表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第4部 真実
49/82

11.伝承

「こら、離さんかお主。

おい、誰か助けろ!」


ミルミがもがきながら叫ぶ。

エリエはぎゅっと抱き付いて、

どれだけミルミが暴れようと離れようとしない。

本気を出せば簡単に引き離せるが、

あえて力を抜いているのだろうと、

武者から降りたテルテは放置する事に決めた。


「アミアちゃん、どうしよう?」


「うーん、あたしの力じゃエリエは剥せないかな」


とりあえず鎧を降りたアミアとリンリだが、

2人も様子見を決め込んだようだ。

死闘を繰り広げた後なのに、

城の広間はそれを感じさせない空気になっていた。


「よし、それなら」


再びミルミの姿が歪み、

エリエから離れた場所に姿を現す。

ただ、その姿は豊満な胸の大人の女性から、

以前にテルテが見た少女の姿になっていた。


「ああ、そのお姿。

まさに夢に見た愛しきお方!!」


「アミア、リンリ、そいつを押さえろ!」


悪寒を感じ、ミルミはアミア達に命令する。

アミアもリンリも反射でエリエを両側から押さえ付けた。

引きずられそうだったが、ようやく無駄だと感じたか、

エリエの動きは止まる。


「結局その姿が本物なの?」


「我らにとって姿などどうとでもなる。

わらわは動きやすいからこの姿を選んだだけじゃ」


ミルミはそう言うが、

ディスードの前ではカッコつける為にさっきまでの姿をして、

本来はこの姿なのでは、とテルテは睨んでいた。


「それより巫女。

お主はなんなのじゃ。

殺されたいのか?」


ミルミはエリエを睨んで凄む。

ただ、先ほどの痴態が凄みを打ち消していた。


「これは、失礼いたしました。

わたくし、トワの国に使える巫女、

エリエ・ヤマタと申します。

超越者、ミルミ様とは既にお会いしておりましたが、

今のお姿では初めて謁見させて頂きます。

わたくしの命は既にミルミ様のモノ。

お気に召さなければいつでも殺して頂いて構いません。

この身体、ご自由にお使い下さいませ」


エリエは一瞬まともに戻ったように見えたが、

やはりどこかおかしい。


「もしかしてエリエちゃんの言っていた好きな人って」


リンリが何か思い出したようだ。


「はい、そうです。

我々巫女には少なからず予言の力がございます。

わたくしの場合は夢に薄っすらと見るのです。

わたくしが共に戦う姿が。

そこにはアミアさん、リンリさん、

テルテさんの3人の面影が薄っすらと残り、

そして超越者のお方の印象がはっきりと残っておりました。

幼少の折から何度も何度も同じ夢を見、

いつしかわたくしは恋に落ちておりました。

このお方の為に生きたいと」


「勝手な人間じゃのう。

そもそも正体がバレた以上、

わらわは一緒にいるつもりなど無いぞ」


「いえ、そんな事はございません。

ミルミ様が行く場所なら、

わたくしはどこまでも付いて行きます」


エリエの目は真剣だ。

これは、どうなんだろう。

ミルミが本気を出せばどうにでもなる、

と思ったが、エリエが適合者である以上、

下手に殺そうとすればアイシンの反撃に合う。

ミルミは悪魔の世界に戻るつもりは無さそうだし、

地上にいる以上どこまでもエリエは追って行くだろう。

うーん、ある意味拷問なのか、とテルテは納得する。


「おいテルテ、分かったような顔をするな。

まあ、わらわの事を置いておいても、

アミア達には色々聞きたい事があるんじゃろ?

わらわは話さんからこいつに聞いてみろ」


ミルミはとにかく空気を変えようとしたようだ。


「そうだな。

エリエ、聞かせてくれ。

超越者ってなんだ?

