表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/184

二種類のスフィア



 俺は用紙に記入し終えた。


=====

 ◆募集要項

 依頼者の名前:ユラリ・ツクミハラ

 依頼者の職業:日乃光旅館の総支配人

 募集職種:副支配人、仲居、料理人補助、掃除係、庭師、大工、鍛冶師、洗濯、宣伝や営業、警備員、医者、調達係、経理、芸人、宴会接待役の男女。その他旅館で活かせる技能を持つ方なら歓迎します。

 給与と待遇:面接時要相談

 面接:随時面接

 面接場所:日乃光旅館の総支配人室

=====


「はい。承りました。これはまた沢山募集されるんですね」


「まあね、旅館を生まれ変わらせるためにね」


口入屋くちいれやに求職者登録している方々はスフィアカードを作成していただいてます。面接時にスフィアカードの提示を求めれば、その方の能力値や習得技能を見る事ができますよ。ちなみにスフィアカードの登録情報は作成した本人の能力を随時自動更新していますので、古い情報のままということはございません」


「鑑定結果が簡単に確認できるのか。便利なシステムだな」


「もし口入屋くちいれやに求職者登録している方を採用されるのであれば、私どもにご連絡ください」


「分ったよ。あとは頼む」


 俺は用が済んだので帰ろうとすると、受付のコウメから声をかけられた。


「あのっ!」


「え? まだ何か?」


「こ、今度私とお茶でもしませんか? 美味しい抹茶とお団子を出すお店を知ってるんですっ!」


 はて、この娘は何を言ってるんだ?

 俺とお茶を飲むのは口入屋くちいれやの業務と何の関係あるんだろうか。


 うーん、関係ないよな。

 ということはこれ、逆ナンじゃね?

 まじか! 人生初体験だ。


 舞い上がる気持ちを抑えて冷静に考えてみよう。

 俺が有名旅館の総支配人だからだろうな。

 人口の七割が女性なら、結婚相手の男性を見つけるのも大変ということだろう。

 だから女性も積極的に気に入った男性に声をかけるのか。


 あ、もしかして、受付担当が皆女性なのはそういうことか?

 仕事を求める男も現れるだろうけど、人を雇えるくらい金持ちの商人なんかも訪れるはずだ。

 すなわち、ここの口入屋くちいれやの受付をするのは婚活するのに適しているからか。


 年頃の美人な娘に誘われるのは悪い気はしないが、今は恋愛にうつつを抜かしている余裕はないんだよな。

 早く従業員を集めて何もしないでいい楽な生活を実現させないと。


「あー悪いな、ちょっと毎日多忙で時間がとれないんだ」


「そう、ですか……。じゃあ暇になったら声かけてくださいね!」


「あ、ああ。覚えておくよ」


「ぜ、絶対ですよ!?」


 おお、かなりぐいぐいくるな。それだけこの国の性比率は問題になっているということか。

 オウカは性比率が偏った原因は分からないといっていたが、俺にもどうしようもないことだ。


外に出る前にここにある白いスフィアに触れてみようかな。

地下で使っていた黒いスフィアと使い方が同じだといいけど。

俺は白く光るスフィアに近づき手を触れた。

するとアウレナの疑似人格の声が脳裏に響く。


『陽のスフィアに接続されました。これ以降は陽のスキル習得とスキルレベルを上げる事が可能となります。只今のスキルポイントはゼロです』


 陽のスフィア?

 そういえば女王蟻の所にあった黒いスフィアに初めて触れたときも、今と同じようなメッセージがでたな。


 たしか陰のスフィアに接続したとか言っていた気がする。

 俺が地下で使っていた黒いスフィアは陰、地上にある白く光るスフィアは陽か。

 ということは、やっぱり別物なのか?


 俺がこのスフィアに触れたことで陽のスフィアを使用可能になったということだな。

 使えるようになったのはいいけど、スキルポイントがないんじゃどうしようもない。


 陽のスフィアでのスキルのレベル上げはまた今度だな。

 俺は必死に手をふるコウメに見送られ口入屋くちいれやを出た。


「さてと、果報は寝て待てというが、そういうわけにもいかないよな。俺も東江の都の見物でもしながら人材探索をしようかな」


 俺は適当に都をふらふら歩いた。

 さすがに政治の中心地だけあって馬に乗る武士や侍の姿が見られる。

 篭に乗る商人らしき者もちらほら。


 一方、庶民の暮らしも活気に満ちている。

 昼間だというのに飲み屋から騒ぐ男達や、かけ声とともに走り去る飛脚。

 牛に引かれ荷物を積んだ大八車。

 市場で食材の値段を値切っている女性の声や、遊んでいる子供達の元気な笑い声。


 お? ここでは歌舞伎を上演しているのか。

 あ、あの身体の大きい人達は相撲の力士だよな?

 洋服を着ている外国の人もたまに見かける。


 これがこの東江の都の日常なんだろう。

 歴史には詳しくないが、江戸時代の日本はこんな感じだったんじゃないだろうか。


 あ、貸本屋って看板に書いてある。

 今は本なんて読む暇はないけどちょっとだけ覗いてみるか。

 どんな本が売っているか見るだけならタダだし。


 おお、小説のようなものから挿絵が描かれたものまである。

 手書きでなく木版刷りで複製しているようだな。


 ん? あれはこの都周辺の地図だな。

 この地図は売っているのか。

 これは買いだろう。


 様々な情報が書き込まれている。

 散策するのに役立つはずだ。

 値段は大銀貨一枚か。


 おれはスフィアカードで代金を支払い地図を購入した。


=====

 所持金

 金貨:52枚

 大銀貨:9枚

=====


 それから南町に入り大通りを目的も無く歩き、角を曲がって通りの先に見えてきたのは真っ赤に塗られた建物だ。


 あれは女と楽しくアレする遊郭ってやつじゃないか?

 張見世はりみせもあるし間違いないだろう。


 張見世とは遊郭で往来に面した店先に遊女が居並び、格子の内側から自分の姿を見せて客を待つことや、またはその場所のことをいうものだ。


 俺は張見世に近づき中の女性達を覗き込んだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