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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第5部 巨神大戦
51/82

1.寒村の騎士

「あれは高さ数千メートルの馬鹿デカい人型兵器じゃ」


城の中にある一室にはアミア達3人とテルテ、

そして事情を知っていそうなミルミが座っていた。

突如現れた巨人について、

すぐに被害が出る事は無いと説明されたので、

候補生達には鎧で警戒態勢を取らせ、

アミア達はミルミに話を聞く事になった。


「兵器?

それじゃあミルミ達、超越者が作った物なのか?」


「まあ、作ったのはそうじゃな。

だが、巨神は欠陥兵器じゃよ。

大きいだけで歩く以外の動作は出来ず、

エネルギーの消費量が激しいから1日に数歩進むだけ、

進攻速度が遅くて使い物にならん。

それでも威圧感だけで怯ませるには十分だった、

と聞くがな。

海底に沈められたと聞いていたが、

まさかこのタイミングで出てくるとはな」


ミルミはどこか呆れているようだ。

アミアにはこの大きさの物を作った、

という事実が信じられない。


「ミルミちゃんはこの城目指してるって言ったよね。

なんで分かったの?」


「あれは最初に指定した場所に一直線に進む事しか出来ん。

進行方向と直線上の重要拠点からここだと予想したのじゃ。

今動き出したという事は、お前達、もしくはわらわが目的か、

この城をどうしても渡したくない理由がある、とかじゃな」


ミルミの言う通り、城を奪って数日後に動き始めたのは、

そう言った理由であるとアミアも考える。


「止める方法はあるのか?」


「何でも聞けば答える訳じゃないぞ。

まあ無い、とは教えておいてやる。

わらわの力をもってもあれは止められん。

一度命令してしまえば、

目的地に着くまで命令者すら止められない、

そんな愚かな兵器じゃよ」


ミルミが嘘を言う可能性はあるが、

それでも今は嘘を言っていない気がした。


「エリエは何か知らない?」


今まで黙って聞いていたエリエにテルテが聞いてみる。


「はい、

このような物があるとは聞いた事がございません。

ただ、大巫女様より預かった予言があります。

『巨なる者現るる時、龍神の力を借り困難を乗り越えよ』

おそらく、今の状況を予言したお言葉かと」


「ああ、龍神か。

確かに以前海底に沈めた時なら、

龍神がおったかもな」


エリエの予言に対してミルミはそれっぽい反応をする。


「龍神て言ったって前に倒したドラゴンの仲間だろ。

そんな奴にあれを止める力があるのか?」


「いえ、妖魔のドラゴンと龍神様は別の種族です。

人より叡智に優れ、超越者と同等の力を持つ、

偉大な種族だと聞いております」


アミアの想像はエリエに否定される。


「それでその龍神様はどこに居るんだ?」


「伝承では北の果てにいると聞きますが、

詳しい場所までは分かりません」


「それならわらわが案内してやる。

久しぶりに顔を見るのも面白いしな。

ただ、テルテは行くのは無理じゃぞ」


「え、どうして?」


興味が湧いていたであろうテルテは、

それを止められて反応する。


「途中に極寒の地があるから、

鎧が無ければ通行は無理じゃ。

シウンも壊れておるし大人しくしとれ」


「しかしミルミがここまで協力的なのは不思議だな。

それに龍神に会いに行っている間に、

あの巨神は城まで来てるんじゃないか?」


「先ほど言った通り、あれは日に数歩しか進めん。

時間が無いのは確かだが、

2週間ほどは猶予があるじゃろう。

鎧だけで行くなら3日もあれば龍神に会える筈じゃ」


ミルミの言葉を信じるなら何とかなるだろう。

しかし、どれかに嘘や誤りがあれば、

手遅れになってしまう。


「エリエは龍神に会いに行く、

という案でいいと思うんだよな?」


「はい。

しかもミルミ様と旅が出来るなら、

わたくしとしては予言以上に嬉しいです」


「リンリはどう思う?」


「私は今回はミルミちゃんも嘘を付いて無いと思う。

どっちにしろ私にはあんな巨神を倒す方法は分からないし、

昔倒した事があるんなら、

その時の話を聞くのはいい案だと思うよ」


リンリの言葉は十分アミアを納得させた。


「テルテはどうだ?」


「うちはミルミが無理って言ってるなら、