悪魔とは違うのか?」


アミアの真剣な問いに、エリエも表情を変えた。


「そうですね、お話し致します。

もう、大分昔の話ですので、

東の国には伝承として残っておりましたが、

王国にはもう記録は残っておらず、

悪魔と超越者の存在は同一視されたようです。

超越者はそもそも我々人間と妖魔を作り出した、

創造主に当たります」


エリエの言葉にアミア達3人は驚きを隠せない。


「創造主?

それって神って事か?」


「神の定義というのは曖昧で、

東の国と王国の宗教も異なります。

まず東の国においての神は人間を救った、

八百万やおよろずの神という存在を示し、

それは超越者とは異なります。

八百万の神の中に巫女に神装を下さった双子の神がおり、

それが王国での聖神と邪神に当たります。

東の国に伝わる言い伝えでは、

この世界で八百万の神と超越者との不幸な戦争が起こり、

龍神と聖母様の力で争いは平定し、

世界は地上と地下に分かれた、となっております。

これは王国も、東の国も出来る前の太古の話で、

正しい話かどうかは分かりません。

超越者は人も悪魔も妖魔も分け隔てなく接する存在の為、

王国では悪魔と同等の存在に変化したのでしょう。

ただ、巫女は言い伝えを信じ、

悪魔と超越者と神は別の存在として、

超越者にも絶対の忠誠を誓う事になっております」


アミアの問いに対するエリエの答えは、

にわかには信じられないものだった。


「ミルミ様、この話は本当なのか?」


「今更様付けはよせ、テルテ。

まあ、大きくは間違っておらんと思うぞ。

大昔の話じゃ、人間が好きに解釈すればよい」


ミルミは大きく否定はしない。


「えーと、

テルテちゃんはルミルちゃんの正体を知ってたの?」


「もう喋っていいよね。

ああ、知ってた。

というか、最初に2体の悪魔を倒した時、

1体を倒したのはミルミだった。

あと、エミンの正体もミルミだよ」


テルテの言葉でアミアは少し疑問だった部分が、

納得出来たと感じた。


「そっか、じゃあ大断層を降りる所からずっと一緒だったんだ。

改めてよろしくね、ミルミちゃん」


「お主の反応は変わらんな、リンリ。

わらわはそういうのは嫌いじゃない」


「え、ずるいです、リンリさん」


エリエが反応するが、ミルミは無視する。


「少し整理させてくれ。

そもそも超越者は悪魔ではなく、

ディスードは城を占拠しておらず、

そこのお姫様を迎えに来てたと。

でも、面白そうだから戦ってみて、

ゲームもしてみたと。

創造主かどうかは置いといて、

敵対はしていないし、

今の崩落とかの異変とも関係ないと?」


「大体その通りだと思いますが、

崩落の原因は巫女にも分かっておりません。

それが超越者のご意思だった場合、

巫女としては受け入れるしかありません」


「わらわは何も答えんぞ。

まあわらわや家の者の仕業、

というのは無いとだけは言っておくが」


ミルミは律義に少しだけ情報は出してくれる。

人間に対しての情が少しだけ沸いたか、

ただの気まぐれかは分からないが。


「とにかく、城は取り戻せたんだ、

町の妖魔も追い払って、

早く占拠した方がいいんじゃないか?」


テルテはミルミとエリエの件は横に置いて、

現状の話を切り出す。


「そうだな、エリエ、

本当に崩落跡は封じられるんだな?」


「はい、巫女に与えられた使命の一つですから。

町の皆さんを呼んできましょう」


エリエも気持ちが切り替わったのか、

はっきりと答える。


「ミルミ、ここが落ち着くまでは、

まだいてくれないかな」


「そうじゃの、この姿でならな」


テルテの言葉でミルミはルミルへと変わる。

情報が引き出せるかは置いといても、

ミルミが存在する事はプラスになるのでは、

とテルテは思っている。

ルミルへも飛び掛かりそうなエリエを引っ張って、

一同は一旦町の人達の元へと戻った。


===========================================================================


「お城を取り戻せたんですね!」


