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妻達と湖へ

 



=====

 地上生活、二百五日目。

 午前八時三十八分

=====


 今日の天気は雲一つ無い快晴。

 俺は妻達と旅館の近くにある湖にやってきていた。

 なぜなら、前にヒラガに頼んでおいた水着用布地の開発が終わり、五人の妻達それぞれの水着の仕立てが終わったからだ。


 メンバーは俺とセルフィナとペティ、イチゴとカエデ、アサハナとイナンナの合計七人だ。

 俺は湖岸の平な地面にござを敷き、真っ赤な和風のサンパラソルを突き立てる。


 サンパラソルとはいっても実はちょっと違う。

 屋外で行われるお茶会で使う野点傘のだけがさという真っ赤な和風の傘を、コチョウが持っていたから借りて来たんだ。


 野点傘を地面に突き指すと妻達も着物を脱ぎ始め、俺がプレゼントした水着姿になった。


 ペティが上目遣いで頬を赤くさせて俺に質問してきた。


「ご、ご主人様……どうですか? 似合ってますか?」


「おお! 可愛いぞペティ!」


「ちょっと恥ずかしいけど、ご主人様が喜んでくれたならよかったです」


 まずは褐色の肌に銀髪ツインテールの美少女、ペティの水着から解説しよう。

 彼女が着ているのはフリルのついた白いバンドゥビキニで、健康的な彼女にピッタリな水着だ。


 バンドゥビキニとはブラの部分が三角ではなく横長の帯状で、チューブトップ型になったビキニの事。

 可愛い印象を与えるし小振りな胸を綺麗に見せることができる。


 続いてセルフィナも俺に水着姿を見せてくれた。


「ユラリ様。わたくしはいかがですか?」


「うん。神々しいくらいに綺麗だよセルフィナ!」


 次は色白で黄金色の長い髪が美しいセルフィナの水着姿だ。

 黒のトップとボトム。

 そのボトムの上には黒いパレオを巻きつけていて、彼女の大人びた美貌をさらに強調して色っぽさ大爆発だ。


 彼女の美しい形の胸プリンを支えているトップは、紐を首の後ろで結んで固定するホルタービキニというタイプの水着で、胸と水着の隙間や位置がズレる事が少なく女性らしさが特徴。


 イチゴは恥ずかしそうに頬を赤く染めもじもじしている。


「ユラリ……あ、あたしは、どう?」


「いい! すごくいい! イチゴも似合ってる!」


 華奢な体型のイチゴには彼女が好きなピンクベースでイチゴ柄の三角ビキニをプレゼントしてある。

 三角ビキニとはトップの布地が三角形をしたビキニタイプの水着の事。


 固定はほとんどが紐になっておりブラの下側の紐は固定せずに、位置を個人差に合わせて調節でき、その人の胸にフィットするようになっている。

 さらに胸にフィットすることで影を作ってくれるので谷間があるようにも見せてくれる。

 イチゴだからこそ似合う水着だ。


 カエデは黙々とバーベキューの準備をしている。

 彼女は水着にはあまり興味を示さないようだ。


「ユラリさん。簡易コンロはこの辺に設置していいですか?」


「ああ、そうだな。そこでいいぞ」


「おいしい野外料理を披露します!」


 赤みを帯びた髪で引き締まった体型のカエデにはワインレッドのレーシングバックというタイプの水着を着てもらっている。


 この水着は背面でアームホールを極端に大きくカットし、背中の中央が細くなっており上腕の可動性を高めた競泳水着でみられるデザインの事で、ホールド力がありながら可動性も高く動きやすい。

