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再会はいつも突然に

 



== 12時9分 ==


 ここは東町の港にある空船専用発着場。


 俺はオウカに頼まれアイゼナーグ騎士王国の特使団を旅館に泊まらせる事になった。

 特使の要望で日乃光国滞在中はずっと俺の旅館に宿泊するらしい。

 俺は特使の護衛も兼ねるから、常に近くで気を張らないといけないので辛い。

 護衛期間が一ヶ月とか長過ぎるだろ。


 俺が空船発着場に到着すると、既にアイゼナーグからの船が到着していた。

 この国とは違う様式の大型の軍用空船。

 空船の外壁は赤く塗られており、装飾的で西洋の貴族が乗っていそうな豪華なものだった。

 数十カ所空いている穴からは大砲の砲口が覗いている。


 国旗も掲げられており真っ赤な布地に獅子と剣と盾が描かれている。

 俺がアイゼナーグの空船に近づいた丁度その時、特使団と思われる人達が船を降りてくるところだった。


 始めに姿を現したのは西洋風の全身鎧を装着している十数名の兵士。

 恐らくは騎士だろう。

 兜や赤いマントをつけていて完全武装だ。


 騎士達の後から膝上丈のスカートに軽装鎧をつけた女性騎士がマントを翻して出てきた。

 たぶんあの大きい胸の女が特使だろう。

 特使は女だとオウカから聞いているからな。


 その女性騎士を護るように彼女の周りを騎士達が囲んでいる。

 ん? あの女騎士のマントの裏地、他の騎士とは違って花柄だな。

 花柄? 胸が大きい? そんな検索ワードに引っかかる奴に心当たりが……。

 ま、まさかな。


 その騎士達が俺の近くまで来ると、女騎士は兜を外して放り投げ、俺に抱きついてきた。


「ユラっ!!」


「ち、チドリなのかっ!?」


 なんとアイゼナーグ騎士王国の特使として派遣されて来たのは、俺の幼なじみのチドリだった。


「やっぱりこっちの世界に来てたのねっ! ユラっ!」


「ほ、本当にチドリか!?」


 チドリはものすごい力で俺を抱きしめる。

 内蔵が口から出てきそうなくらいに。


「く、苦しいっ! チドリっ! ギブ! ギブだから離してくれっ!」


 チドリは慌てて俺から離れた。


「あっ、ごめんごめん! つい力が入っちゃった……」


 なんちゅう馬鹿力だ。

 俺でなければ背骨いっちゃってたんじゃないか?


「本当に久しぶりだな! 元気にしてたか?」


「あたしの事よりもユラは大丈夫だったの? あたしは三十年前にこの世界に転移してきてから、あんたの事をずっと探していたのに最近まで何も情報が無かったから心配してたのよ。今まで何処に隠れていたの?」


 今まで俺をずっと探してくれてたんだな。

 そういう世話焼きなところは変わってなくて安心したよ。


「隠れていたというか、捕まっていたというか。……地下に」


「地下?」


「まあな、詳しい事は後で話すとして。お前、三十年も経ってるのに見た目は変わっていないな」


「それを言ったらユラもじゃない。あたしも聞いた話だけど異世界から来た人達って老化しないらしいわよ」


「やっぱりそういうチート現象だったか」


「ふふふっ、チートなんて言葉、久しぶりに聞いたわ」


「老化しないのは何となく分っていたけど、お前さ、体つきとか立ち振る舞いとか逞しくなったな。纏う雰囲気もか」


「そりゃあ三十年も経っているもの。あたしだって成長するわ。聞いて驚きなさい! 今のあたしはアイゼナーグ騎士王国の騎士団長をしているのよ!」


「まじか! お前が!? なんかすごい事になってるな」


「あんたはどうなの? 日乃光の国の旅館で総支配人してるって噂では聞いてたけど、あんたにしてはかなり出世したんじゃない?」


「楽に生きようとしたら、いつの間にか旅館の総支配人になってた」


「はぁ〜。あんた三十年経っても変わんないのね。ちょっとは芯の強い男になっているかと期待してたけど、今もあんたの頭の中はプリンよりも、あ、訂正するわ、水よりも緩いようね」


「揺る過ぎでダラダラこぼれるわっ! ほっとけ!」


「ふふふっ、なんかこういうやり取りも懐かしいわね」


「そうだな」


 空船から鎧を着用していない気難しい顔の人達も降りて来た。

 実務を担当する外交官達も大勢いるようだ。

 チドリを護衛していた騎士の中から一人の若い男が兜を脱ぎ脇に抱えた。


「この方は団長のお知り合いですか?」


「ええ、昔からの知り合いなの。名はユラリ」


「そうですか。私は副団長のレイゼル。団長のご友人とあらば、さぞかしお強い武人なのでしょうな」


「俺はそれほどでもないよ。たぶんまともにやりあったら今のチドリには敵わないだろうな」


 ステータスを見るまでもなくチドリが強くなっているのは肌で感じる。

 さっきの怪力もそうだが、チドリから放たれる強者の雰囲気がハンパない。

 これは感知系のスキルで感じたのではなく、生物としての本能で感じる恐怖に似た感覚だ。


 もしチドリと俺が正面からやり合ったとしたら、俺は瞬殺されないまでもチドリに一撃も有効打を与えられずに殺されるかもしれない。

 そう思えるほどの強さに感じられた。


「君の判断は正しい。我らが誇るチドリ団長はアイゼナーグ騎士王国最強の騎士と言われるお方。別名花柄のチドリ。団長に敵う者などこの世界にはいないでしょう」


 まじか! どんだけ強くなってんだよチドリは……。

 それに二つ名までついてるとは、かなり出世したようだな。


「レイゼル、それは言い過ぎよ。世界は広いわ。あたしより強い人なんてきっと何人もいる」


「はっはっは、何をご謙遜を」


 あ、まただよ。

 オウカの時と一緒だ。

 せっかくの再会の場面だったのに。


 何がって?


「なあチドリ?」


「どうかしたのユラ?」


「そのレイゼルっていう奴、殺さなくていいのか?」


 俺の一言でその場の空気が凍り付いた。


「え……何を、言ってるの?」


「だってそいつの称号にトランゼシア帝国の密偵ってあるぞ」


 その俺の言葉でその場に鋭い殺気が満ちた。

 殺気を放ったのはチドリの隣にいたレイゼルだった。

 レイゼルは素早い動きで抜剣しチドリの背後に回り、剣を彼女の首に当てて叫んだ。


「動くなっ! 動けばこの女の首が飛ぶぞ!」




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