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屍人




「ケ、ケンコウ殿? 他の者達はどうしたのだ!?」


「殺された! 拙者以外皆殺された!」


「なんですとっ! ケンコウ殿に怪我は!?」


「あ、ああ、大丈夫だ。他の者を囮にして逃げてきたからな」


「武士たる者が何たる事をっ!」


「し、仕方が無かった! 拙者は悪くない! 脚が遅いのが悪いのだっ!! 拙者は決して悪く……な、い……?」


 見るとケンコウの腹から五本の刀が突き出ていた。

 背後から複数人に刺されている。


「な、こ、これ、は、かはっ!」


 ケンコウは口から血を吐き出し絶命した。

 ナオヨシは驚いて尻餅を着く。


「ひぃっ! ケ、ケンコウ殿!?」


 ケンコウを殺したのは先ほどここに集まっていた者達だった。


「お主達っ! どうしてケンコウ殿をっ!?」


 死んだケンコウの体から刀を抜き、ゆっくりとこちらに近づいて来る。

 どういうことだ? 仲間割れでもしたのか?

 俺は冷静に状況を観察する。


「囲まれてるな……」


 俺は周囲に意識を巡らせる。

 百、二百、三百ちょいくらいか。

 ナオヨシの身の上話を聞いていたときから気付いていはいた。

 だが魔物の気配じゃないし殺気も無いから放っておいたんだが。

 すごい数になったな。


 そいつらが樹々の間からうなり声を上げてゆっくりと歩いてきた。

 ナオヨシはそいつらを見て震え上がる。


屍人しびとだっ!!」


 その者達は既に死んだ人間達、いわゆるゾンビというやつだった。


「この世界ってそういうのもいるのか」


「な、何を落ち着いているのだ! は、早くここから逃げねば死ぬぞ!」


 あれ、ナオヨシのおっちゃん死にたいんじゃなかったの?

 刀を抜いて生き残る気まんまんじゃん?


 屍人達は唸りながらゆっくりと俺たちに近づいてきている。

 ナオヨシが屍人化した元仲間達に斬り掛かる。


「す、すまぬお主達! てやぁぁぁぁぁ!!」


 屍人はナオヨシの斬撃を躱しナオヨシにに反撃してきた。

 ナオヨシはその一撃をなんとか刀で受ける。

 もう一体の屍人がナオヨシに刀を振る。

 ナオヨシはその場から飛び退いて距離をとった。


 なんか俺の想像していたゾンビより動きがいいな。

 ただ呻きながら歩いて来るだけじゃないようだ。

 まるで生前の能力をそのまま受け継いでるとか?


「なあ、ナオヨシのおっちゃんよ。もしかして、この森にいた魔物って屍人なのか?」


「ああ、そうだ。拙者達は仲間と協力して三十体ほど倒したが、まだこんなにもいたのだな。抜かったわ!」


「弱点とか知ってる?」


「頭と胴体を切り離すか、身体を火術で燃やせば動かなくなるはずだ」


 なんだ、いつもやっているやつか。

 俺は【縮地】と手刀で片っ端から屍人の頭を飛ばす。

 十、二十、三十、四十、五十。

 森の中で屍人の首が切断され宙を舞う。

 

 まだまだ周囲の森から屍人が集まってくる。

 うわ、数が多すぎる。

 面倒だな。

 手っ取り早く仕留めるか。


「【影鞭】!!」


 俺は両手の先端から五メートル程の黒くて細長い布を生み出す。

 新体操の競技で使うテープのようなものだ。

 俺は【縮地】で屍人の群れの中を高速で駆け抜けながら【影鞭】で屍人の身体を切り刻む

 俺が走り去った後には全身がバラバラにされた屍人の身体が散らばる。

 百、百五十、二百、二百五十、三百っと!

 十分程で三百以上の屍人をバラバラにして倒した。

 もう周囲には気配はない。


 いや、一体いたな。


 その最後の一体は森の奥に逃げようとしてる。

 逃がすかよ!

