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商人に必要な三つの事

 



「この者の名はギンコ・シノノメ。我が敵を刺し貫く剣となり、我を護り支える盾となれ! 我の元に集いし二十四守護者の一人として、ここに守護者契約を結ぶ! スキル【守護者任命】発動っ!!」


 ギンコの体はまばゆい光を発し沼から徐々に空中に浮き上がる。

 俺の中の力がギンコの身体の中へ流れ込む。

 そしてギンコの額の位置に光が集束し、一枚のカードを形成していく。


 そのカードに描かれているのは右手と左手にそれぞれ壷を持つ黒い着物に身を包んだ女。

 その女は清らかな水を壺から壺へと移し替えて循環させ、浄化を続けている。

 女の背後には数々の掃除道具と石けんや洗濯板が置いてある。


「安息や淀みなく純粋な状態を意味し、浄化する人を意味する守護属性。節制のカードか。思った通りだな」


 ギンコは体の発光現象が収まるとゆっくりと地面の上に立つ。

 俺はすでに【闇沼】を消していた。


「な、何が起こったのですか師匠! か、身体が、我の身体の汚れが消えています! いや、今までよりも全身が遥かに清潔になったように感じられます!」


 始めに気になるのはそこなのかよ。

 生まれ変わって力が溢れてくるとかじゃなくて、清潔になった事の方に驚くとは。

 筋金入りの潔癖性だな。


「それは俺の使ったスキルの効果だ。俺と契約を交わす事で潜在能力を発揮させる事ができるというものだ」


「そんなスキルがあるなど聞いた事が無い。もしや師匠は異者では!?」


「ああ、そうだ」


「やはりそうですか。それならば特殊なスキルを使えるのも不思議ではない」


 このスキルは蟻の女王のスフィアで習得しただけで、俺のオリジナルじゃないんだけどな。


「不思議な事に身体の奥底から清潔感が溢れ出てきます!」


 清潔感が溢れ出す?

 ま、まあ、本人が喜んでいるからいいか。

 ギンコの守護者になった後のステーテスはどうなったかな。

 アウレナ先生お願いします。


=====

 名前:ギンコ・シノノメ

 種族:狐人族  性別:女  年齢:21  職業:旅館の掃除洗濯係

 LV:45  HP:2340  MP:1130  SP:2470

 物理攻撃力:1100  物理防御力:645  敏捷力:1555  

 術効力:695  術抵抗力:615  幸運:150

 アクティブスキル:忍者の基本術技5、洗浄8、空気清浄5、殺菌5、高速清掃7、高速洗濯7

 パッシブスキル:清潔8、冷静5、罠仕掛け5、急所看破5、罠察知5、汚れ感知8、気配感知5、毒耐性5、痛み耐性6、気絶耐性6、清掃術8、洗濯術8、刀剣術5、撒菱まきびし5、苦内5、手裏剣5、能力隠蔽7、夜伽の作法5、忍者の心得7

 称号:輪廻周回者、ユラリの弟子、緻密な計画者、潔癖性、人見知り

 ※ユラリの二十四守護者の一人:節制

=====


 わお!

 本人が望んだように掃除や洗濯のスキルが増えてる。

 契約してしまったけど、ギンコの潔癖性に拍車をかけてしまったかもしれない。

 ま、まあ、本人が喜んでいるって事は問題無しだよな。

 

