人間社会復帰の為のリハビリ
「鑑定持ちのゴロウはおるか!」
「お呼びですか姫」
「早くあの者を鑑定するのじゃ! 弱点が分かるやもしれぬ」
「はっ只今! ……【鑑定】!」
あのゴロウっていう人の両目が淡く光ったな。
話を聞く限り【鑑定】スキルで俺のステータスを見ようとしてるのか。
姫にゴロウと呼ばれた男が紙束を懐から出して筆で何かを書きはじめた。
「姫、こちらが、あの者の鑑定結果にございます」
「下がって良い」
「はっ」
姫ちゃんが紙を覗き込んだ。
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◆ユラリ・ツクミハラ
種族:人族 性別:男 年齢:17才 職業:なし
LV:1 HP:100 MP:100 SP:100
物理攻撃力:50 物理防御力:50 敏捷力:40
術効力:40 術抵抗力:40 幸運:10
アクティブスキル:なし
パッシブスキル:学識1、集中1
称号:逃亡者、異世界転移者
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「ど、どういうことなのじゃ? 七人の侍を軽くいなした男とは思えぬ低い能力値であるな。まるでただの庶民のようではないか! ぬっ!? い、異世界転移者じゃと!?」
落ち着け俺。
ここで暴れても後が大変になるだけだ。
夢のゆるゆる人任せ異世界生活の実現のためにも、ここは我慢して話し合いだ。
「あの〜、俺の話しを聞いてもらえないか?」
「お主達は下がっていなさい。ここは拙者が出よう」
だから俺の話しを聞けって!
あ〜あ、とうとう頬に傷のあるおっさんが出てきちゃったよ。
この中では一番強そうだけど念のために見ておくか。
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◆テンゲン・オウマ
種族:人族 性別:男 年齢:53 職業:剣術道場の師範
LV:43 HP:1840 MP:560 SP:1340
物理攻撃力:550 物理防御力:550 敏捷力:440
術効力:260 術抵抗力:260 幸運:70
アクティブスキル:袈裟切り5、突貫5、一閃6、燕返し5、背水の陣5、縮地3、受け流し5、鞘打ち3、峰打ち3
パッシブスキル:気迫5、見切り5、底力5、刀剣術7、殺気感知4、気配感知5、学識3、指導6、武士道の心得3
称号:剣の道を歩みし者、厳しい師範、焼き魚には大根おろし派
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このおっさん、剣術道場の師範だったのか。
どおりで強そうな雰囲気だと思ったよ。
ん? 背水の陣ってどんなスキルだろ。
詳細情報見てみるか。
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◆背水の陣
瀕死の状態で発動可能になる強化系スキル。防御を考えず全ての意識を攻撃に集中することで、攻撃力を大幅に上昇させる。
効果:物理攻撃力が大幅に上昇、物理防御力が大幅に下降。
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背水の陣ってそういうスキルか。
つまりは防御を捨てる代わりに攻撃力を上げるスキルだ。
このおっさんはなかなか強いな。
実戦的なスキルも揃ってるね。
さすがは剣術道場の師範だけはある。
あ、称号を見ると焼き魚には大根おろし派ってある。
わかる、わかるよその気持ち!
俺も大根おろし派だからな!
ポン酢が大根おろしの辛味と相性抜群なんだよな〜!
なんか称号見ると親近感が湧く。
「誰に差し向けられたか知らぬが、その歳で暗殺者とは世も末だな。兵の指南役選定試合に乱入とは、よほど腕に自信があるようだ」
兵の指南役選定試合?
ああ、それで強そうな人達がこの庭に集まってたのね。
そりゃあさ、いきなり地中から顔出すやつなんて妖しいのは分るけど、話しもろくに聞かないで寄ってたかって殺そうとするのは、強さうんぬんの前に人としてどうなのよ。
あ、悪いのは不法侵入してきた俺の方か……。
それにしても人相手の戦闘って面倒だな。
相手が魔物だったらサクッと殺してお終りなのに。
これから人間社会で平和に暮らしていくには、俺に敵意がないと分ってもらわないといけないから、襲い掛かって来たからといって無闇に殺しはいけない。
これも人間社会復帰の為のリハビリだと思って我慢だ。
「だから、俺の話しを」
「せいやぁぁぁ!」
テンゲンのおっさんが予備動作無しに一瞬で俺に接近し、無駄のない動きで高速の横薙ぎを繰り出した。
【俊足】の上位スキルである【縮地】か、早い動きだ。
俺はテンゲンの斬撃を紙一重で躱す。
さらに連続で斬撃が襲いかかるが、俺は全ての攻撃を最小の動きで躱し続けた。
俺は後ろに飛び退き距離をとる。
まあ、こいつらは俺を殺しにきてるんだし、ちょっとは反撃してもいいよな。
俺は軽く腰を落とし素手で戦う構えをした。
俺も【縮地】を使い瞬間移動でもしたかのような速度でテンゲンの懐に入り、手の腹で顎を真下から打ち上げた。
テンゲンは俺の速さに対応できず空中に打ち上げられ、意識を失ったのか地面に倒れて動かなくなった。
この様子じゃしばらくは目覚めないだろうな。
俺の【縮地】のレベルは最高レベルの十だから躱せないだろう。
他の奴らは何が起こったのか理解できずに呆然としている。
面倒だがこいつらにも眠ってもらうか。
俺は再び【縮地】で、周囲の人々を素手で打ちのめしてまわり、二十人はいたけど一分もかからずに姫以外全員の意識を失わせた。
姫は容易く倒される侍や家来達を見て驚き動揺している。
姫以外は全員倒したから辺りは静まり返った。
これで俺の話しを聞いてくれるだろう。
俺は姫に歩み寄り告げた。
「先ほども言ったが、俺に敵意は無い。話しを聞いてくれ」




