海を渡る者
地上生活十日目。
==12時49分==
俺は今、ウミスケにもらった干し魚を昼食としてカミカミしながら、小型の漁船に乗って沖に向かって進んでいる。
ウミスケの話によると俺が心配していた海上の移動は、スキルを使えば解決できるらしい。
そんなスキルが本当にあるんだろうかと、ウミスケのステータスを観覧。
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◆ウミスケ・イソベ
種族:人族 性別:男 年齢:48 職業:漁師
LV:30 HP:1120 MP:530 SP:1090
物理攻撃力:320 物理防御力:410 敏捷力:420
術効力:210 術抵抗力:220 幸運:110
アクティブスキル:海歩5、遠投5、銛の急所攻撃5、長時間無呼吸法5
パッシブスキル:潮読み7、水泳7、魚類知識8、集中5、耐水圧6、平衡感覚5、魚群感知6、操船7、銛術5
称号:海の男、海竜に挑む者、魔獣魚を獲る者、焼き魚には醤油派
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うわっ!
漁師なのになかなか強いな。
それにスキルのレベルが軒並み高いぞ。
三十年も漁師一筋って感じのスキル内容だ。
【海歩】ってよく分からないからスキルの説明を見よう。
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◆海歩
穏やかな水の上を歩ける水歩の上位スキル。荒れ狂う海の上でも歩行可能。スキルレベルが五以上になると自分以外の対象に使用可能。
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スキルって便利だな。
ここまで来る途中、ウミスケの身の上話を聞いた。
数年に一度現れる巨大海竜は、漁師の間で古くから海の守り神として考えられてきた。
しかし、大漁期に一ヶ月も漁ができなくなるのは漁師にしてみれば死活問題。
海竜が出た年は漁業関係者は生活に困り漁師を辞める者も多く、ウミスケは守り神がどうして自分たちを苦しめるのかに疑問をもった。
大人の漁師達は守り神なんだから歯向かうなと止めたが、ウミスケを含めた血気盛んな若者達は海竜を討伐しに海に出たらしい。
結果はウミスケを残して全滅。
それ以来ウミスケは海竜が表れても大人しくしていたが、人知れず漁の腕を磨き操船の技術を高め、海竜討伐を目標に日々研鑽を積み重ねてきた。
三十年もの間だ。
俺は海竜がどうとか、仲間の無念とかには興味はないが、ウミスケが三十年という年数を一つの目的の為に生きてきたという事に共感した。
俺もいつか地上で人間らしい暮らしができることを夢見て、三十年もの間蟻にこき使われてきたからな。
わかる、わかるぞその気持ちが!!
「あ? どうしたあんちゃん涙目になって。潮風が目に染みたか?」
「あ、ああ。まあな」
「そろそろ海竜に襲われたっていう海域だ。あんちゃん! 準備はいいか!!」
「ああ、いつでも来い!」
「いい面構えじゃねーか! 俺も昔年の恨みを晴らせるかもしれねえから、年甲斐も無く興奮してるぜい!」
俺は漁船の先端に立ち海竜の気配を探っていると、前方の海が盛り上がり巨大な蛇のような竜が現れた。
でかいっ!
その余波で海が大きくうねる。
「大浪が向かってくるぞおっちゃん!」
「ああっ! まかせとけっ!!」
ウミスケは慣れた手つきで舵を操り、船がサーフィンをする要領で波のカーテンの下を高速で進む。
まさか船でサーフィンをするとは予想外だった。
操船レベルが七だからできるのか?
おお! 大波を回避しちゃったよ。
少し波を被ったけど船にダメージは無いようだ。
アウレナ先生お願いします。
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◆海竜
種族:魔物 性別:雌 年齢:158 職業:なし
LV:58 HP:3120 MP:1530 SP:2390
物理攻撃力:1180 物理防御力:1370 敏捷力:510
術効力:870 術抵抗力:1250 幸運:210
アクティブスキル:水弾7、水棘7、噛み付き8、尻尾攻撃6
パッシブスキル:潜水8、耐水圧8、魚群感知7、音波知覚7、悪食7、水術耐性7、水術7
弱点:火術
称号:海の守り神、大喰らい、航路を塞ぐ魔物、老竜
詳細:船乗り達には海の守り神と呼ばれ恐れられている獰猛な魔物。主に海中を生息域とし魚類や魔獣魚を食べる。水を操る水術を得意とし成長すればするほど獰猛さが増していく。
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めっちゃ強いぞ。
手配書にはレベル四十以上って書いてたけど、これだとレベル六十あっても辛いんじゃないか?
「よし! あんちゃんの出番だっ! 後は頼むぜ!」
ウミスケが俺に期待のこもる目を向けている。
今更大変そうなのでやめますとは言えないか。
トホホ。
そうかこういう時にトホホは使うのか。
覚えておこう。
ウミスケはスキルを使った。
「海を歩み海を駆け巡れ! 【海歩】!!」
ウミスケが俺に向かってスキルを使った。
俺の体が淡く光る。
スキルが成功したようだ。
俺は恐る恐る海に足をつけると、海の上に硬さを感じた。
すごく不思議な感覚だ。
まだ海が少しうねっているのでバランスをとるのが少し難しいが、なんとかなるだろう。
「いってくるよ」
俺は巨大な海竜に向かって歩き出した。




