・トレジャーハンターと魔術師
テルテとラーラが王都を出てから2ヶ月程経ち、
二人は東の国の技術者の所に居た。
その技術者は機械武者を開発した一人で、
テルテとは話が合い、
ラーラの魔術の知識にも興味を抱き、
来訪した二人を客人として迎えていた。
「そっちの方は進んでるか?」
工房で機械とにらめっこしているテルテに、
ラーラが寄ってきて話しかける。
テルテは1日の大半をこの工房で過ごし、
飯の時間ですら顔を合わせる事は少ない。
「うーん、やってる事は何となく分かったけど、
元の技術に謎が多過ぎる。
原理が分からない物をよく使ってるな、としか」
「さすがにそこまで分かってたら、
もっと高度な機械が作れるだろう。
そもそもそれを調べるのが本命じゃないだろ?」
「一度親方に話を聞いてみたけど、
理解出来ない内容が多過ぎて、
まずはそこを理解しない事には、
先に進めないんだよ。
それよりそっちの方は何か見つかったのか?」
テルテはようやく手を止めて、
ラーラに聞き返した。
ラーラも1日の大半を書庫で過ごしている。
「怪しい蔵書の山を見終わったら、
更に新しい山が見つかったよ・・・。
で、欲しい情報はまだ何も。
かといってこの国を探し回る訳にもいかないし、
ここでもう少し調べた方がよさそうだ」
ラーラは機械武者を開発した呪術師を探しているが、
本人は数年前に失踪しており、
残した資料を調べていた。
師匠であるドゼビムから教えられた事について、
どうしても確認したい事があるという。
「とりあえずここなら安全だし、
もうしばらく厄介になればいいさ」
東の国は内乱も含めて混沌を極め、
各地で戦闘が起っていた。
新国家ルナの騎士団が、
占領されていた王国の土地を解放して回っており、
東の国はその対処もろくに出来ていない。
ただ、
テルテ達がいる研究施設は帝に保護された場所で、
周囲も強固に守られている。
テルテ達がスムーズに受け入れられたのは、
ドゼビムとここの主が知り合いだったからだ。
「そうだな。
興味深い資料も多いし、飽きる事は無いな。
そういえばアミア達はどうしてるのかな」
ラーラの言葉に懐かしい友人の面影を思い浮かべる。
魔術師の伝手でアミア達が王都を抜け、
どこかへ消えたとは聞いている。
が、そこからの足取りは完全に不明だった。
「二人の仲が戻ったのは確かだし、
心配は無いかな。
ミルミとこそこそ探ってたみたいだし、
そっちは興味あるけど、
あんまり関わるのも危険そうだしなあ」
「師匠も超越者とはあまり関わるな、
って言ってたな。
あたし達は人間が出来る範囲でやればいいさ」
「そうだな。
あ、なんか分かったぞ」
テルテは何かを思い付いたのか、
再び機械に向き合う。
しばらくラーラはその様子を黙って見つめた。
(集中するテルテは輝いてるよな)
決して声には出さない言葉をラーラは胸にしまう。
二人の道はいずれ分かれるかもしれない。
それでもしばらくはこいつに付き合おう、
とラーラは思った。