俺は渋々知行を受ける
地上生活十九日目。
俺はセルフィナに副支配人の仕事を教えつつ、ここ数日の疲れを癒すために一週間ほどのんびりとした日々を過ごした。
その間に俺とセルフィナとペティの三人は大人の関係になった。
つまり性的な意味で結ばれたということ。
さ、三人でハッスルしたという意味ではないぞ。
さすがにそれはにはまだ抵抗がある。
一人づつと関係を持ったということだ。
コホンッ!
ということで本当の意味で夫婦になった。
契約自体はパートナー契約という仕事上の契約に過ぎないが、セルフィナとペティがすでに俺を夫として意識していたので、俺も覚悟を決めて彼女達を妻として愛すると決めたんだ。
俺としても彼女達を一生面倒見て行く覚悟は守護者契約の時に決めていたし、俺にはもったいないくらいの二人だ。
俺のほうが耐えられず求婚するのも時間の問題だったろう。
ていうかチョロ男の俺が可愛い彼女達の側にいて本能君を抑えられるわけがない。
それと、口入屋で依頼しておいた旅館の従業員応募を見て、この一週間の間に十数人が面接に来た。
旅館で役立ちそうなスキルを持っている人は雇い、持っていない人も指導すればいいだろうということで雇った。
内容がどうあれ能力を隠蔽している人は丁重にお断りした。
能力を隠している時点で妖しいし、大抵そういう人には盗賊だとか逃亡者などの称号があったからだ。
従業員はまだまだ必要なのでこれからも順次採用していこうと思っている。
== 12時31分 ==
俺は総支配人室で昼食を食べていると、玄関先に空船が停泊しオウカの従者が俺を尋ねてやってきた。
オウカが俺に話があるという。
おそらくセルフィナを助けに大名の屋敷を襲撃したときの、詳しい事情を聞きたいのだろう。
電話みたいな印籠があるんだから直接声をかけてくれればいいのに。
いや、だめか。
五回という回数制限もあるし傍受される可能性があるからな。
実は俺も持っているが【念話傍受】というスキルがあるんだ。
恐らくこの印籠は【念話】のスキルを付加したものだろう。
だから長距離の場合は会話を誰かに聞かれる危険がある。
この通信印籠は緊急時以外は使わないほうがいいかもしれない。
東江の都にはスキルを道具に宿す能力を持つ職人達がいるらしい。
しかし、そのスキルを付加された道具は貴重で庶民には手が届かない金額のものばかりらしい。
あの姫ちゃん、俺を呼びつけるということは大切なお話だということだ。
俺、怒られるのか?
普通に考えて俺がやった事は犯罪だもんな。
後悔はしてないけど。
俺はセルフィナとペティを旅館に残し、オウカの従者と空船に乗って城へ向かった。
== 14時12分 ==
俺はすぐにオウカがいる座敷に通され彼女の前に胡座で座る。
お叱りを受けるのを覚悟したがオウカは開口一番こう言ったんだ。
「でかしたっ! ユラリよお手柄じゃ!!」
「おっと、びっくりしたっ」
「何をびくついとるんじゃ、数十人を一瞬にして葬った男じゃろうに。もっとしゃんとせんか」
「何の事だ?」
「東町の腐れ大名の件じゃ」
「はて?」
「何を白々しい。お主の仕業なのじゃろ?」
「どうだかな。証拠は無いだろ」
「あの変態大名の体の中には極少サイズの蟻が湧いていたらしい。そんな方法で殺せるのは蟻の巣とやらで生活していたお主以外にいないじゃろう? それに奴の屋敷からお主の容姿そっくりの男が、美しい女を連れて出たという目撃証言もあったから間違いないの」
「見られてたか」
「とぼけても無駄じゃ。妾の情報網を甘く見るでないぞ」
「いや、だってさ。もしかしたら叱られるんじゃないかと」
「本来ならば拷問の後死刑じゃな!」
「そ、そうだろうな」
「じゃが、お主が殺した大名は権力と財力を悪用し非道の限りを尽くしておったのじゃ。妾も内心ぶち殺したいと思っておったのじゃが手が出せなくてのう。ところが奴は先日死んだ」
「そうか。あの太っちょ死んだか。ちょっとは苦しんで死んだか?」
「それはもう壮絶な死じゃったと聞いておる。なんでも徐々に内蔵が機能しなくなり、激痛にもがき苦しみ、最後は気が狂って自害したそうじゃ。その後今までの悪事が露呈して改易することになった。つまりお家お取り潰しとなることが決まった」
「へぇ、かわいそうになー」
「棒読みじゃな。まあよいわ。それと手配人や手配魔獣、並びに山賊団の壊滅についても報告が上がってきておる。それらもお主じゃな? よくやったぞ!」
「それは成り行きで狩っただけだよ」
「とはいえ東江の都の治安回復に大きく貢献したのは間違いない。さらに、航路を塞いでおった海竜の討伐もお主だと聞いたが、間違いは無いな?」
「ああ。俺だ」
「この二週間程でここまで手柄を上げた者など前代未聞じゃ。そこで妾はお主に知行を授けようとおもうておる」
「知行って何?」
「まあ異者のお主には馴染みがないかもしれぬが、簡単に言うと手柄の報償として土地と武士の身分を与えるという事じゃな」
「あ、それ、いらないわ」
「そうであろう、そうであろう。誰もが欲しがる武士の身分じゃ。嬉しいであろう。……は? 今何と申した?」
「だから、武士の身分なんていらないよ。いろいろ面倒だし」
「んじゃとっ!? いらんじゃと!! 土地と身分じゃぞ!? そうそう知行なんぞされるものではないのじゃぞ!」
「そんなこといわれてもな。いらんもんはいらんし」
「あれだけの功績を上げたのに知行を受けないというのか」
「んー、じゃあさ、旅館の土地と建物をくれ。そこだけでいいからさ」
「もともと取り壊すはずじゃった旅館じゃからできなくはないが、それだけの報償ではちと功績に見合わぬのう。目立つ功績を上げた者に正当な報償を与えぬのは家の名を貶める行為なのじゃ。せめて旅館周辺の領地を受けるというのはどうじゃろうか?」
「でもさ、武士だのなんだのと面倒な事には関わりたくないんだけど?」
「それならば妾の方からお主の領地を代理で管理する代官を派遣してやる。それでどうじゃ?」
「それなら仕方が無いか。俺には領地なんて必要ないけどもらっておくよ」
「うむ。心置きなく旅館の再建に尽力するがよいぞ」
それから知行の手続きを終え、俺は旅館に帰る事にした。
空船で送ろうかとオウカに勧められたが断った。
まだ都の全てを知っているわけではないため、歩きながら人々の暮らしぶりを知ろうと思ったんだ。
俺は徒歩で城をでた。




