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蟻の卵と蟻の幼虫




 光に包まれてからどれくらいの時間が経ったのかわからない。

 俺は硬くて冷たい感触で目を覚ました。


 「ん……どこだここは……」


 俺は未だはっきりとしない意識の中、ゆっくりと立ち上がり周囲を見回した。


 「目眩がする……」


 俺の意識が徐々に覚醒し始めると周囲の状況が目に入ってきた。

 その光景は大人がまるまる一人入る程の大きな球体が、数百個所狭しと並ぶ薄暗い洞窟の中だった。


「……え? ここどこ? さっきまで実験室にいたはず。それに、何この巨大な球……じゃないか。もしかして卵?」


 俺はわけが分らず立ちすくんでいると、パキッという音とともにすぐ側の卵にひびが入った。

 何かが卵から孵ろうとしていた。


「な、なんだかこの場所。いやな予感しかしない。ていうか本当にここ何処!? 親父は? みんなは何処行った?」


 見回しても辺り一面卵しか無い場所だった。

 なんか昔の映画にこういうシーンがあったよな。

 確かその映画では卵から人を喰う化け物が飛び出してくるんだったか?

 ははは、ま、まさかな。


 俺はひびの入った卵が何の卵か知りたくて、卵に意識を集中するとアウレナが自動で情報を検索し視界に表示した。


=====

 ◆ヘヴンズアントの卵

 大陸の全域に生息する巨大な蟻の卵。

=====


 おいおい、なんだよこの卵。

 蟻の卵だって!?

 ありえないだろこんな大きい蟻の卵って。

 なんか前にはまって廃人になりかけたVRゲームに、名前は違うがこんな大きな蟻の魔物がいたような気がする。


 そのゲームでは情報を見る為のスキルでいろいろ調べられたけど、この卵も同じようにできたっぽいな。

 じゃあここはゲームの中の世界か?

 でも俺、アウレナでゲーム始めた覚えないんだけど。

 親父の研究を見物しに地下へ行って、それから光に包まれて、気付いたら卵に囲まれていたと。


 なんだそれ、意味がわからん。

 それにヘヴンズアントって蟻だよな。

 俺の意思に反応しアウレナがさらに情報を表示した。


=====

 ◆ヘヴンズアント

 大陸の全域に生息する巨大な蟻。働き蟻は体長三メートル、兵隊蟻は体長四メートルまで成長する。女王蟻を頂点にしたカーストを形成し、地下に広大な巣をつくり生活する。地下に生息する魔物の中では最強の強さを誇る。

=====


 なんだこれ、やっぱりゲームなのか?

 体長四メートルの蟻っておかしいよな。

 俺のアウレナ壊れてんのか?

 自己診断ツール起動だ。


=====

 ◆問題は検出されませんでした。

=====


 まじか。


 そういえば実験室で光に包まれたとき、一瞬アウレナの声でインストールがどうのと聞こえた気がする。

 という事はやっぱりここはVRゲーム内で、俺は今プレイ中なのか?


 俺は近くの卵に手を触れてみた。

 するとひんやり硬い質感が伝わって来る。

 中で何かが蠢く気配や、例えようのない生臭さもリアルに伝わってきた。


 ははは。いくら最先端のVRゲームでも五感がここまで現実にちかい再現は無理だ。

 これ現実だわ。

 一体どうなってんの?


 パリッ! パキッ!


 こ、この卵、ひびが多くなってきたぞ。

 どうする、どうしたらいい?

 自分の現在位置もわからない所に一人ぼっち。

 とりあえずこの卵部屋から移動するか。

 でも何処に?


 あ、とうとう卵の殻が割れたよ。

 うわ、中から巨大な白い幼虫?

 もぞもぞ這い出してきたよ。

 なんか粘ついてるしキモイな。

 こいつの情報は?


=====

 ◆ヘヴンズアント  

 種族:魔物  性別:雌  年齢:0  職業:なし

 LV:1  HP:150  MP:100  SP:150

 物理攻撃力:80  物理防御力:110  敏捷力:20  

 術効力:20  術抵抗力:50  幸運:10

 アクティブスキル:噛み付き1、体当たり1

 パッシブスキル:なし

 称号:産まれたて

=====


 お、ゲームっぽい内容が表示された。

 現実なのかゲームなのか分らない場所だな。


 HPとMPは分るけどSPってなんだ?

