運命の出会い
このセルフィナっていう娘、スキルと仕事の相性を考えると副支配人にぴったりじゃないだろうか。
旅館の受付業務と副支配人を兼務して欲しいからお客と接する機会も多い。
だから気遣いや礼儀作法や言語、それに学識や常識も必要になるだろう。
彼女がうちの旅館にきれくれたら間違いなく役に立ってくれるだろうし、俺の仕事が大幅に減るのは間違いない。
さっきまでは外国のすごい美人くらいにしか思ってなかったけど、まさか天使の転生者で、ある程度未来を知る事ができる上にパッシブスキルも優秀だなんて。
こんなの見せられたら従業員にスカウトしないわけにはいかないでしょ。
それには金が必要になる。
遊女の身請けってかなり高額だったはず。
一先ず手持ちの金貨で一度会ってみるか。
「よし、セルフィナの所へ案内してくれ」
「おっ、あっしの目に狂いはありませんでしたね! 若旦那、さあどうぞこちらです」
俺は二階を眺める男達をかき分け、客引きの男の後に続いて『一葉』に入る。
建物の中は意外と上品な内装をしていた。
外は真っ赤に塗られていたため、中もけばけばしい内装だろうと思っていたが、入ってみると高級感さえ感じる落ち着いた雰囲気だった。
遊女達が使うのだろう香木の香りも漂っている。
客引きの男の話によると一階はすべて従業員の日常生活のための場所で、その奥がこの宿の主たち家族の住居空間になっており、遊女達が接客をするのは二階だそうだ。
玄関を入るとすぐ左手に年配の女性が座っていた。
清算場所らしい。
ここで清算を担当している女はこの売春宿の主の妻で、ここで働く遊女達の管理をしているのだそうだ。
その女が俺に品定めするような視線を向けてきた。
「あんた、まだ若いね。ここは初めてかい?」
「そうだ。もしかして年齢制限とかあるのか?」
「そんなもんはないよ。金さえ払ってくれるなら誰だってお客さ。それで? どの娘を買うんだい?」
「二階のセルフィナを頼む」
「あんた、あの娘を買えるだけの金を持っているのかい?」
「ああ、この通りだ」
俺はスフィアカードの裏面を精算所の女に見せた。
「一回は払えてもその後続かない客はうちでは断ってるんだ。この金額を何回も用意できるのかい?」
「ああ、なんとかする」
「この業界のもんはね、言葉より鑑定結果を信るんだ。悪いがあんたの素性を確認させてもらうが、かまわないかい?」
「ああ。このスフィアカードでいいか?」
「それを貸しな……ほう、その若さであの大旅館の総支配人ときたか。それなら大丈夫そうだね。よし、分った。金を払ったら二階に上がんな。禿に案内させるよ」
禿ってなんだ?
分らないことはアウレナ先生に聞こう。
あまり人に聞くもの気が引ける。
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◆禿
遊女の世話をしながら遊女の心得などを学ぶ、数え年で八歳から十三歳くらいまでの女子。
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なるほど、遊女見習いなのか。
おれはスフィアカードで支払いを済ませると、女の子に案内され二階へあがった。
手持ちのお金がほとんどなくなったな。
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所持金
金貨:2枚
大銀貨:9枚
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残りは日本円で五万八千円くらいだな。
二階に上がるとそこは部屋が細かく仕切られており、酒宴中なのか騒ぐ男の声や三味線の音色。
他の部屋からは女の喘ぎ声なんかも聞こえてきた。
中央の廊下を進んでいると着物を整えながら女が出てきた。
お努めをはたしてきたところだろうか。
俺は女の子に案内されセルフィナのいる座敷の前に到着し襖を引いた。
すると、俺の到着を知っていたかのように、セルフィナは上座に正座して待っていたようだ。
案内の女の子は襖を閉めて一階に戻って行った。
俺は敷いてあった座布団に座りセルフィナと向かい合う。
隣の座敷に目をやると布団が敷かれている。
今回は何かできるわけじゃないけど、ドキドキしてきた。
改めて見てもセルフィナの容姿は美しい。
透き通るようなキメの細かい白い肌に桃色の唇。
黄金色の長い髪は後ろで結われ豪華なかんざしで止められている。
金髪に着物は似合わないと言う人がいるが、彼女には当てはまらないな。
絢爛豪華な着物よりも彼女の美しさが遥かに勝っていて、気がつくと見とれてしまっていた。
まず始めの数回は顔見せだけで口も聞けないんだったかな。
と思っているとセルフィナの方から話しかけられた。
「お待ちしておりましたユラリ様」
「え? 会話してもいいのか? それにまだ自己紹介もしてないのに、どうして俺の名前を知っているんだ?」
「すでにわたくしが天使の生まれ変わりであることを知っているのでしょう? 」
「あ、ああ。それはついさっき確認したけど。……そうか、預言や未来視で俺の事を知ったのか」
「はい。わたくしは自分に関わる重大な事ならば未来を知る事ができるのです」
前もって俺がここに来る事を知っていたなんて、やはり未来を知るのはすごい能力だ。
「わたくしの復讐を成し遂げてくださり、わたくしの未来の旦那様になられるユラリ様が現れるのを、十二年もの間ずっとお待ちしておりました」