 改めて見ると、こいつ狐人族なんだよな。

 顔を隠していてキツネミミも見えないし、フサフサシッポも着物の中に収められているのか見えない。

 あ〜シッポくらいはモフモフしたかったのに。

 もっと仲良くなったら触らせてくれるだろうか。


「師匠。我に新たな人生を与えてくださり心から感謝します!」


 ギンコは俺の前に跪く。


「頭を上げてくれ。元々お前に内在していた能力を引き出したにすぎないんだからな」


「それでも我に新たな道を示したのは師匠です。我の持つ全力で旅館を清潔に、そして美しく完璧に維持して見せましょう!!」


「おう、任せたぞ。他の従業員への紹介や仕事の詳細は副支配人のセフィリアに聞いてくれ。今は周囲の警戒で手が離せないだろうから明日な」


「了解しました。共に清潔な頂きを目指しましょうぞ、師匠! 我はこれから旅館内の現状を視察してきます。それではまたっ!」


「あ、ああ」


 ギンコは素早い動きで旅館の方向へ消えて行った。

 やる気満々だな。

 俺は【念話】でイナンナに話しかけた。


「あー、イナンナ、聞こえるか?」


『うん。聞こえる』


「今からそっちに忍者が行くと思うけど、そいつ、うちの旅館の従業員になった奴だから、襲わないように骸骨騎士達に指示を出しておいてくれ」


『わかった』


 これからはギンコに掃除洗濯を任せてもいいだろう。

 これで他の従業員達の負担も軽くなるはずだ。

 行き当たりばったりだが、順調に人材が揃っている。

 はやく食っちゃ寝生活したいなー。

 俺も旅館に戻るか。




== 3時9分 ==


「総支配人、ちょっといい?」


 俺が旅館に戻ると深夜だというのにロビーにイチゴが立っていた。


「ん? イチゴか? どうしたんだこんな時間に。外が騒がしくて眠れなかったか?」


「そうではないの。……えーと、その、外の様子は?」


「大丈夫だ、今一段落ついたところだ」


「そうなの。それで、ここを襲った奴らの正体は分ったの?」


「いやまだだ。結局黒幕の居場所は分らずじまいだ。だけど絶対に正体をつかんで始末をつける」


「……そう」


「どうしたんだ? 何か悩んでる事があるなら俺に言えよ、大抵の事なら叶えてやるぜ」


「本当に?」


「ああ。どうしたんだよ。待遇に不満があるなら相談に乗るけど?」


「そうじゃない。待遇には満足してる。というか待遇が良すぎるくらいだわ」


「じゃあ何だ?」


「……その商人組合の黒幕についてなんだけど」


「ああ、イチゴは何か知っているのか?」


「……その黒幕の事を、許してもらえないかしら」


「どうしてイチゴがそんな事を。なぜ許して欲しいのか理由を言ってくれないか?」


「それは……私がその黒幕の娘だからよ」


「娘? 本当なのか?」


「本当よ。実はあたし、父の商売のやり方に嫌気が差して家出をしてきたの。そうは言っても実の父であることには変わりないから」


「それで許して欲しいと」


「そういうこと。ねえ、お願いよ。今の父は欲に目がくらんでいるだけなの。正気に戻ってくれれば今までの悪行を反省してくれると思うの」


「……ダメだな」


「え!?」


「今から改心しようがしまいが俺の家族に危害を加えようとしたことには違いない。その責任をとるのは当然だろ」


「そ、そうだけど、でもっ!」


「その話の前にちょっと聞きたいんだが、俺はまだ黒幕の居場所を知らなかったのにお前が黒幕の娘だと名乗り出てきたら、俺がお前を拷問して黒幕の居場所を聞き出すとは思わなかったのか?」


「あなたはそんな事はしないわ」


「どうしてそう言える?」


「商人として成功するのに必要な事が三つあるの。聞いたことある?」


「いいや」


「一つめは、どんな商品が何処でどれだけ入手できどれだけ売れるか、そしてその情報を正しく解釈し利用する情報力。二つ目は、いかに自分に有利な条件で取引ができるか左右する交渉力、三つ目が商人にとって何より重要とされる人や物の真の価値を見極める観察眼」


 情報、交渉、目利きか。

 言い得て妙だな。


「あたしは小さい時から観察眼を鍛えるために物の価値を見抜く訓練を延々とさせられたの。物の価値が分るようになると自然と人の価値や性格も分るようになってくる。あたしにはあなたが一度家族として迎えた人に酷い事はしないと確信できる」


「よく分るな。でもお前のステータスにはそれらしきスキルは無かったけど?」


「これはスキルではなくあたしの習慣や癖に近いものかもね」


 スキルとしては習得してないけど、積み重ねた経験でわかるという事か。


「あたしの父は手を出してはいけない相手に手を出した。例え父の居場所をあたしが言わなくても、あなたは必ず見つけ出してしまうわ」


「そうだな。時間はかかっても絶対に始末はつける。そうしないと俺の家族が安心して暮らせないからな」


「そう、その一度家族と認めた人達に対する強い執着、強い思い、愛とでも言えば良いのかしら。それこそがあたしがあなたを最も高く評価する部分なの。そしてそれを実現するだけの力もある。今回の傭兵達の襲撃でそれを知る事ができたわ。だから父は絶対にあなたには敵わないと考えたの」


 俺の事を高く評価してくれるのは嬉しいけど、それとこれとは話がちがうんだよな。


「虫の良いことを言っている自覚はあるわ。でも、幼いときに母を無くしたあたしを育ててくれた、ただ一人の父なの。お願いよ、父を許して欲しいの!」


「お前の言い分は分った。まずはお前の父親のいる場所まで案内しろ。話はそれからだな。お前の父親が俺の旅館や家族に危害を加えようとした事に対する謝罪と、俺が納得するような責任の取り方を示せるら考えてもいい」


「わ、わかったわ。あたしが父の目を覚まさせるから!」


「ああ、俺はすぐに殺した方が楽でいいんだけどな。旅館の経理をしてくれてるイチゴの頼みだ。機会はやる。……でも、分ってるよな?」


「ええ、覚悟はできてる。もし父が言っても聞かないようなら、その時は……」


「よし、それなら出発は明後日になってからでいいか? ちょっと準備したい事があるんだ。お前もまだ夜明けまで時間があるから少しでも寝ておけよ」


「ええ、休ませてもらうわ。……総支配人、父を救えるかもしれない機会をくれてありがとう」


「感謝の言葉っていうのは、全てがお前の望む結果になったときに言うもんだぜ。まだお前にとって最悪の結末になる可能性もあるんだから」


「それでも、ありがとう」


 イチゴはそう言って自分の部屋に戻っていった。

 イチゴの父親がどういう態度なのかは実はどうでもよかったりする。

 俺が愛すべき家族が安全に暮らせる事が一番重要だからだ。

 

 もしイチゴの父親が改心せず俺に殺され、東江の都の商人達がどうなろうと知った事ではない。

 しかし、俺にとって最悪の結果というのもあるんだよな。

 そうならなければいいけど。




ここまでご覧頂きありがとうございます。

そろそろ文章のストックも無くなってきたので、不定期掲載にさせていただきます。

目標は一日一回のつもりで頑張ります。

まだまだ続けて行くつもりですので、末永くよろしくお願いします。

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