第10話 テイマーはステータスの上限にぶつかる
ワイルドボアを吸収し、その後も森の中でモンスターを狩り続ける。
フォルトリアの森に出る主なモンスターは、Eランクのワイルドボア、ウルフ、大ネズミの魔獣系のモンスターだ。
しかし、Dランクモンスターも出現する場合がある。
ここでは、オーク、ウルフの上位種であるシルバーウルフがそれに該当する。
そして稀にCランクモンスターも出現するようだ。木の姿をしたモンスター、トレントの発見報告がある。
万が一、遭遇した場合を考えて最善の注意を払っておく事が大事だろう。
「いってえッ!」
そう意気込んで森の中を探索していたが、俺は植物系モンスター、イビルウィードを踏んでしまった。
蕾や花の部分が口のようになっており、その中には歯が生えている。
それを踏んだ俺は、足を噛まれてしまい、無様な叫び声をあげる事になった。
「ふんッ!」
少しキレ気味にイビルウィードに剣を刺して、息の根を止める。
「アレン、どうしたの?」
「……イビルウィードを踏んだんだ」
「そう。気をつけないと」
「……はい」
周りに気を配っていたら足元が疎かになっていた。
この経験はきっと無駄ではない。
これを一つの教訓にしよう。
……うん、俺はこれで一つ成長出来たんだ。恥ずかしがる必要はない。
「アレン、ウルフの群れ」
「あれか……スモールラビットを狙っているようだな」
シャルが言う先には、4頭のウルフがいて、スモールラビットを狙っていた。
スモールラビットは人間に害をなさない動物なので、モンスターとは認定されていない。
また捕食される側であるため、野生ではああやって命を狙われることが多い。
「どうする?」
「スモールラビットよりウルフの方がステータスは高いから追いつかれてスモールラビットは捕食されるだろう。食事をしているときに隙が出来るだろうから、そのときウルフ達に攻撃を仕掛けよう」
「……分かった」
シャルは不服そうな顔をしながら返事をした。
何か不満があるのだろうか。
もしかすると、シャルはスモールラビットを助けたいのかもしれない。女の子は可愛い動物に目がないから。
「……スモールラビット助けたい?」
「うん」
「そうか、じゃあ助けよう。今からウルフの群れに攻撃を仕掛ける。二人で二匹ずつ仕留めよう」
「分かった」
「よし、じゃあ行くぞ!」
――《通常スキル》【疾走:レベル2】
疾走の効果は、今のステータスが低い俺にとって有難いスキルだった。
《敏捷を+4000する。持続時間30秒》
疾走を使い、ウルフの群れに駆け寄る。
おっと、いけない。
鑑定を使って、ステータス確認しないとな。
種族:ウルフ族
名前:ウルフ
レベル:15
HP:300
MP:100
攻撃:500
防御:250
魔力:100
敏捷:600
《攻撃スキル》
【噛みつき:レベル2】
《通常スキル》
【疾走:レベル2】
ワイルドボアと大して差はないな。
恐れることはないが、一応用心しておこう。
スモールラビットを追いかけるウルフは、俺たちの存在に気づいた。
獲物の対象を変えて、俺たち二人に注意を向ける。
だが、遅い。
ウルフの一頭に剣を突き刺し、仕留める。
疾走の勢いを利用して――
――《攻撃スキル》【突進】
吹っ飛ばされたウルフに向かって行き、剣を突き刺した。
「ふぅ、難なく倒せたな」
シャルの方を見ると、既にウルフを討伐し終えていた。
そこで、頭に音声が鳴り響く。
《ウルフが仲間になりたいようです。仲間にしますか?》
一匹だけテイムが成功したようだ。
もちろん仲間にする。
《ウルフが仲間になりました》
『よし、早速だが吸収するぞ』
『了解です!!』
最近、気づいてきたが、モンスター達は吸収される事に抵抗がない。
もしかすると、吸収された先が素晴らしい場所に繋がっているのかもしれない。
まぁ、そんな事を知るすべはなく、ただ従順なだけだろうが、吸収された先がどんな場所になっているのか、というのは気になるところだな。
「アレン、スモールラビット逃げちゃった」
少し悲しそうな表情のシャルがこちらにやってきた。
「なんだ、捕まえて夕食にでもしたかったのか?」
「違う。触りたかった。もふもふ」
「あ、そういうことね」
ちょっと今の質問……頭おかしかったなと反省した。
食べられるのを助けてるのに俺たちが食べてどうするんだ、っていう。
だが、スモールラビットの肉は柔らかく、結構美味いらしい。
……なんか勿体無いな。
