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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第1部 出会い
6/82

6.初めての夜

移動を始めると光が一気に失われていく。

先ほどまで周りが見えていたのは崩落で天井に穴が開いていたからだ。

暗く、靄がかっており、裸眼だったら何も見えなかっただろう。

しかしこの機械の鎧を通す事で、

暗闇でも周りが見え、温度などで生物がいる場合もよく分かる。

周りを見ながら2機はゆっくりと移動する。

地上では見た事の無い植物が生い茂り、

どれもがトゲがあったり毒々しかったりする。

生存している小動物も毒のある虫や蛇、

トカゲなどで狼や猪のような動物はいない。

こんな事なら下層の資料をもっと読んでおけばよかったとアミアは少し後悔していた。


と、センサーに小型と中型の妖魔の反応が。

オークかオーガに使役されるゴブリンとかだろう。


『前方に小型と中型の妖魔の群れだ。

手分けして処理しよう』


『はい』


リグムはハルバードを、デュエナは剣を構え妖魔を迎撃する。

先鋒のゴブリン達はまさに中型妖魔がこちらの戦力を確認する為の捨て駒だった。

斧や槍をもって突撃してくるが、悉く弾かれ、即座に首や胴体を分断される。

アミアもリンリもここら辺は慣れたもので、苦労は無い。


相手をするか悩んでいた中型の妖魔、オーク達だが、

結局は縄張りに入ってきた敵を排除する為に、無謀とも思える突撃を敢行した。


リグムはリーチのあるハルバードで、

それこそ近付く前に2体、3体と排除する。

中型など恐るるに足らずといった感じだった。


一方デュエナは1体目は剣で薙ぎ払ったものの、

その隙に来た2体目の攻撃を腕に食らってしまう。

大したダメージは無いのだが、3体目が逆方向にいる為、

次の判断に迷ってしまい、その隙を3体目が突いてくる。

が、力の差は歴然で、何となく放った剣での攻撃で3体目は吹き飛んだ。

2体目の2度目の攻撃を盾で防いでから剣でとどめを刺した。

冷静に対処すれば何ともない敵なのだが、

集団戦でない中型との戦いはリンリの冷静さを奪っていた。


『大丈夫か』

『はい、ちょっと囲まれて焦っただけで』


アミアが念話でフォローを入れる。

残りの数体もリグムのハルバードとデュエナの剣で退治された。

妖魔との戦い方を教えないと駄目かな、とアミアは思った。


『ここら辺が都の下だけど、

崩落跡すらないな』


戦闘後1時間ぐらい探索しつつ移動したが、

どこにも地上へ上がれそうな場所は無かった。

地上との距離が近ければ地上にいるかもしれない味方か敵の鎧と念話が届いたり、

レーダーに反応が出たりするが、

都の大分下に当たるのでその望みは無い。


『下りも多かったし、

地上よりかなり下に潜ったみたいだしね』


そう言うリンリの念話から疲労が溜まってるな、とアミアは感じていた。

もちろんアミアも慣れない下層の探索はかなり神経をすり減らしていて、

休憩をとりたいとも思っている。

が、安全な場所を確保しない限り、

休めない事も重々承知しているのだが。


『あと30分ぐらい調べて駄目なら、

予定通り休憩地点の場所決めよう』


『はい』


リンリのどこか嬉しそうな返事に、

アミアは思った通りだと鎧の中で思考だけ微笑する。


結局地上への出口となりうるものは見つからず、休憩の準備に入る事になった。

地下なので常時暗く、時間の感覚があいまいになるが、

鎧内に表示される時刻は夕方を示している。

肉体的な疲労が無い鎧に乗っているとは言え、

ちょうどいいタイミングではあった。


『まずは見通しが良くて平らな場所の確保だ』


見通しがいいという事は敵にも見つかりやすい事と同義である。

しかし、見通しが悪い場所で敵の接近に気付かなければその時点で奇襲されたら終わりである。

だからあえて見通しのいい場所に陣取り小型、

中型妖魔に対してはここは占拠しているから近付くなとけん制させる。

神聖結界のおかげで小型の妖魔は入ってこないし、

