一蓮托生
地上生活四日目。
== 8時46分 ==
今日は朝食を食べてから口入屋の素材換金所に大量の素材を持ち込んだ。
受け付けのコウメや他の職員達は、俺が持ち込んだ山のような魔物の素材を見て驚いていた。
仕方が無いだろう、かなりの量だからな。
聞いてみると全ての素材を換金可能ということだ。
それに有機物を大量に収納できる【食料庫】は魔物のスフィア限定のスキルらしく、口入屋の職員達は知らないようだった。
【道具箱】というスキルはあるにはあるが、収納できる量は内部の空間を十倍程度拡大するので限界だという。
清算後の金額はスフィアカードに登録される。
実際に硬貨を持ち歩くと重いからそのほうが便利だ。
全て査定するには数時間かかると言われたので、俺はそれが終わるまでの間、もう一つの討伐依頼を済ませる事にした。
== 11時23分 ==
「えーと、目撃情報はこの辺の田んぼだったな。手配書を確認しておこう」
=====
◆デカベロンの討伐
南町郊外の田んぼを荒らす害獣
第二級脅威魔獣
賞金額:金貨五十五枚
※討伐確認の為に魔獣の水かきを持参必須。
※レベル二十以上の方推奨。
=====
あ、この田んぼを見るとかなり荒らされてるな。
大部分の米が稲穂だけ無くなってる。
見通しは良い場所だが魔物なんていないぞ。
まあ、そうそう簡単に見つかるものでもないか。
その時、俺は揺れを感じた。
「おっ?」
俺の立っていたあぜ道の下から巨大なカエルが這い出してきていたのだ。
俺は急いで飛び退いてその場から離れる。
カエルは地上に這い出ると付近の作物を長い舌で絡めとって食べ始めた。
「おお、でかい茶色のカエルだな。体長二メートルはある」
たぶんこいつがデカベロンだろうが、念のためアウレナ先生に調べてもらおう。
=====
◆デカベロン
種族:魔物 性別:雄 年齢:7才 職業:なし
LV:35 HP:1555 MP:230 SP:1450
物理攻撃力:460 物理防御力:480 敏捷力:340
術効力:140 術抵抗力:310 幸運:50
アクティブスキル:粘液の舌5、押しつぶし5
パッシブスキル:地中移動3、ぬめぬめした体液5、物理耐性5、水術耐性3
弱点:火術
称号:害獣、嫌われ者、菜食主義、米好き
説明:成体になると体長三メートルになる巨大な草食性カエル。体表は粘膜で覆われていて物理攻撃と水術の効果は薄い。普通のカエルと違い跳躍はしないが、触れると吸着する長い舌で攻撃してくる。田畑の作物を大量に食べる為、第二級脅威魔獣に指定されている。
=====
物理と水の効果が薄いのか。
そりゃ討伐に苦労するわけだ。
肉食じゃなく草食なのがせめてもの救いだな。
もし肉食だったら人間も喰われる恐れがあるだろうし。
本当に表面がぬめぬめしていて気持ち悪いな。
あのカエルを倒して証明部位を持って帰らなきゃならんのか。
あの粘液臭そうだし触れたくない。
今すぐ寿命がきて尽きて、あいつ死なないかな。
弱気になるな俺!
セルフィナの最後に見せた笑顔を思い出せ俺!
あの笑顔をもう一度見る為なら、ぬめぬめなんて、ぬめぬめなんてっ!
……やっぱりキモイものはキモイ。
あいつに触れずに倒すにはどうすればいい?
そんなの決まってる。
遠距離からの攻撃だ。
奴は物理耐性を持ってるから生半可な攻撃じゃ効かないだろう
あ、そうだ、この辺に転がってる石ころを投げてみよう。
全力で投げれば少しはダメージを与えられるんじゃないか?
ものは試しだ。
俺は足元に落ちていた拳大の石ころを拾い、野球の投手のように振りかぶって全力で投げた。
パン!!
