研究所への誘い
講義が終わり、談笑している俺達に親父が近づいてきた。
「やあやあ若人諸君。今日の私の授業は楽しんでもらえたかな?」
皐月がお淑やかに礼をして答えた。
実家が弓道場なだけあって立ち振る舞いが綺麗なんだよな。
「はい。教授の授業はいつも新しい発見があって、楽しく学ばせて頂いています」
「そうかそうか、それは上々。諸君らは今週の週末は暇かね?」
千鳥は虚空を見つめ視界の中に映し出されたアウレナを操作し、自分の予定を確認しているようだ。
俺もアウレナを使って視界の中にカレンダーを表示し予定を確認っと。
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今月の予定:登録なし
来月の予定:登録なし
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確認するまでもなく俺は暇人だった。
いいや、あえて暇にしているんだ。
俺は緩い人生を謳歌したいからな!
本当だぞ!
「大成おじさん、私の予定は空いていますけど何かあるんですか?」
「親父。なんか企んでるだろ」
「由良里。企んでるとか人聞きの悪いことを言うもんじゃないよ。週末に私の研究室で実験が行われるんだよ、それに君たちを招待しようと思ってね」
駿が親父に質問した。
「月海原教授の研究所といえば、国連傘下の世界的にも有名な研究機関ですよね? 俺たちみたいな一般の学生が見学できるのですか?」
「ああ、それは問題ない。私の権限でなんとでもなるからね」
問題あるだろ。
「親父、職権乱用は自由だが、危ない実験じゃないだろうな?」
「危ない事はしないよ。私はただ、将来有望な学生達と世界の神秘を共有したいと思っただけだよ」
「世界の神秘、ね……」
これがいつもの親父だ。
親父はナノマシンなんて科学の最先端技術を研究しているっていうのに、時々夢見る子供のようなことを言うのだ。
皐月が瞳を輝かせた。
「えっ!? 教授の研究を見学できるんなんて素敵!」
朧はシャドウボクシングをしながら答えた。
「俺も週末は筋肉の休息日だから予定はないぜ」
烏兎は再び俺に抱きつく。
「烏兎は由良里が行くなら行く」
「よし決まりだな。週末に皆で来なさい。実験の開始時刻は十三時を予定している。警備員には伝えておくから、その時間に間に合うようにね。じゃあまた会おう若人諸君」
というか俺は行くとは一言も言ってないのだが。
「ちょ、親父!?」
親父は俺の意見は聞かずに、他の学生達と話しをしながら講義室から出て行った。
まあ、人の話しを聞かないのは毎度の事だけどな。
こうして俺たち六人は、それぞれの人生を大きく狂わせる人生の転換点と言うべき場所へ行くことになった。




