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もうお帰りですか?

 



※傭兵団団長視点




「団長、全員配置に着きました。いつでも行けるぜ」


「わかった。全方位から一斉に襲撃する。殺害目標は総支配人のユラリという若い男だ。そいつの人相書きは覚えてるな?」


「抜かりはないですよ」


「それ以外の従業員は好きにしろ」


「ひゃっほい! この旅館の従業員はいい女が揃っているって有名ですからね。腰が砕けるまで遊んでやるぜ」


「優先順位を間違えるなよ。まずは目標の排除だ。もうすぐ申し合わせておいた作戦開始時刻になる。突入の合図はお前の【多人数同時念話】で伝えろ」


「わかってますって」


 三つの月が枝葉の隙間をぬって林を照らしている。

 夜襲するには最適な日だ。


「よし。では突入開始だ」


『野郎共突入開始だぜ!!』


 俺達の人数は五十五名。

 旅館を取り囲むように突入する。

 たかが旅館の総支配人一人を殺すのに、俺達全員を駆り出さなくてもいいようなもんだが、あの方の命令は絶対だ。


 金で雇われている俺達は言われた通りに人を一人殺せば良いだけ。

 簡単に終わる仕事のはずだった。

 そのはずだったんだが。


「がはぁっ!!」

「ゔごっ!!」

「ぐふっ!!」


「な、なんだ、なんなんだ、あいつらは!?」


 俺の視線の先には全身黒い鎧に身を包んだ骸骨の騎士が悠然と骨の馬に乗り閉じた傘のような槍を構えていた。

 大陸ではランスとか言う名前だったか。

 その騎士は俺の部下を三人まとめて串刺しにしている。


「お、おい、あんな奴がいるなんて聞いてねーぞ!?」


 あれは魔物だ。

 それもかなり高位の魔物だ。

 こんな人里近い場所に出るなんて聞いたことがない。


 その骸骨騎士はランスに串刺しにされた男達を地面に放り投げた。

 するとすぐに地面から何かが這い出してきた。


「屍人!?」


 あれは屍人だ!

 最近では妖精の森に出ると言われていたが、どうしてこんな場所に出る!?

 その屍人が死んだ部下達の死体を貪り喰っている。

 なんちゅう光景だ。

 ここは地獄か!


 骸骨騎士は旅館を背にして同じ位置から動かない。

 旅館を護っているとでもいうのか。

 そんなバカな。

 魔物が人を護るなどありえない。


 その時他の部隊から念話が届く。


『団長! 骸骨だ! 骸骨の騎士に俺以外みんな殺された。無理だ、こんな奴になんて勝てなっ、ごゔっ』


 念話が途絶えた。

 どうなってる!?

 ここ意外にも骸骨の騎士がいるというのか?


 耳を澄ますとはなれた場所から部下達の悲鳴が次々に聞こえてくる。

 何体も骸骨騎士がいるということだ。

 どうする?

 敵の戦力を見誤っていた。

 この作戦は中止するべきだ。


 俺は【多人数同時念話】ができる部下に退却の指示を出させようとした。


「おい! 念話で全員に知らせろ! 退却だ!!」


 しかし俺がそいつに目を向けると、そいつの頭が無くなっていた。


「は?」


 そして部下の体は地面に倒れる。

 その死体の側には人相書きによく似た若い男が立っていた。

 その若い男はにやけた顔で近づいてきた。


「おい、おい。もうお帰りですか? お客さん、まだ建物の中に入ってもいないのに。俺の旅館は露天風呂が有名なんだぜ」


「お、お前、総支配人のユラリだな」


「ああ、そうだ」


 俺は刀を構える。

 その若い男は自然体でこちらに歩いて来る。


 目標が目の前にいる。

 こいつさえ殺せば、あの骸骨騎士と戦わなくて済む。

 こいつさえ殺せれば!

 俺は【俊足】で目標に高速で接近し刀を振った。

 そして次の瞬間意識を失った。




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