」

「そういうこと」



 それってつまり――



「仕事してないじゃねえか!」

「ッチ、バレたか」



 舌打ちをしてバツが悪そうな顔をするレナ。

 ……もうレナの仕事がないという話は終わりにしよう。

 口には出さないけど恩恵とかを考えれば、いるだけで仕事してるんだから。



「ま、とにかくそろそろモンスターを狩りに行くか」

「うん」



 俺の横でコクっと頷いて答えるシャル。

 最近、キャラの濃い奴が多いからシャルみたいな大人しい奴の存在は貴重だ。

 心が落ち着く。



「そうだね。お手並み拝見といきますか」

「おう。ちゃんと隠れてろよ」

「言われなくても隠れるよ。攻撃されそうになったら逃げるしかないからね私」



 そう言って、森の中を歩き出したとき、




「ぎゃあああああああああああああああ」




 森の中で悲鳴が聞こえた。

 距離はそう遠くない。

 きっと冒険者の身に何かあったに違いない。

 ……どうする。



「……シャル、行くか?」



 助けに行こうか悩んだ俺はシャルに聞いてみると事にした。

 きっとどちらでも良いという答えが返ってくるのだろうけど、決断するための何かが欲しかった。



「私に聞かなくてもアレンはもう決めてる」



 意外な答えが帰ってきた。

 俺はもう決めてる、か。

 ……そうだな。そうに違いない。



「――行ってみよう」



 俺がそう言うと、意外そうな顔をするレナ。



「へぇ、意外と優しいんだね」

「ああ、俺は意外と優しいんだ。惚れるなよ」

「うーん、君は別にタイプじゃないから安心して」

「……いやそう言う事言われると、普通に凹むからね」




 ◇



 悲鳴がした方へ俺たちは走った。

 俺とシャルのスピードにレナがついてこれなかった為、スピードをレナに合わせて向かう。

 そして、近づくと悲鳴の原因が分かった。


 ……こりゃあキツそうだな。



 3人の冒険者のパーティを囲む5体のCランクモンスター、トレント。

 約3m程の木の形をしたモンスター。幹には大きな顔があり、口には鋭い牙がついている。

 冒険者の中には一人血を流して負傷している奴がいる。

 すぐに助けに行きたい気持ちを抑え、トレントのステータスを確認する。



 ――鑑定



 種族:トレント族

 名前:トレント

 レベル:40

 HP:8000

 MP:5000

 攻撃:7400

 防御:9100

 魔力:7000

 敏捷:4000


 《攻撃スキル》

【ウッドランス:レベル4】

【ドレイン:レベル4】


 《防御スキル》

【ウッドシールド:レベル4】


 《魔法》

【スリープ:レベル2】

【ポイズン:レベル2】

【パラライズ:レベル2】





「あの冒険者って君達に喧嘩売ってた奴じゃない?」



 レナが5体のトレントに囲まれた冒険者達を指差した。

 確かに3人の中の1人に昨日俺の胸ぐらを掴んできた奴がいた。



「そうだな」

「……そうだなって――それでも助けに行くの?君を馬鹿にしてきた奴だよ?」



 ああ、レナの言いたいことは勿論分かる。

 あいつは俺の事を不遇職だと馬鹿にして、弱い者いじめをしようと考えてた奴だ。

 良い奴な訳がないさ。痛い目を見ればいい。

 そう思う自分もいる。



 ――だけど、ここで見捨てるのが本当に正しいのだろうか。



 俺は2年間、いつだって誰かに助けて欲しいと思ってきた。こんな生活から抜け出したい。楽になりたい。

 いつだってそう考えてたさ。

 生きるのに必死でがむしゃらに生きながら、いつかこの生活が変わる事を夢に見ながら。

 だから、助けを求める奴の気持ちは痛い程分かるんだ。



 きっとあいつらだって助けを求めているはずだ。

 叶うはずもないと思いながら、小さな希望を胸に秘めているはずだ。



「助けるしかないよな、そんなの」



 偽善者……なんだろうな。

 だから俺はそれでいい。

 あいつらの為に助けるんじゃなくて、俺自身が助けて欲しかったからあいつらを助けるんだ。



「二人とも協力してくれるか?」



 俺の自分勝手に人を巻き込むのは気が引けるが、一人だと対処出来そうにない。

 しかし、二人の力を貸してもらわなければ、トレント5体には太刀打ち出来ない。



「アレン、私はあなたに従う。あなたが望むなら私は何だってする」



 シャルは俺の目を真っ直ぐ見ながらそう言った。

 それを見たレナもため息をつきながら答える。



「はぁ〜……何一人でカッコつけてんだか――ま、強敵相手じゃないと私の力って発揮出来ないだろうし、丁度良いんじゃない?」



 ……レナって何気に良い奴なのかもしれないな。

 少し見直した。



「二人共、ありがとな――よし、じゃあトレント退治といこうか」



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