あとはエリエを信じるしかないかと思う。

うちらが思い付く方法なら今巨神がいる、

東の国の奴らが試すと思うし、

それでうまく行くならそれに越した事は無いし」


テルテの言葉で、

今現在東の国が巨神に襲われていると思い出す。

正確な位置は分からないが、

東の国の海岸付近から現れ、

東の国の領地を通って城に向かっているのは確かだ。

あの大きさだ、歩くだけでもその付近の町や村は、

大きな被害が出るだろう。


「東の国の大巫女や機械武者が巨神を止める、

って可能性は無いのか?」


「大巫女様の力は偉大です。

しかし先の予言をしている事から、

東の国の中での解決は無理という事でしょう。

国の人々の事は心配ですが、

今は止める方法を探す事に尽力したいです」


エリエはミルミの事はあっても、

自分の国や仲間だった巫女達の事は心配だろう。

それを差し置いても龍神に会いに行くというのだ、

今はそれを信じるしかない。


「分かった。

ミルミとエリエの言葉を信じよう。

人間ごときが頼む事じゃ無いとは思うが、

ミルミ、道案内をお願いしたい」


「口は悪くても身の程はわきまえているようじゃな。

まあ、本当に巨神を止められるか興味深くもある。

案内してやるから付いて参れ」


こうして巨神対策として、

アミア達は北の果てにいるという、

龍神に会いに行く事に決まったのだった。



「テルテ、王都の事任せたぞ」


「ああ、何かあれば連絡する」


巨神の進攻速度が上がればアミア達が戻る前に、

城が襲われる可能性がある。

そうなったら戦わず、人々を逃がすよう、

テルテにはお願いしてあった。

また、それぞれ一方通行だが、アミア、

テルテに向かって飛ぶ魔法の手紙を準備してあり、

それぞれ何か緊急の連絡は、

それを使って送る事にしたのだった。


「王都の防衛は頼んだぞ、ユーカ」


「はい、任せて下さいませ」


オルトスに乗っているユーカが自信をもって答える。

それでも巨神のインパクトは凄かっただろうし、

虚勢を張っているのはアミアにも感じられた。

ただ、今は彼女に頼る他無いのだ。


「それじゃあ行ってくる」


アミアのリグムを先頭に、リンリのデュエナ、

エリエのアイシンと、その上のルミルが続く。

長時間の移動と遭遇するであろう敵の強さから、

今回は2重適合は行わない事にした。

エリエはルミル(ミルミ)に寒さ対策の服や、

乗り物を持っていこうと色々言ったのだが、

ミルミは不要と悉く却下したのだった。


「「行ってらっしゃい」」


候補生達に見送られ、アミア達は出発した。

城から目視出来ない位置まで来て、

ルミルが先頭に立つ。


「速度を上げるぞ、付いて参れ」


ミルミの姿に変わり、

空を飛びながら速度を上げる。

その速度はアミア達の鎧の全速力に近く、

アミア達は見失わないように付いて行くのがやっとだった。



『寒くなってきたね』


リンリから念話が届く。

北へ向かう街道に入り、道はやがて山道に変わり、

周りの景色も雪景色に変わった。

自然と移動速度も遅くなり、

ミルミの恰好もふかふかのコートに変わっている。


『この先に村がある筈です。

妖魔が占拠してるかもしれませんが、

今日はそこで休憩しましょう』


『了解だ』


エネルギーを回復する時間は必要なので、

鎧を降りなくても数時間休憩する必要はある。

村が近くなったので、

ミルミは妖精の姿になってアイシンの上に乗る。


『鎧の反応だ。

王国騎士団の生き残りかもしれない』


こんな僻地の村にいるのかは分からないが、

とりあえずアミアは警戒態勢で進む。


「止まれ。

何者だ、貴様ら。

村に何の用がある?」


お互い目視出来る位置まで来て、

村の外にいる相手の鎧から声が聞こえた。

灰色の神聖鎧のようで、

おそらく王国騎士団の騎士だろう。

村の中に鎧の反応は無く、

1機しか周囲にはいないようだ。


『あたしが話をしてみる』


『『はい』』


敵であるエリエや交渉向きで無いリンリより、

自分が話した方がいいと思い、伝える。


「あたしは大断層の西側から来た騎士だ。

大きな巨人が大陸を襲ってるのは知ってるだろう?

あたし達はそれを止める為に北の果てに向かっている」


アミアは真実をなるべく短めに話す。


「巨人の事は知っている。

しかし、なぜ東の国の巫女と共に行動している?