 見た目よりも機能性を重視している為、食材の下準備や料理をしていても違和感はないはずだ。


 アサハナが俺の右腕に抱きついてビッグな胸プリンを押し付けてきた。


「おいらの水着はどうっすか?」


「お、おおっ! でかいっ! じゃなくてお前も似合ってるぞ」


 アサハナが着ているのはパステルカラーの緑をベースカラーにした、ハイネックビキニという水着だ。


 ハイネックビキニはバスト部分の布が大きく、首元まで覆われていて体型カバー効果が高い。

 ハイネックの水着は胸元の露出部分が少ないため、大きな胸を自然にカバーしてフィット感が高く、動いても谷間が露出したり水着がずれたりする心配が少ない。


 右腕に暴力的なプリンの柔らかい感触が伝わり、俺の頭の中で本能君がプリン祭りでワッショイを初めてしまった。

 あ〜なんて気持ちがいい感触だろうか。


 その時ゾクリと悪寒を感じ背後を振り向くと、瞳を涙で潤ませたイチゴが睨んでいた。


 し、しまった。

 ついめくるめくビッグ胸プリンの世界に酔いしれてしまった。

 イチゴは自分の胸にコンプレックスがあるようだから、彼女の前ではあまり大きい胸を喜ぶような素振りを見せてはいけないんだ。

 後で沢山褒めて機嫌をとらないとな。


 そうこうしているうちに妻達は皆で湖に入って遊び始めた。

 水をかけあって遊んだり、楽しそうに泳いでいる。

 俺は左手を動かせないので泳げない。

 だから湖岸で妻達が遊んでいるのを見学だ。


 美しく可愛い娘達が楽しくはしゃぐ姿というのは見ているだけで癒される。

 眼福とはこういうのを言うんだろうな。


 その時湖底から巨大な錦鯉とその背に跨がるイナンナが飛び出した。

 そういえばイナンナにも水着をプレゼントしたのを忘れていた。


 彼女が着ているのはお約束の紺色スクール水着。

 胸元にひらがなで『いなんな』と書かれている。

 これは俺が彼女に着せたわけじゃなく、イナンナが自分からスクール水着が欲しいと言ってきたのだ。


 地球での生活が長いイナンナはスクール水着の破壊力をよく理解している。

 イナンナは錦鯉の背中の上から跳躍して俺の前に着地し、俺の隣に膝を抱えて座った。


「ユラリ。この水着どう?」


「ああ、小柄なイナンナによく似合ってると思うぞ」


「よかった」


 イナンナは俺に微笑んでくれたけど、前のように心の底から喜んでいるような笑顔ではなかった。


 イナンナは自分がこの世界にやってきた理由を思い出してから元気が無い。

 何か思い詰めたような表情で時々ぼーっとしている事も増えた。

 彼女は俺に言えない悩みを抱えているようだった。


「なあイナンナ。俺はお前の事が好きだ」


「うん。すごくうれしい」


「お前の事を一生面倒見る覚悟もできている」


「うん。イナンナもユラリとずっと一緒がいい」


「だから俺にお前がこの世界にやってきた理由を聞かせてくれないか?」


「それは……」


「俺と契約したときに思い出したんだろ? その時から元気がなくなったよな。この世界に来た理由と何か関係があるのか?」


「……」


「もしも何か悩んでいるんだったら俺が力になる。それに他の皆も力になってくれる。だから話してくれないか?」


「でも……」


イナンナは俯いてしまう。


「俺達の事が信じられないか?」


イナンナは悲しそうな顔で俺を見つめる。


「し、信じてる。ユラリはイナンナの幸せだから」


「俺達にはお前を助ける事ができないと思ってるのか?」


「そんな事は思ってない」


「だったら悩んでいる事を話してくれ。俺が一人で解決できなくても皆で考えれば解決できる事だってあると思うんだ」


「……うん」


 イナンナは頷き俺の目を真っ直ぐに見つめて話し始めた。


「イナンナがこの世界にきた理由は三つある」


 イナンナが俺に話してくれた理由はかなりスケールの大きな話だった。

 一つ目の理由は穢れの排除。

 イナンナの話では今この世界には穢れが蓄積しており、その穢れを排除しなければ世界の崩壊に繋がる深刻な悪影響が出てしまうらしい。


「穢れの排除か。それってカンザキのような奴らを殺すって事だよな」


「ここ数十年で急に穢れが増えてる。昔は穢れが現れても誰かが退治していたから増える事はなかった」


 穢れが蓄積しているという事は本来祓うべき穢れを消滅させるのではなく、何者かがカンザキのように能力強化のために利用しているからか?

 その件に関してもまだまだ情報が足りなくて断定はできないけどな。


 カンザキの称号にあった『堕ち人の宴』とかいう組織に関係があるのかもしれないな。

 オボロやシュンも関係しているかもしれない組織だ。


 二つ目は大陸の戦で死んだ者達の魂や亡骸を集める事。

 最近大陸で行われた大きな戦では、十万人以上もの人が戦死したり犠牲になったらしい。

 その戦で死んだ者の魂や亡骸が、アンデッドとして他の人々に害を与える前に回収しないといけないらしい。


 そういえばイナンナは死神だったな。

 こういう仕事も彼女の仕事になるのか。


 三つ目の理由はこの世界にいる異者ことものの排除。


「え、それって俺を殺さなければいけないという事か?」


「うん。でもそんな事はしたくないから悩んでた」


 それでずっと表情が暗かったのか。

 確かにそれだと悩むよな。

 俺がイナンナの立場だったらどうすればいいか分らなくなるだろう。

 異者ことものを殺さなくて済む別の解決方法を探す必要がありそうだ。


「そもそもどうして異者を排除する必要があるんだ?」


「異者は世界の理から外れた存在。この世界に害となる可能性のある存在」


 そういう事か。

 つまりはイナンナの役目はウイルス除去か。


 穢れの消滅。

 亡骸の回収。

 異者の排除。


 どれもかなり広い範囲で動き回らないといけない事ばかりだな。

 亡骸の回収だけ考えても相当な時間がかかりそうだ。


 この三つの理由で共通している点は、世界のバランスが崩れないように保とうとしていることだ。

 つまり天界というのはこの世界のバランスを調整して管理する為の機関という認識でいいだろう。


 天界にはセルフィナのような天使だったり、イナンナのような死神がいる。

 世界を円滑に維持するために様々な役割があるんだろう。

 イナンナが不安げな表情で俺を見つめる。


「なんとかなる?」


「なんとかしてみせる! だから心配すんな」


「うん。わかった」


 イナンナはさっきより明るい表情で俺に微笑みかける。


「ちなみに時間制限とかあるのか?」


「決められてない。あるとすればこの世界が滅ぶまで」


「どのくらいで滅ぶか知ってるか?」


「知らない。でも、イナンナがこの世界に派遣されたってことは、そんなに多くの時間は残されていないと思う」


「それもそうか……」


 世界が滅ぶまでがタイムリミットか。

 どのくらいこの世界のバランスが崩れているのか分らない以上、先延ばしにしてのんびりしている時間はない。


 まずは情報収集だ。

 ギンコやコチョウ、マコトやオウカにも協力してもらおう。

 近いうちに他の皆にもこの事を知らせて相談してみるか。

 できる事からやって行こう。


 俺はイナンナの頭を優しく撫でてから抱き寄せた。

 イナンナは何も言わず俺に体重を預けてくれる。

 こいつの信頼に応える為なら大陸だろうが何処だろうが行ってやる。


 手始めにニゲレナの転移を強化して長距離を移動できるようにするか。

 



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