そんな事を考えていた俺をジーッと見つめるシャル。
「いや、スモールラビットが食べたいとか全然考えてないからね!?」
「アレン、嘘が下手すぎ」
「……すいません」
その後、順調に狩りを続け、俺のステータスは倍以上に高くなった。
種族:人間
名前:アレン=ラングフォード
性別:男
年齢:16歳
職業:テイマー
レベル:21
HP:5000
MP:1682
攻撃:5000
防御:5000
魔力:1724
敏捷:5000
《恩恵》
【獲得経験値上昇(小)】
《耐性》
【痛覚耐性(小)】
【物理攻撃軽減】
【魔法攻撃軽減】
【状態異常軽減】
《職業スキル》
【テイム:レベル2】
【鑑定(ステータス限定):レベル1】
《攻撃スキル》
【ショルダータックル:レベル2】
【突進:レベル2】
【噛みつき:レベル2】
《強化スキル》
【身体強化:レベル1】
《通常スキル》
【棒術:レベル1】
【剣術:レベル1LvUP!→2】
【斧術:レベル1】
【槍術:レベル1】
【疾走:レベル2】
《ユニークスキル》
【吸収:レベル1(MAX)】
【自己再生:レベル1(MAX)】
【意識共有:レベル1(MAX)】
剣術のレベルが1から2に上がった。
しかし、途中からモンスターを吸収してもステータスが上がらなくなった。5000で止まり、何故だろうと頭を捻らせていたところ、吸収のスキル説明をもう一度見たら原因が分かった。
《テイムしたモンスターを吸収する事が出来る。吸収すると、モンスターの能力は自分の能力に加算される。吸収出来るモンスターの数に限りはなく、放出すればテイムしたモンスター同様に使役出来る(ステータス上限に達しました。上限を解放するには30レベルになる必要があります)》
という訳で、30レベルまで上げる必要があるようだった。
現在のレベルは21。
今日で5レベル上がった。
一応、恩恵で獲得経験値は微量ながらも上がっているはずなので、割と早くレベルが上がっていくのではないだろうか。
シャルもレベルが上がっている事だろう。
鑑定を使って見てみると……。
種族:ハーフエルフ
名前:シャルレ=ハーティスメル
性別:女
年齢:15歳
職業:魔剣士
レベル:15
HP:159
MP:7200
攻撃:150(8400)
防御:150
魔力:6800
敏捷:8800
《職業スキル》
【魔剣作成:レベル1LvUP→2】
【効果付与:レベル1】
《攻撃スキル》
【剣舞:レベル1LvUP→2】
《通常スキル》
【魔剣術:レベル1】
えぇ……。
強すぎませんかね……シャルさん……。
相変わらず、HPと防御の伸びが悪いもののそれ以外は破竹の勢いで上昇している。
超攻撃的なステータスになっていて、一発敵の攻撃を喰らえばお終いだ。
だからこそ、こんな勢いでステータスが伸びているのかもしれない。
◇
冒険者ギルドで今日の討伐分の報酬金を受け取った。
ウルフ22体。ワイルドボア15体。大ネズミ8体という結果だった。
DランクやCランクのモンスターと出会う事なく、安全に狩りを終えれた。
そして、報酬金はなんと……銀貨4枚と銅貨50枚!
Eランクのモンスターは一体あたり銅貨10枚の報酬金が出る。
その結果、これほどまでの大金を得ることが出来た。
……Eランクでこれなんだから、高ランクの冒険者はどれぐらい稼いでいるのだろうか……。
「思ってたより稼げたね」
「うん」
冒険者ギルドから出た俺たちは、夕食を食べるべく昨日の酒場に向かっていた。
日は沈みかけているというのに町行く人は、沢山いて多くの店がまだまだ営業を続けている。
鍛冶屋だけでなく、食品を売っている店、服を売っている店、アクセサリーを売っている店……と様々だ。
そんなときだ。
ドゴーン!
どこかで爆発が起きたような音がした。
なんだなんだ?
町の人たちは大きな動揺をしていないようで、ため息をついているドワーフが2人いた。
「はぁ〜、またあの錬金術師か」
「ああ、鉱石を合金してもらうときは役に立つんだけどなぁ」
「分かるぜ、その気持ち。あのヘンテコな研究さえやめてくれれば、この町も少しは平和になるよな」
「違いねぇ。ところで俺はよ、あの錬金術師が爆発させたときは酒を飲むって決めてんだ」
「お、いいねぇ。俺も付き合うぜ」
ガーッハッハと笑いながら、肩を組み歩いていく2人のドワーフ。
ドワーフは酒好きと聞いていたが、本当のようだな……。
爆発が起きてるってのに、呑気なもんだよな。
と思いながら、俺たちも酒場に向かうのだった。