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あの娘を頼んだよ




== 15時49分 ==


 俺は西町の美術商に来ていた。

 番頭に聞いたら査定はすでに終わっているとのことだった。

 番頭が内訳を出してくれた。


=====

 ◆絵画8点:金貨223枚

 ◆置物13点:金貨320枚

 ◆装飾品:7点:金貨1144枚

 ◆壷3点:金貨65枚

 ◆絵皿6点:金貨149枚

 ◆小物25点:金貨447枚

 ◆掛け軸11点:金貨515枚

 合計73点:金貨2863枚

=====

 所持金

 金貨:4796枚

 大銀貨:35枚

 大銅貨:43枚

=====


 こんなへったくそな絵画なんて売れるのかよ、と思っていた自分が愚かしい。

 冗談のレベル上げを考える前に、自分の美的センスを上げるべきだった。


 それにしても所持金がすごい額になったな。

 これでセルフィナを身請けすることができるぞ!

 俺は番頭からスフィアカードに入金してもらいスキップはしなかったが、そのくらいの気持ちで南町の遊郭に入り『一葉』へ向かった。


== 17時19分 ==


 夕方になり空が茜色になっていた。

 その時間帯でも遊郭の赤く塗られた張見世はまだ赤く見える。

 ん? 今日は『一葉』の店先に見物人はいないんだな。


 俺は『一葉』に入ると清算場所にいた女に所持金が記載されているカードを見せた。


「この金でセルフィナを身請けしたい。手続きしてくれ」


 女は俺のスフィアカードを確認して驚いていたが、舌打ちをして少し悲しげな顔をした。

 なんだ? 何が不満なんだ?


「来るのが少し遅かったね」


「どういう意味だ?」


「そのままの意味だよ。つい二時間くらい前かね、セルフィナは偉い大名様に身請けされてここを出てったよ」


「う、嘘だろ……」


「女一人売っぱらえば大金が手に入るっていうのに、嘘ついてどうすんのさ」


「誰だ? 誰が身請けして行った!?」


「悪いけどさ、こっちも商売なんでね、客の名は言えないんだよ。諦めな」


 まじかよ。

 あと少し早ければ間に合っていたのに!

 いや、済んだことは考えても仕方が無い。

 考えろ俺! 頭をフル回転させて考えろ俺!!

 どうすればセルフィナを取り戻せる?


「あたしゃできればあんたに買って欲しいと思ってたんだけどね。寄りに寄ってあんな奴に身請けされるなんてね」


 この女を拷問して身請けした奴の居場所を突き止めるか?

 いや、そんな事をしたら俺が犯罪者として指名手配されることになる。

 そうなれば旅館の総支配人なんてやっていられない。


「セルフィナを買ったのは、金はあるが最悪のクズ野郎でね。この業界じゃ有名人さ。なんでもそいつは定期的に綺麗な女を身請けするんだが、女は一週間もしないうちに薬漬けにされたあげく、全身を切り刻まれた後捨てられるんだとさ。あたしも噂で聞いただけなんだけどね」


 なんだそれ最悪な奴じゃないか。


「それを知っているなら断ることだってできたんじゃないのか!?」


「あたしらには金も権力もある大名様に逆らえる力なんてないよ。身請けを断ろうもんなら、あたしらを無礼打ちにして目当ての女だけ連れてかれるのさ。……前にそういう事件があったんだ」


 俺はあいつに身請けすると誓ったのに。

 護ると誓ったのに! なんてざまだ。

 でも待てよ。

 この女、大名の噂をどうして俺に教えてくれるんだ?


「どうして、俺にそんな事を?」


 女は俺の質問を無視し通りかかった禿かむろを呼びつけた。


「おい! ちょっとこっち来な!」


 女は懐から煙管きせるを取り出して禿かむろの女の子に見せた。


「さっきここに東町に屋敷がある大名様がセルフィナを身請けしに来ただろ? そのお方が家紋の刻まれた煙管を忘れていったんだ。悪いが東町に行って届けてきてくれないかい? 屋敷の場所は家紋を通行人に見せて道を聞けばたどり着けるからさ」


 女は布の袋に煙管を入れて女の子に渡そうとする。

 彼女がわざわざ俺に聞こえるようにこの話をした理由は一つだ。


「なあ、その役目。俺に行かせてくれないか?」


「本気なのかい?」


 おんなの表情が険しくなる。


「ああ、本気だ」


「死ぬかもしれないよ」


「忘れ物を届けるだけで死ぬ奴はいないだろ?」


「覚悟はできてるって事だね」


「俺は何でも命がけでやる。それがお使いでもな」


「そうかい。わかったよ」


 おんなは袋を投げてよこした。


「恩に着る」


「とっとと行きな!」


 女は俺から顔を背けたが、俺は彼女が優しい顔になったのを見逃さなかった。


「あの娘を頼んだよ」


 俺は走る。

 東町に向けて全力で走る。

 走りながら袋の中から煙管きせるを取り出した。

 そして家紋の主の屋敷を道行く人々に聞き、目的地の大きな武家屋敷に辿り着いた。




== 18時57分 ==


 セルフィナが遊郭の『一葉』から連れて行かれて三時間半。

 彼女がこの屋敷に入ってからすでに約一時間以上経っている。

 時間が一分過ぎるたびにセルフィナに危害が加わる可能性が高まっていく。

 悠長に構えていられない。


 正門から入ろうとしても門衛に止められるだろう。

 正規の手続きをとって中に入る余裕はあるはずも無い。

 仕方が無い。

 頭痛が酷くなるから今まで使わなかったけど、術を使うしか無いな。




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