飛んでいる霊体の妖魔も近付かない。

中型の妖魔に対しては妖魔使役の魔法で同サイズの中型妖魔を使役する事で、

うかつに手を出せない状態にして、

手を出して来たら即座に鎧を起動させて対処出来る。

問題は大型の妖魔が攻めてきた時だが、その場合は見通しがいいので、

近付いてきた時点で鎧を起動させて、戦闘か退避を選択出来る、

という事をアミアは考えていた。


5分ほど探索の途中で良さそうだった場所を中心に探して、

天井が他より高く、周囲に対して地面が一段高くて、

比較的平らな場所を見つける事が出来た。


『ここを今日の休憩ポイントにしよう。

次は使役する妖魔の確保だ。

近くにあった巣を突こう』


『はい』


小型中型の妖魔の巣を1つ潰しておけば、懸念事項が一つ減り、

またここら一帯で一番強い中型妖魔が使役出来る、

という作戦だった。


巣にはゴブリン、オーク、オーガの3種の妖魔が集団で住んでおり、

オーガ4体がボスをしていた。


『オーガはこっちで生け捕りするから、

他の排除を』


『了解です』


数度の戦闘でリンリも落ち着いてきていた。

精神的疲労はあっても、そこは聖騎士で、神聖鎧使いであるので、

ゴブリン、オークは多勢であっても難なく排除出来るようになっていた。

逆にアミアはまだまだ余裕があり、敵を値踏みする。

オーガの雌雄は区別しずらいが、

何となく体格で3匹がオス、1匹がメスだと判断する。

メスは他のオーガが誘惑に来る可能性がある為、今回使役するのには使いづらい。

後はオスの中で一番体格が大きいのと、もう一匹を使役に使えばいい。

先に攻めてきたのはオス2体で、1体は残しておきたいので、

1匹だけハルバードで薙ぎ払い、もう1匹は軽く蹴飛ばして転倒させる。

そのまま近付いて、まずメスを一刀両断にする。

怒ったボス格のオーガに対して、暗黒魔法を発動する。

中型妖魔に対しての成功率は8割ぐらいだが、

今みたいに冷静さを欠いている敵に対しては成功率は高い。

難なく1匹目を使役し、

起き上がって再度襲ってきた残りの1体にも暗黒魔法を使い、

2匹の使役が完了する。


『本当にオーガを操れるんですね』


戦闘が終わった後、リンリが珍しそうに語りかけてきた。

神聖魔法に使役の魔法は無く、普段の人間同士の戦いでは使う事が無い魔法なので、

珍しいのだろう。


『妖魔狩りの時は結構使うよ。

まあ、神力の消費が激しいから、

2体ぐらいが限度だが』


使役したオーガは命令が無ければ静止している。

念話で命令をすると、それがオーガの知能で実行困難な事以外は実行する。

自殺しろと命じれば実行するので、

不要になった際の命令は大概自殺だった。


『ではここに神聖結界を張ります』


先ほど見つけた休憩場所に戻り、リンリが神聖結界を張る。

オーガ2体は神聖結界の外側に配置し、

結界を中心に対称の位置で半面ずつ見張りをさせ、

襲ってくるものがいたら報告するようにさせた。

また、大型の妖魔が来た場合は報告しつつ足止めするようにと。


軽く結界内の岩や草をどけ、寝床を作る。

火を燃やすものが無いため、焚火は無い。

鎧は停止させ、時間が来たら起こすようにアラームを付ける。

休憩時間は5時間で、睡眠には少し足りないが、

鎧の回復が終わった時点でなるべく早く行動するに越した事はない。

布団代わりにリンリが前に地面に敷いた毛布を今回も地面に敷き、

アミアが持っていたマントを布団代わりに使う。

枕はお互いが持っていた汗を拭くための布を丸めたものだ。

結局アミアはマントしか着るものは無いため、下着の状態になる。

リンリも着ているローブの下は全裸なので、

地上より若干低めの温度の下層では肌寒い。


「近くないか…」


固い地面に引いた布の上にアミアとリンリは肌を密着させるように、

真横に並んで寝ている。

布団代わりのマントの大きさ的にそうしないとどちらかがはみ出してしまうのだ。


「でもくっついてればあったかいよ」


リンリはどこか嬉しそうだ。

他人と一緒に寝るのなんて姉と暮らしてた頃から考えると数年ぶりだな、

とアミアは少し懐かしく思った。


「不思議だよね、敵同士だった二人が

