縄張り指定を便利に使う
「し、城をじゃと!? はぁ、はぁ、無理難題過ぎる命令をされて全身が快感にうち震えておる。はぁ、はぁ。ユラリは妾を気持ち良くさせる天才じゃの〜」
「俺はこの城が欲しいわけじゃない。ただ今だけ俺の物だと言うだけでいい」
「言うだけとな? それならばできるのじゃ! 妾はここに宣言する。この城はユラリのものじゃ! これでよいのか? これで踏んでくれるのじゃな?」
「よし準備は整った」
俺は喘ぐオウカを何度か踏み付けながら、あるスキルを使う事にした。
「この日乃光城を俺のものとする!【縄張り指定】!!」
すると俺はこの城内全体の構造を把握できるようになった。
これはこの城が俺の縄張りになった証拠だ。
この蟻スキル【縄張り指定】は俺が所有している建物や一定の範囲を俺の縄張りに指定する事ができる。
当然この城は俺のものじゃないから、城の所有者であるオウカに俺の物になったと宣言してもらわなければ使用できなかった。
「オウカはここで動かずに待て」
「おふぅ、今度は犬扱いかのう。はぁ、はぁ、たまらんのう」
俺は顔を赤くして悶えるオウカを放置し庭で戦う忍者達の元へ行く。
そしてコチョウに向けて支配者スキルを使用した。
「対象はコチョウ。【強制隷属契約】!」
俺のスキル発動でコチョウの身体が淡く光る。
コチョウを強制的に俺の奴隷へと変えた。
そして命令を発する。
「コチョウは動くな。それと自害も禁止な」
「えっ!? ど、どないなっとるん? 身体が動かせへん」
「師匠。これは?」
「一時的にこの城を俺の縄張りに指定し支配者スキルでコチョウの動きを止めたんだ。なあコチョウ。お前の目的を言え」
「そんなん言うわけありまへ……目的はオウカ姫の暗殺どす……はっ!? 言うてしもた!?」
「なぜオウカを暗殺する必要がある? 奴隷紋が消えて手がかりになる記憶も消えたのに」
「そ、それを言うわけには……記憶が消されても依頼人の正体がばれる可能性があるんよ……えっ!? また言うてしもたっ!」
「依頼者とは誰だ?」
「それだけは絶対に言えま……依頼者はアル・アトラーン王国の宰相どす……な、なんでっ!? このままやったら、うちも殺される……」
アル・アトラーン?
今回のアフヨウ密輸に大陸南の大国が関わっているというのか?
なるほどな。
オウカはあれでも一国の姫だから、あいつに奴隷紋を刻めるタイミングと人間は限られてくる。
オウカが表敬訪問か何かでアル・アトラーン王国に行った時か、もしくはアル・アトラーンからの国賓を迎えた時に奴隷紋を刻まれたのかもしれない。
オウカ本人を殺さない限り真の黒幕への手がかりが残る。
だから奴隷紋が誰かに見つかったり消されたりした時に、オウカを殺して完全に手がかりを消す必要があったのか。
その為にオウカを護衛する忍者の中に暗殺者を一人紛れ込ませていたと。
そいつがあの芸子のコチョウだったんだから笑えないな。
コチョウには他にも聞く事がある。
「コチョウ。お前がイワクラを殺したのか?」
「くっ……うちは殺してへん……か、勝手に口が動いてまう」
え、という事はあのと銀糸を使っていた忍者はこいつじゃないのか。
コチョウの他にも銀糸を使う忍者がいるという事だ。
「白虎会のカジを殺し、親分に重傷を負わせたのはお前か? 本当の事を言え」
「そ、それもうちやないっ! うちは姫さんを始末するよう言われとっただけどす」
コチョウの言っている事は本当のようだ。
俺の命令に逆って嘘を言うことはできないからな。
まだこいつの他に影で動いている奴がいるんだろう。
そのときオウカの寝所に妖しい気配が近づく。
ま、まずい!
俺は【縮地】で寝所に戻り、オウカを背後から殺そうとしていた黒いターバンの男の短剣を手刀で切断した。
「くっ!?」
「もう一人いたかっ! 【加重】二レベルで鎮圧!」
オウカを襲おうとした黒いターバンの男は重力によって畳に貼付けられ動けなくなった。
俺はコチョウのように【強制隷属契約】を使い男から情報を引き出そうとした直後、その男は懐から何かを取り出した。
俺の後に続いて寝所に入ってきていたギンコが叫ぶ。
「師匠! それは爆弾です! 離れてっ!」
黒いターバンの男はオウカもろとも自爆しようとしていた。
その爆弾の内部から赤い光りが溢れ出していた!
次の瞬間、オウカの寝所が大爆発し炎と爆風が広範囲に広がる。
その爆発音を聞いた警備の侍達が駆けつけたが、その建物の周囲に生きている者は誰一人いなかった。
俺は爆発した寝所を少し離れた場所から眺めながら呟いた。
「あっぶね〜、危うくペティやファンタが死ぬところだった」
爆発の直前にニゲレナの転移術で皆を少し離れた屋根の上に移動させていた。
「あ、危なかったですねご主人様」
「ああ。間一髪だったな」
「わたくしも死ぬかと思いましたわ!」
「ニゲレナのおかげだ」
「ふっふ〜ん! ピョン子役に立ったでしょ? だったら〜」
「人参だろ? 旅館に帰ってからな」
「わ〜い!」
「師匠。コチョウはどうしますか?」
見るとコチョウはギンコから後ろ手に縄で縛られて捕らえられていた。
「旦那様。堪忍しておくれやす」
「お前の処遇は旅館に帰ってからだ」
こんなところでオウカと一緒にいるところを城の誰かに見られたら、あの爆発の犯人にされかねない。
早く旅館に戻らないとな。
「オウカ。死の奴隷紋が消えたんなら、もう自由に動けるんだろ?」
「そうじゃな。もう妾を縛るものはないのじゃ。……し、縛るというのもいいかもしれないのう。はぁ、はぁ」
「お前の変態的な趣味は聞いてない。それよりも奉行所に命令して俺の捜索を止めさろ。このままじゃあ俺は脱獄犯のままだからな」
「それは了解したのじゃが……これから妾はどうすればよいのかの?」
「いままでのように姫を続けてろ。俺の守護者になって碌でもないスキルも増えているから、それを駆使してこの国の実権を握ればいい」
「ユ、ユラリ。もしや、妾のために……?」
「勘違いするなよ。お前がこの国をもっと繁栄させてくれれば俺の旅館も繁盛する。だからこれはお前のためじゃない。俺自身の為にお前を一生こき使ってやるよ」
オウカの目は潤んでいて今にも泣き出しそうな表情だ。
「ニゲレナ。オウカ以外を旅館まで転移させろ」
「は〜い、行っくよ〜!」
「わ、妾を屋根の上に放置じゃと!? なんとこれが噂に聞く放置ぷれいというやつじゃな! はぁ、はぁ」
この駄目姫は放っておいても城の奴らが見つけてくれるだろ。
俺達はオウカをその場に残して旅館へと帰還した。




