幸せ見つけた
「うと?」
俺の目の前に烏兎が全裸で立っていた。
ここ男湯なんだけど?
じゃない。
ここ異世界なんだけど!?
「やっぱりお前も転移してきていたのか!?」
「??。ユラリ、イナンナを幸せにして」
「え!? は? 烏兎がどうして? イナンナの事を幸せにしろと? え? はい?」
なんだ? どういう事だ!?
ああ、頭が混乱してる。
状況が理解できない。
あ、全裸のペティも洗い場に入ってきた。
「イナンナちゃん!? こっちは男湯なんですよっ! 女の子は入ってはダメな場所なんです! はわわっ! ご、ご主人様!? いらしたんですね……」
もしかして俺、温泉に長く入ってのぼせたのか?
そうか、そうかもしれない。
だって、全裸の烏兎とペティが男湯にいるわけないしな。
それなら早く風呂から上がって頭を冷やさないと。
そうだよな、そんなのいるわけがない。
俺は風呂から上がろうとして立ち上がる。
そして洗い場に立つ全裸の烏兎の前まで歩く。
それにしても烏兎の幻覚、少し小さく見えるのは気のせいか?
まあ幻覚なんだからこんなもんか。
ペティの幻覚はいつも通り控えめな胸プリンが可愛いな。
い、いかんいかん、急いでここを出ないと。
倒れたりしたら大変だ!
その時俺は二人の幻覚に気を取られ足を滑らせた。
「おわっ!!」
「ご主人様っ!?」
俺は気付くと烏兎に多いかぶさっていた。
「いてててて、あ、烏兎悪い……って幻覚に誤ってもな」
「ユラリ……」
「あれ、体に触る事ができる。異世界の幻覚はそんな事もできるのか」
「くんくん……」
「へ?」
「ご主人様!? 大丈夫ですか? お怪我はないですか?」
「ああペティの幻覚に心配されちゃったな。ああ、大丈夫だよペティ」
「ユラリの臭い、好き」
突然烏兎が俺にキスをしてきた。
そして恐る恐る舌を入れてきて俺の舌に絡めて来る。
「っん……んんっ……んちゅっ」
あ、烏兎にキスされてる。
最近の幻覚は積極的だな。
っていうか、これ、幻覚じゃない!?
俺は烏兎の肩を掴み引き離す。
「ちょっとまてい烏兎っ!」
「うと? イナンナだよ?」
「え? イナンナだって?」
「申し訳ありませんご主人様っ! イナンナちゃんが走り出したと思ったら男湯に入ってきちゃって」
「男湯に? イナンナが、入ってきて? という事は、お前イナンナなのか?」
「うん」
「烏兎じゃなく?」
「イナンナはイナンナしかいない」
「そう、か……」
まだわからん。
イナンナは烏兎そっくり、というか本人に見えるんだけど。
あ〜、考え出したら目眩がする。
これ、本当にのぼせ、た、な。
「ご、ご主人様!? 大丈夫ですか!?」
俺が目を覚ましたのは約一時間後だった。
大きめの手ぬぐいだけを身につけたペティに脱衣所で看病されていた俺は、彼女に膝枕された状態で目を覚ました。
これ最高だわ。
たまにのぼせて倒れるのもいいかもな、なんてバカな事を考える余裕があるくらいには回復したようだ。
名残惜しいが俺はペティの膝枕に別れを告げる。
今はイナンナの事だ。
「ペティまた助けられたな。ありがとう」
「いえ、こうしてご主人様のお役に立てて私もよかったです」
なんて優しい笑顔だろう。
すぐ隣にイナンナがいなければ襲撃ならぬラブ撃しているところだ。
俺は改めてイナンナを見る。
烏兎にそっくりだ、というか烏兎が少し幼い頃バージョンのような感じ。
「お前、イナンナだよな?」
「うん」
「烏兎じゃないよな?」
「じゃない」
「俺と一緒に高校通った記憶は?」
「こうこう? ……ない」
やっぱりか。
こいつは烏兎じゃない。
ということは完全にそっくりなだけなのか?
まあ、地球でも自分とそっくりな人間が世の中に三人はいるって聞いた事あるし、ありえなくもないか。
まさか、ぼさぼさの髪を整えて顔の汚れを落としたら烏兎にそっくりだったなんて思わないよな。
それは納得した。
それはいいとして、なんでキスしてきた?
「なあ、イナンナ。さっきはどうして俺にキスしたんだ?」
「幸せになるため」
「幸せ?」
「イナンナだけの、幸せ」
「あわわっ、あの、ご主人様、私が余計な事をイナンナちゃんに言ったせいでなんです。叱るなら私を叱って下さい!」
イナンナが首を横に振る。
「ペティは悪くない」
イナンナは俺の胸に抱きついてきた。
「ユラリの臭い、好き。イナンナだけの幸せ、見つけた」
どういう事かよくわからないけど、イナンナは自分の幸せを見つけたらしい。
まだ少し混乱していたけど、俺はそれを聞いて心底良かったと思った。
だってさ、今まで感情を一度も表に出していなかったイナンナが、俺の胸の中で幸せそうに微笑んでいるんだから。
でも、クンクンされるるのは、ちょっとはずかしいんですけど。