大断層を超えてきたとも思えん」


どうも頭の固そうな相手だ。

このまま問答していても埒が明きそうにない。

町を救ったとか、王都を奪還したとか言っても、

証拠が無いのだから結局通じないだろう。


「一騎打ちをしよう。

あたしが勝てば強さの証明になるし、

その時点で真偽がどうであれ、

村の存亡はこちらの手の中になる。

あんたが勝てば大人しく引き下がろう」


「いいだろう。

私とて王国騎士団で名を轟かせた身。

易々と勝てると思われては困る」


まあ分かり易い人で助かった。


「それでは勝負だ!」


「ああ」


アミアはハルバードを振りかぶってリグムを走らせる。

お互い2重適合では無いので、

鎧の性能としての差はそれほど無い。

あるのは操縦者の実力差だ。

相手は灰色の神聖鎧で構えたまま動かない。

見た目はパワー型で、両手には盾の機能も付いた、

大きな爪を装備している。

本当は王国騎士団の話を聞きたいところだが、

手加減すればこちらも危ない。

本気で戦うしかないだろう。


「はっ!」


リグムは速攻でハルバードを振り下ろし、

勝負を付けようとした。

しかし、ハルバードは地面に突き刺さり、

相手の姿は宙に浮いていた。

雪道だったのでタイミングがずれたのだ。


「!」


アミアは危険を察知し、ハルバードを引き抜かず、

手を放して横に回転して避ける。

リグムがいた地面には爪を下にした灰色の鎧が降りていた。


「やるな」


相手はそのまま爪を振り回しつつリグムに迫る。

雪の中での戦闘に慣れているのだろう。

一方雪での戦闘が初めてのアミアは思った通りに動けない。


(どうにか隙を作らないと)


そしてある事に思い当たった。


『火炎』


アミアは隙を見て周りの大地に火炎の魔法を使う。

すると周りの雪は溶け、地面が顔を覗かせた。


「そんな事をしても変わらないぞ」


相手は再び攻撃をしてくる。


(そうでもないさ)


「何?」


灰色の鎧は走ってくる途中で地面に足を取られる。

地面をむき出しにしたのは雪を溶かす意味もあったが、

相手に魔法の罠を見落とさせる為の仕掛けだったのだ。


「あたしの勝ちだ」


アミアは素早くハルバードを引き抜き、

灰色の鎧の両腕を断ち切ったのだった。



「王都を取り戻したとは本当か?」


灰色の鎧の騎士、タンタ・トライムは驚きの声を上げた。

戦意が無くなったところで、

アミア達はこれまでの経緯を簡単に説明し、

ネオンテの町での話から王都を取り戻した下りを話した。


「ああ、悪魔が城を支配していたが、

あたし達で倒し、候補生達と妖魔を追い払った」


「候補生か。

じゃあディルイも元気なんだな」


タンタが呼んだ名がアミアの心に刺さる。


「いや、ディルイはネオンテの町で候補生を守って戦死した。

それもあって王都を取り戻すしかないと決意したんだ」


「そうか・・・。

だが、王都奪還は我々騎士の宿願。

よくぞ果たしてくれた」


灰色の神聖鎧が頭を下げる。

今まで敵対していたのが嘘のようだ。


「村の人はどれ位いるのですか?」


「この村はもう30人位しか生き残っていない。

それに巨人の振動で近くに崩落が出来た。

どのみち長くもたないだろう」


「それなら王都に移住してはどうでしょう?

人の住む場所なら沢山余っています」


「そうしたいが、

私一人でどこまで守って王都に行けるか」


タンタの苦悩は生き残った村の人々だった。

アミア達に彼らを送ってやる時間は無い。

そして時間が経てば村の危険は増えるだろう。


「分かった、

王都からも村に向かって迎えを出してもらおう。

途中で合流出来れば危険は少しだけ減る筈だ」


「そんな事が出来るのか?」


アミアは魔法の道具で王都側に連絡出来る事を説明する。

そして魔法の手紙が届くまでの時間と、

タンタ達が山道を降りる時間を考慮し、

大体の合流ポイントを計算して手紙を出した。


「ありがとうございます。

王都で再会した時に再度お礼させて下さい」


それからはタンタと村人達は移動の準備に追われた。

本当はタンタに王国騎士団などの話を聞きたいところだが、

邪魔するのは悪いし、アミアの今の目的もそれではない。

アミア達は数時間だけ村に留まり、

エネルギーが回復したところで北へ向けて出発した。

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