 俺は【影鞭】を消し、最後の一体の元へ【縮地】を使って疾走する。

 そいつは黒い外套で全身を覆っており顔は見えない。

 数秒で追いつき手刀を振るった。


 手応えはあった。


 そいつの上半身と下半身は二つに切断され、上半身は斬り飛ばされ木の幹にぶつかり、そこに背中を被けるようにして止まった。

 はらりと頭を覆っていたフードが外れた。

 俺はそいつの首を斬ろうと手刀で突こうとして寸前で手を止めた。


「あ、やっちまった!?」


 その上半身はペティと年頃が同じくらいの女の子だった。

 しばらく洗ってないのかぼさぼさ髪で、顔も泥でかなり汚れているが屍人にはなかった血色があった。

 彼女の切断された腹からは、大量に出血していて地面が赤黒くなっている。


 屍人じゃなくて人だった!?


 間違いとはいえ一般人を殺したというのは、さすがにまずい。

 ここは逃げの一択だな。

 と考えて踵を返そうとしたとき。


「待って」


「えっ!? い、生きてる!?」


「死んでる」


 どっちやねんっ!!

 なんだこいつ意味分らん。

 生きてんのか死んでるのかどっちなんだよ!


 会話ができるということは、すくなくとも今はまだ死んではいない。

 この娘の赤い瞳にも生気を感じる。

 普通は胴体を両断されたら即死なんだけど、どうなってるんだ?

 人じゃないのか?

 アウレナ先生の出番ですよ!


=====

 ◆イスカンシア・ナザリンディド・ンティピアット・ナーヴァタラマライテル

 種族:神族  性別:女  年齢:年齢観念無し  職業:なし

 LV:80  HP:1450  MP:3260  SP:4550

 物理攻撃力:1350  物理防御力:1200  敏捷力:1170  

 術効力:2750  術抵抗力:2050  幸運:650

 アクティブスキル:屍人招き5、屍人使役5、骸骨騎士召喚6

 パッシブスキル:不死5、HP自動回復8、暗視8、念話8、痛覚無効、睡眠不要、食事不要、全状態異常無効

 称号:死神の女王、死者を統べる者、死を振りまく者、捨てられし者、妖精の森の主、無精者

=====


 天使の次は女神キター!! それに何この長い名前は!?

 長過ぎて噛みそうになった。


 年齢観念無しとか意味不明な存在だな。

 神だから? だろうな。

 おそらく概念的な存在なんだよ。

 俺も自分で言ってて意味分んないけど。


 レベルが高いから能力値も高いな。

 HPが低くなっているのは俺が下半身を切断したからだろう。


 さっきの屍人はこいつが使役してたんだな。

 というか不死って……だから下半身斬っても平気なのか。

 睡眠不要や食事不要もあるという事は本当に人じゃないんだな。


「お前、何者なんだ?」


「イナンナ」


「イナンナ? 何だそれ」


「イナンナはイナンナの名前らしい。そういうふうに言ったほうがいいって言われた」


「名前?」


 そうか、元の名前が長いから、その頭文字だけとってイナンナか。

 アウレナみたいなもんだな。


「前は死神というのをしてた」


「え、どうしてその死神さんがこんな森の中にいんの?」


「……世界に……捨てられた」


 せ、世界ときたか。

 かなり大変な過去を背負っていらっしゃるようで。


「どうして俺たちを襲ってきたんだ?」


「お前は襲っていない。あいつらが先に仕掛けてきたから、あいつらを襲った」


「ああ、そういうことか」


 そりゃあ襲われたら俺でも反撃するよな。


「俺に攻撃しないと約束できるなら、お前の脚を持ってきてやるぞ」


「約束する」


 俺はイナンナの切り離された下半身を持ち上げ、上半身とくっつけた。

 すると傷口が見る見るうちに修復されていく。

 体の修復速度がものすごく速いのは【HP自動回復】の効果か。


 彼女の身体はすぐに元通りになり、彼女はゆっくりと立ち上がる。


「お前はイナンナとの約束を守った。一度だけ願いを叶えてあげる」




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