という風船が割れるような音を出し、巨大なカエルは中心部から肉片を撒き散らして弾けとんだ。
「え……?」
俺が投げた石は近くの森に入り爆発音が聞こえて土煙が上がった。
俺って地下生活でかなり強くなってしまったらしい。
いままで全力で投げたことはなかったから、気付かなかったけどな。
=====
◆アクティブスキル【投擲】を獲得しました。
=====
あらま、スキルをもらっちゃった。
そういえば思い出しけど、スキルを獲得しても始めはレベルがゼロなんだよな。
まあ、特に今は必要ないから無視だな。
そういえば証明部位は水かきだったよな。
お、あったあった。
カエルの胴体は飛び散ってたけど、水かきはそのまま残ってて良かったよ。
水かきに手を触れずに【食料庫】発動っと。
空中に黒く四角いブロックが現れ、カエルの水かきを吸い込んだ。
よし、これから西町の口入屋に戻る頃には査定は終わってるだろ。
俺は西町の口入屋に向かった。
== 13時53分 ==
素材換金所の受付に顔を出すと、口入屋の主人らしき人が出てきて対応してくれた。
俺を大口の得意先として認定してくれたようだ。
俺は応接間に通され待っていると、主人が俺のスフィアカードを持って現れた。
最近換金したものの履歴を見れるらしい。
さっき討伐したカエルの賞金も、もちろん含まれている。
渡されたカードを確認した
=====
◆青色金剛石×13=金貨390枚
◆石喰いの単眼×55=金貨110枚
◆人食い蝙蝠の翼×139=金貨70枚
◆強酸性スライムの心臓核×100=金貨33枚
◆土蜘蛛の糸×24=金貨12枚
◆土蜘蛛の体×20=金貨20枚
◆岩石竜の体×1=金貨300枚
◆デカベロン討伐賞金=金貨55枚
合計:金貨990枚
=====
一日の収穫としては十分だな。
青の晶洞の奥にいた岩の恐竜っぽい魔物の体が思ったより高く売れた。
俺は掲示板に残っている高額の賞金首の手配書の写しを五枚もらい、南町の遊郭に向かった。
=====
所持金
金貨:992枚
大銀貨:8枚
大銅貨:3枚
=====
俺はセルフィナに会う為に『一葉』へ入った。
精算所の女は驚いている。
俺のように連続で来る客はいないんだろうな。
カードから料金を支払い二階に案内され、セルフィナの部屋に入る。
======
所持金
金貨:942枚
大銀貨:8枚
大銅貨:3枚
=====
「ユ、ユラリ様!? え? 金貨を五十枚もこんなに早く用意できたのですか?」
俺が来る事を知らなかったのかセルフィナは驚いていた。
預言とか未来視って何でも分る便利なスキルじゃないんだな。
「まあな。大分疲れたが用意できた」
「す、すごいです……。昨日は金貨二枚しか持っていないとおっしゃっていたのに」
「お前を他の誰かに取られたくないからな」
「私の為に……」
「それで、手配書の写しを何枚か持ってきたから、賞金首の居場所を特定してくれないか?」
「は、はい。お任せ下さい」
俺は手配書の写しを畳の上に五枚広げた。
セルフィナはそれに手をかざしスキルを使う。
「天の導きと地の標を我の前に示せ!【天占術】!!」
五枚の手配書が光に包まれる。
それからすぐに手配書に宿っていた光が頭上に集まり、周辺の地図らしきものを形作った。
それは光で構成された立体的な東江の都の地図だった。
俺の知識では立体映像やホログラムのようなものだ。
その東江の都の地図には、五カ所の位置に赤く光る点と名前が追加された。
賞金首それぞれの現在位置だ。
セルフィナの話では、天占術はあくまで占いなので百パーセント当たるわけではないらしい。
それでも八割は当たるというんだから十分だろう。
俺は懐から筆と墨壷を出し、表示された賞金首の現在位置を昨日買っておいた地図に書き記す。
「セルフィナ助かったよ。来たばかりだけどもう行くよ」
「あ、あのっ、もう少しゆっくりしていかれては? わたくしはユラリ様と、その、お話をしたいです」
「悪いが、お前を大金積んでも身請けしたいと言う金持ちがすぐに現れるかもしれない。だから可能な限り急いで金を稼がなきゃならないんだ」
「どうしてわたくしの為にそこまで……ユラリ様にとってはつい先日出会ったばかりの遊女でしかありませんのに」
「お前は俺に全てを捧げると言ったよな?」
「はい。今でもその決意は変わりません」
「それなら当然だよ。俺達は死ぬも生きるも一蓮托生になったという事だ。セルフィナが俺に全てを捧げると言ってくれたように、俺は俺の全力をもってお前を護るし、お前の為ならどんな困難だろうと乗り越えてみせる。それが死ぬまで運命を共にするって事だろ」
「は、はい。ありがとうございます。そんな情熱的な告白をされたのは生まれて初めてです……。ユラリ様がそこまでおっしゃって下さるなら、わたくしもここで貴方を信じてお待ちしております。ですから、どうか」
「ああ、心配しなくても大丈夫だよ、俺はこう見えて魔物が逃げ出す位には強いんだ。じゃあな、また明日も顔を見に来るよ」
俺は『一葉』に来てから三十分も経たずに外へ出た。
さてと、賞金首狩りの開始だ!




