表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/184

強敵が現れる




 地上生活九日目。


== 2時25分 ==


 盗賊団を壊滅させてから旅館に帰った時には、すでに日をまたいでいた。

 俺は長距離を走ってきたので疲労困憊のふらふら状態だ。


 旅館に入るとペティが駆け寄ってきた。

 俺のことを心配していたらしく寝ないで待っていてくれたようだ。

 疲れて家に帰ったとき、誰かが待っていてくれるのって、こんなにも嬉しいものなんだな。


 元副支配人の奴隷だったペティ達はこの旅館の従業員寮で住み込みで働いている。

 だからペティは俺が寮の部屋に帰っていないのに気付いたんだな。

 それで遅くまで待っていてくれたのか。


 ほんに優しいええ娘やな〜。

 ぎゅ〜ってしたい。

 俺はペティの姿を見て安心し、倒れ込むようにペティに抱きついた。


「え、え!? あの、ご、ご主人様っ!?」


 奴隷の紋様が無くなったペティの首筋から、香水なのか石けんの香りなのかは分らないが安らぐ花の香りがする。

 あ〜ダメだ、安心したら急に眠気が……。

 おれはそのまま意識を失うように眠ってしまった。




 俺が次に目を覚ましたとき。

 自分の部屋の布団の中だった。

 そしてその布団の中には薄着のペティが俺に抱きついていた。


 ど、どうしてこうなった?


 どうもこうもない、俺はただ眠くて意識を失うように倒れただけなはず。

 とくに過ちは犯していないはず。


 俺に密着して寄り添うように寝ている薄手の着物姿のペティ。

 仲居の着物と比べて今の装いは着心地が楽そうだ。

 恐らく部屋着なんだろう。

 布団の横には仲居の着物が綺麗に畳んである。


 俺はペティの無防備な姿と可愛い寝顔に胸が高鳴り、彼女を抱きしめて無茶苦茶にしてやりたい気持ちが湧き上がる。


 このまま襲っちゃう?


 いやいやいやいや、それはさすがにまずいだろ。

 まだ知り合って数日の娘を本人の同意無しにはまずいだろう。

 あ、でも身も心も俺に捧げたんだっけ。

 ならこのまま襲ってもいっか!


 って、いいわけあるかっ!

 さあ朝だ! 俺の理性君よ早く目覚めてくれっ!


「ふぁ? ご主人様……? おはようございましゅ……」


 ペティが目を擦りながらの愛らしい『ございましゅ』攻撃を放ち、俺の理性君にクリティカルヒット!

 HPの半分がもってかれた。


 き、強敵だ、間違いなく強敵だ。

 耐えろ、耐えるんだ俺!


 ペティはすごく可愛い娘だけど、この旅館の大事な従業員の一人なんだ。

 総支配人の俺が従業員に手を出したとあっては旅館の評判にも傷がつく。

 ここは冷静になるんだ。

 本能君に負けたら俺の夢の実現が遠のくんだぞ!


 ゆっくりと深呼吸をしよう。

 

 よしよし、ようやく俺の理性君も目覚めてきてる。

 今度から理性君には早寝早起きを徹底させねば!


「ああ、おはようペティ。俺を部屋まで運んでくれたんだな」


「はい。ご主人様に抱きつかれた時は本当に驚きました。とうとう私も大人の女にされるのかなって……」


 え? それってどういう反応?

 抱かれるのを期待してたのか?

 それとも嫌なのか?

 どっちだ!?


「倒れる程お疲れだったんですね。身体が冷えきっていたので私が暖めてあげようと添い寝をしていたんですけど、ご迷惑でしたか?」


「いいや。暖かくてぐっすり眠れたよ」


「それは良かったです。体調はいかがですか?」


「ペティの添い寝のおかげで問題ない」


 ペティが小さく笑った。


「ん? 何かおかしい?」


「ご主人様でも照れるんですね!」


 ペティの言葉で自分の顔が熱くなっているのに気付いた。

 たぶん俺の顔は赤くなっているんだろう。

 いや、だって、これは仕方が無い。


 目覚めたら薄着の可愛い女の子が隣で寝てるんだよ!?

 ドキドキしないやつは男じゃないよな? なっ!?

 俺はペティから視線をそらし反撃してやった。


「ペティが可愛いからな……」


 ペティも尖った耳の先まで赤くなった。

 これでおあいこだ。


「え、あの、えっと……お、お腹空いてないですか?」


「少し減ってる、かな」


「じゃあカエデさんに何か作ってもらいますねっ! 私が伝えてきます!」


 そう言ってペティは急いで仲居姿に着替えてから逃げるように総支配人室を出て行ったが、何かを言い忘れたのかすぐに戻ってきた。

 どうしたんだろう。


「わ、私はご主人様がお望みでしたら、よ、夜伽のお相手でも何でもしますから! いつでも準備はできていますからっ!」


「えっ!?」


「で、でも、初めてなので、できれば優しくして、欲しい、です……」


 俯きながら話すペティの顔はさっきよりもさらに真っ赤だった。

 守護者契約をした時の『身も心も捧げる』という言葉を文字通りの意味だと受け取ったのかもしれないな。


 あれはそれだけの強い思いが無いとスキルが発動しないから、覚悟を聞いただけなんだけどな。

 実際に俺が守護者の身体を好き勝手にもてあそぶという意味ではないんだけど。


「あ、あの、ペティ?」


「じゃあ調理場に行ってきますね!」


 ペティは恥ずかしさに顔を赤くしながらも今度こそ調理場へ向かう。

 顔を真っ赤にするとか、ほんにペティは愛い奴よのう。

 ほっほっほ!


 というか殿の真似してバカやってる場合じゃないんだった。

 今は何時だ?


== 5時31分 ==


 ふぅ。

 そんなに爆睡していたわけではないようだ。

 朝礼を寝過ごしたらダメな総支配人だからな。


 今日は指名手配人の首を西町奉行所に届けないと。

 実は【食料庫】内の生ものは腐らないから急ぐ必要はないんだけど、セルフィナが俺を信じて待ってるからな。


 俺はそれからすぐに風呂に入り総支配人室に戻ると、ペティがカエデの作った朝食を用意して待っていた。


「こちらでお召し上がりになると思って、ご用意しておきました」


「ありがとう。気が利くな」


「これでも仲居頭ですからね!」


 ペティは輝く笑顔を俺に見せた。

 それから自分の仕事に戻って行った。

 俺の目覚めたばかりの理性君がペティの見せた笑顔攻撃で瀕死になってしまったよ。


 これが【輝く笑顔】レベル八か。

 ものすごい破壊力だった!

 危うく追いかけて強引にキスしたい衝動に駆られた。

 ペティの笑顔には魅了の効果でもあるんじゃないだろうか。


 俺は日本の女子相手にこんな気持ちになったことはないのにな。

 ペティが異世界の女の子だから異世界娘の好感度プラス補正でもあるのか?


 そんなに連続攻撃されたらチョロ男の俺はすぐに落ちるぞ、まったくもう。

 総支配人の好感度を上げる前に、客の好感度を上げてくれ。


 ……今度ペティに甘味でも買ってこようかな。

 甘いもの好きだって称号にあったからな、うん、そうしよう。


 俺は朝食を食べてから朝礼で皆に指示を与え西町奉行所へ向かった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