禁断の
「お兄さんって……」
ゴクリ。
「異者だっていう噂があるんですけど、実際はどうなんですか?」
そっちか! バレてるかと思ってドキドキしたよ。
この様子だと俺と腐れ大名との関係は知らなそうだな。
ふぅ、面倒なことにはならずに済みそうだ。
「あ、ちなみにお兄さんが切り裂き大名の屋敷を襲撃したのはバレてますよ」
ば〜れ〜て〜たぁぁぁぁぁ!!
「じ、じゃあ町で俺に声をかけた時から知ってたのか!?」
「ええ、そうです。でも大丈夫ですよ。お兄さんが犯人だなんて公表するつもりはありませんから」
「ど、どうしてだ? そうすれば瓦版の売り上げもいいだろうに」
「ぼく達瓦版屋にも良心というものがあるんです」
「良心?」
「はい、良心というのは国の法律とは関係なく、心の奥底にある善悪を判断する基準と言えばいいでしょうか」
「ああ、何となくだが理解できる」
「切り裂き大名は今までその存在は知られていながら、だれも裁く事ができなかったんです。それをお兄さんがバッサリとやっつけた。多くの庶民は喜んだはずです。でも、お兄さんのやったことは言ってみれば犯罪。もし捕まれば市中引き回しの上、獄門晒し首でしょう」
ですよね〜。
「でも多くの人々はお兄さんが処刑されるのは望まないでしょう。だから、ぼくも密告したりはしないんです」
「そういう事か、正直助かるよ」
「だからというわけではないんですが」
「異者である俺についての記事を書かせろって言うんだろ?」
「正解ですっ!」
「俺でよければ何でも聞いてくれ」
「やった! その件に関しては日を改めて再度伺いますね」
「ああ、わかったよ」
「そうだ、お兄さん文章は上手いし、察しがいいから瓦版屋に向いてますよ! どうです? ぼくと一緒に東江の都を真実の嵐でかき混ぜてみませんか!?」
真実の嵐ってなんだ?
「魅力的なお誘いだけど総支配人の仕事が忙しくてな」
「そうですか、残念っ!」
そこにセルフィナがやってきた。
彼女には【念話】でマコトと顔を合わせてもいいと伝えたんだ。
既にいろいろ知られているようだし、隠れていても意味ないからな。
「はじめまして瓦版屋さん。わたくしはセルフィナともうします。この旅館で副支配人を勤めさせて頂いています」
「わわっ! 本当に綺麗な人ですねっ! ぼ、ぼくはマコトって言います。お会いできて光栄です!」
マコトは興奮しながらセルフィナと握手をしている。
俺には握手を求めなかったのに……。
セルフィナは綺麗だし有名人だから仕方が無いか。
「ひらめきましたっ! 超美人副支配人と冴えない総支配人の淫らな禁断の打ち合わせ! 耐えきれなかった二人は仕事よりも愛を育む事に全力を傾けた!」
冴えないって酷くないか?
事実だけに酷くないか!?
「え、あ、あのう」
「あ、すみません。ぼく、興奮しちゃうとついついひらめいちゃう癖がありまして、ほんとすみません」
「い、いえ、お気になさらず。それより総支配人、提案があります」
「来たコレ! またひらめいちゃった! 超美人副支配人が鬼畜総支配人に淫欲に乱れた禁断の提案をする! どうこれ?」
禁断ばっかだな。
今度は鬼畜総支配人とかってほんとに酷くない?
さすがの俺でも泣いちゃうよ?
こういう変人系の戯言は無視だ無視。
「提案って?」
「はい、マコトさんにこの旅館の宣伝をしてもらうというのはいかがでしょう」
「宣伝か……」
「この日乃光旅館の知名度は、高いにも関わらずお客様がいらっしゃいません」
「そう言われてみれば。大きな旅館っていうのは殆どの人が知っているようだったな」
「はい。ですから、この旅館のすばらしさを多くの人に知ってもらい、お客様に来て頂くために旅館の宣伝活動をマコトさんにお願いするのです」
ああ、なるほどな。
知名度はあるが実際どういう旅館なのかは知らない人が多い。
だから、ここがどんな旅館でどういうサービスが受けられるのかを周知させるということか。
うん、さすが副支配人のセルフィナだ。
大切な点に気付かされたよ。
「マコト、そういう事ってできるか?」
「はい、できると想いますよ。ぼくたちは商人組合からの依頼で、店の広告をバラまいたりしますからね。あ、でも、瓦版屋の元締めに相談しないとだめかな」
「そうか、じゃあ明日、俺も旅館代表で一緒に頼みにいくよ」
「わかりました! では、明日の午前九時に、ぼくが瓦版を売っていた場所で待ち合わせというのはどうです?」
「了解した」
俺たちは旅館の宣伝活動のために動き出したのだった。