こんな危険な下層に並んで寝てるなんて」


「生き抜く為だ、仕方がない」


そう言うアミアだが、教団で戦っていた頃とは違う、

充実感のようなものを感じていた。

生物として生きる為にもがいているような感覚なのだろうかとも思う。


「私はアミアちゃんと仲良くなれて嬉しいけどな」


「別に仲良くなどは・・・」


そう言ってリンリの顔を見ると思っていたより顔が近くにあって驚く。

リンリは笑顔でこちらを眺めており、その笑顔はとても優しい笑顔だった。

アミアは急に恥ずかしくなるが、離れる事も出来ず、

密着している身体の部分を急に意識してしまう。


「そ、そろそろ寝よう。

きちんと寝ないと明日が辛い」


「そうだね」


アミアはリンリから視線を外し、寝ようとする。

が、心臓が早鐘を打っており、寝付けない。

静かになってから数分後、アミアはそっとリンリの方を見る。

リンリはこちらを見つめながら起きていた。


「どうしたの?

眠れない?

・・・おっぱい触る?」


(え?)


アミアは最初何を言っているのか理解出来ず、

言葉をかみ砕き、赤面する。

邪教団の隊員内での女性間での交際は珍しくない。

男女の恋愛が禁止されており、男性との接触は最低限に制限され、

実際に仕事上で接触する男性は老人か嫌われ者の下っ端だけだったので、

そこに恋心が芽生える事は無かった。

逆に女性との恋愛は禁止されていないので、

力のある者、容姿が優れた者は特に恋愛の対象になった。

女性間での性行為を行っても純潔は守られ、

不死鎧を操作出来る事が分かっているので、

快楽の逃げ道として、恋愛でなくとも性行為だけを楽しむ者もいた。


アミアもそういった行為に興味が無いわけではないが、

隊の他の連中は生きる上でのライバルであり、

味方では無かったので、誘われても拒否していた。

聖教団でも同様かどうかは知らないが、

神聖鎧に乗り込む条件が同じはずなので、

リンリの言っているのはそういう意味の可能性がある。

しかし、聖騎士団はそういう事に厳しいイメージがあったので、

いきなりそういう事を言うのには違和感があった。

悩んでいてもしょうがないと、確認してみる。


「そ、それはどういう意味で言ったんだ?」


リンリの顔を覗き見るようにして確認する。


「あ・・・、違うよ。

確かに教団内で女性同士でそういう事をしてるって話は聞いた事あるけど、

別に深い意味はなくて。

昔、まだお母さんが生きていた頃、

私が眠れないとおっぱい触らせてくれたの思い出して、

アミアちゃんもそれで眠れるかな、って」


リンリはちょっと照れくさそうに言う。

アミアはホッとすると同時に、少し残念な気持ちになり、

自分の気持ちにビックリする。


(まあ、出会ってからずっと子供扱いしてるし、そういう事か)


納得してから、リンリの問いかけに答えていない事に気付く。

自分の小さい胸に多少のコンプレックスがあり、

また、姉の大きな胸が大好きだった事を思い出す。

触ってみたい。

別にいやらしい意味ではなく、と

自分に弁解しつつ、せっかくの機会だから、

と理由を付ける。


「じゃあ、触ってもいい?」


「うん、好きに揉んでいいよ」


リンリは嬉しそうに答える。

布団代わりのマントの中、

アミアは手を横のリンリの胸の方に近付ける。

手が柔らかい布に触れ、

形を確かめると、そこが確かにリンリの胸であると分かる。


「く、くすぐったい…」


リンリは小声でつぶやく。

アミアは少し興奮して、両の手のひらで胸の感触を味わう。

自分の胸を触ってもここまで大きくなく、

こんなに柔らかくない。

昔姉の胸を触った事はあったが、その感触は覚えておらず、

こんなに柔らかいんだな、と妙に感心する。


「どう、眠れそう?」


リンリが優しい笑顔でつぶやく。


「うん、ありがとう」


アミアは興奮しつつも、何か温かい気持ちになり、

素直に感謝の言葉を述べていた。

胸の感触と温かさを心に抱いて、

アミアはゆっくりと眠りに落ちていった。

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