 ゲーム知識を適用すると技を使うときに必要なスタミナポイントかな?

 幼虫の能力値がどれほどの強さを表しているのかはまだ判断がつかない。


 ん? まてよ自分自身の情報を見てみるか。

 そうすれば俺自身を基準にして大体の強さを知る事ができる。

 自分の手を見て情報を見てみた。


=====

 ◆ユラリ ツクミハラ

 種族:人族  性別:男性  年齢:17  職業:高校二年生

 LV:1  HP:100  MP:100  SP:100

 物理攻撃力:50  物理防御力:50  敏捷力:40  

 術効力:40  術抵抗力:40  幸運:10

 アクティブスキル:なし

 パッシブスキル:学識1、集中1

 称号:一般人、異世界転移者、怠け者、コミュ障

=====


 弱っ!!

 俺って蟻の幼虫より弱いじゃん!

 どういうこと!?

 それに称号を見ると異世界転移者ってある!?

 という事はこの場所は異世界なのか?

 う、嘘だろ。


 他の称号には怠け者ってある。

 そ、そこまでは許す。

 事実だからな。

 でもコミュ障って……うっさいわ!! ほっといてくれ!


 思わずアウレナにつっこんでしまった。

 

 こういう異世界転移する人って、人助けしてトラックに引かれて死んだ人が行く場所じゃないかよ。

 俺には人助けした記憶も事故にあった記憶もない。

 ……あ、もしかしてあの光る玉が原因か?


 いや、まて、落ち着け。

 夢を見ているという可能性もあるじゃないか。

 ははは、それだ、それに違いない!

 俺は親父の研究を見学に行って、そこで疲れて居眠りしてるんだな。

 そうであってくれ!


 卵から孵化した幼虫が口から唾液を垂らしながら俺に近づいてきた。

 た、頼むからこっちにこないで!

 俺の事を餌か何かと勘違いしているんだな。

 例え夢の中でも幼虫に喰われるのは嫌だ!


 こいつのステータスは俺より上だ。

 幼虫でもこの大きさだから強くて仕方が無いか、という事にしておこう。

 こいつら動きは鈍そうだから逃げれば大丈夫。

 落ち着け俺。


 あらら、周囲の卵も次から次へと孵化してきたよ。

 キモッ!

 でかすぎんだろこの幼虫達。


 そして恐らくここは蟻の巣の中。

 巨大な蟻がいっぱいな場所に、俺はいるという事になる。


 もしかして……俺、こいつらに喰われちゃう?


 は、早く出口を見つけて逃げないとな。

 お、早速通路発見。

 この幼虫部屋から繋がっているのはあの道しかないから、行くしかない。


 幼虫や卵を刺激しないようにゆっくりと歩こう。

 アウレナの情報によると、俺が幼虫と喧嘩しても勝てそうにないからな。


 俺は卵の横を恐る恐る避けながら通路に向かって歩く。


 それにしてもさ、俺の知っているゲームとかだと、冒険の始まりは弱い魔物しかいないのが普通なんだけどな。

 転送先が俺より能力が高い幼虫でウジャウジャなのは難易度高すぎない?

 もし俺をこんなところに転送させた奴がいるなら後で絶対文句を言ってやる。


 よし、もう少しだ。


 あ、あれは……。


 俺が向かっている通路の先から、凛々しい蟻さん達がワラワラと出てたんですけど!?

 見るからに強そう。

 ア、アウレナで強さを調べてみよう。


=====

 ◆ヘヴンズアント  

 種族:魔物  性別:雌  年齢:5  職業:世話係

 LV:35  HP:1550  MP:500  SP:1400

 物理攻撃力:450  物理防御力:450  敏捷力:340  

 術効力:240  術抵抗力:340  幸運:20

 アクティブスキル:噛み付き5、爪撃5、俊足3、蟻糸5、硬甲殻3

 パッシブスキル:器用5、豪腕5、臭覚5、聴覚5、卵の世話7、幼虫の世話7、蛹の世話7、女王蟻の世話7

 称号:働き蟻、世話好き、忠実な僕、寡黙

=====


「はっ!? つ、強すぎだろっ! 夢なら早く覚めてくれ!!」




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