町の人達が待機していた場所まで戻ると、

ユーカが嬉しそうに迎えてくれた。

大破して歩くのがやっとのシウン以外、

アミア達の鎧には大きな傷は無い。


「そっちは大丈夫だったか?」


「はい、何度か大型妖魔の襲撃もありましたが、

力を合わせて撃退しましたわ」


アミアにはユーカが大分頼もしく見えた。

そして、城塞都市を任せられるんじゃないかと。

アミアは頭の中に少しだけ先の事を思い浮かべていた。


「じゃあ双子を残して、

城下町の妖魔掃討を手伝って欲しい。

大型の相手はあたし達がやるから、

それ以外を町から追い払ってくれ」


「「はい」」


双子も自分達の使命を理解し、返事した。



悪魔が城から去ったのと、

中央にいたドラゴンがいなくなった事で、

町のパワーバランスが崩れ、

妖魔同士の同士討ちと町からの逃亡が発生し、

予想より妖魔の数は少なくなっていた。

何より大型妖魔をアミアとリンリが率先して排除したので、

候補生達は難無く妖魔退治が行えたのだった。


「それでは崩落を封印いたします」


中型以下の妖魔は候補生達に任せ、

アミア達は町の中心部にある、

大きな崩落跡の前に集まっていた。


「~ー~!ー~ー・・・」


エリエはアイシンで聞き取れない呪文のような言葉を唱える。

やがて崩落跡の穴の上に光が溢れる。

そしてしばらくして光が消えると、

そこには地面があり、穴を塞いでいた。

しかし、アイシンは膝から崩れる。


「大丈夫エリエちゃん?」


「すみません、この大きさの崩落跡は初めてだったので。

もう大丈夫です、次に行きましょう」


エリエが無理をしているのは分かったが、

崩落跡を全て塞がないと町は安全ではない。

町の外は後回しにしても、

中にある部分だけはエリエを頼るしかなかった。



「はい、これで最後です」


エリエの言葉は少し辛そうだ。

町の中の最後の崩落跡を埋めると、

候補生達もやって来る。


「町の中の妖魔の反応は無くなりましたわ。

しばらくは神聖結界が必要だとは思いますが」


妖魔が占拠していた場所は霊型の妖魔が発生しやすく、

人の暮らしが安定するまでは確かに必要だと思った。


「・・・ミノタウロス倒した・・・」


シルシがやってきてアミアに報告する。


「よくやったな」


褒めて欲しいのかと思い、

デュエナに乗りながらヴァールの頭を撫でてやる。


「・・・ふふ・・・」


おそらく喜んでいるんだろう。


『アミアちゃん、教会を見つけたよ。

ちょっと来て』


「ちょっと行ってくる」


周囲を散策していたリンリに念話で呼ばれ、

アミアはその場を離れた。



「ほら」


リグムがいる場所までデュエナで向かうと、

そこには大きな石造りの建物があった。

建物自体は所々崩れているが、

全体としての形は保っている。

そしてその入り口にはよく見たモチーフが。


「聖教団の紋章と邪教団の紋章か」


「うん」


アミアが理解している範囲では相容れない存在。

その紋章が二つ仲良く並んで掲げられていた。

王都では教会は一つに二つの神を祀り、

その信徒も一緒に存在していたのだ。

エリエに聞いた話や候補生の存在で分かっていたのだが、

いざ現実を突き付けられると動揺せずにはいられない。


「どうして分かれちゃったのかな」


「大断層のせいなのか」


2人には疑問しか出てこない。

アミアもリンリも気付いた時には二つの教団は争い、

人間はどちらかに属さないと生きる事が厳しかった。

王都のように手を取り合えばもっとうまく行ったのでは。

アミアの心に姉の死が思い出される。


「仲直り出来ないのかな」


「もう、無理だろう」


大断層の西側では教団同士で殺し合いをし過ぎた。

その恨みはそう簡単に消えないだろう。

生き残る為の苦渋の選択だったのかもしれない。

それでも今更どうにか出来るともアミアには思えなかった。


「戻ろっか」


「そうだな」


アミアは心の痛みを胸にしまい、

リグムの後に付いて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