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復讐の守護者任命

 



 そのカードには六枚の漆黒の翼を背中に生やし、鋭く長い爪や牙を持ち、螺旋を描く太い山羊角の悪魔が描かれている。

 その悪魔の足元には男女が向かい合って立っており、男の持つ鎖の先は微笑む女の首輪に繋がれていた。


「裏切り、束縛、欲望、快楽を求める心を表し、破滅に向かって堕落していく人を意味する守護属性。悪魔のカードだ」


 浮いていたオウカの身体は畳に降り立つ。

 そして彼女の身体の光りがだんだんと弱まっていく。

 それと同時に光りのカードも霧散して消えた。


「……は? のうユラリ。妾に何をしたのじゃ? なんだか頭がすっきりとして冴えておる、それに身体にも活力が溢れてくるのじゃ!」


「お前を俺専用の奴隷に変えた。お前は一生俺にこき使われるんだ」


 オウカが俺の意地悪な発言に反応し恍惚な表情で身震いした。


「あふぅ、……なぜか分らぬが、お主に酷いことを言われたのに、その、なんじゃ……快感を、感じるのじゃが」


「え……?」


「それにアフヨウの禁断症状や吸いたいという欲求もなくなっておる。これはどうした事なんじゃ?」


「それは薬漬けで汚れたお前の身体が新しい身体に生まれ変わったからだ」


「生まれ変わる? まったく意味が分からぬのじゃが?」


「説明は面倒だから。お前は一生不思議に思っとけ」


「あふぅ、お主にぞんざいに扱われると胸の奥がキュンキュンするのう。はぁ、はぁ、はぁ」


 え、こいつ本当にどうしたんだよ。

 無理矢理守護者にしてこき使ってやろうと思ったのに、こいつ俺から冷たくされて喜んでないか?


 俺の守護者になった影響で潜在能力だけでなくエムにも目覚めちゃった?

 守護属性の悪魔の影響かもしれないな。

 なんせ快楽とか堕落を意味している属性だから。


「なあユラリ〜。妾にもっと冷たくしておくれ」


 オウカがアフヨウの吸引器具を放り投げ、俺の足に縋り付いてくる。


「ちょっ、オウカ、なんだか目が怖い! こっちにくるな! くるなって!」


「いへへ〜、もっとじゃ、もっと妾に冷たく素気無くするのじゃユラリよ!」


 こ、こいつマジで変!


 オウカを守護者にして一生こき使えば俺を殺そうとした事の罰になると思ったんだけど、これじゃあ逆に喜ばせる事になってる気がする。


 もしかして守護者にするべきじゃなかったのかも。

 ま、まあ、性格がおかしくなったのはさておき、オウカのステータスを確認しておく必要がある。


 俺は足に縋り付くオウカの顔を、足で畳みに踏みつけて抑えこむ。

 オウカは幸せそうな顔をして涎を垂らしていた。

 うわ〜、駄目姫になってる。

 これ放送できない系の顔をしてるよ。


 俺はアウレナでオウカのステータスを確認した。



=====

 ◆オウカ・ヒノミツ

 種族:人族  性別:女  年齢:15  職業:姫

 LV:5  HP:270  MP:590  SP:3320

 物理攻撃力:150  物理防御力:170  敏捷力:80  

 術効力:240  術抵抗力:110  幸運:10

 アクティブスキル:長距離念話8、媚薬調合6、金縛り5、魅了5、HP吸収5、MP吸収5、SP吸収5、弱体化5、快感強化5、悪魔化5、魔眼5

 パッシブスキル:欲望5、邪心5、弱点看破5、悪女の心得6、姫の心得6、誘惑耐性3、痛み耐性3、恐怖耐性3、欲望感知5、悪意感知5、殺気感知5、ユラリ感知10、悪魔の身体

 称号:ユラリの奴隷、日ノ光国の姫、駄目姫、悪女、快楽を求める者、堕落する者、元アフヨウ中毒者、エムに目覚めし者、ユラリ無しでは生きられない身体

 ※ユラリの二十四守護者の一人:悪魔

=====



 うわ〜、まじか〜。

 姫なのにおぞましいスキルが多い。

 姫なのに……。


 分りづらいスキルの説明も確認しとかないと。



=====


 アクティブスキル

 ◆媚薬びやく作成:性欲を高めたり、恋愛感情を起こさせたり、使用した相手を惚れさせたりする薬をただの水から作り出す事ができる。

 ◆金縛り:対象の身体を動かなくする。

 ◆魅了:対象者は一定時間使用者に惚れて言う事を聞くようになる。

 ◆悪魔化:おぞましい悪魔の姿に変化する。自信の欲望の大きさによって悪魔化した際の能力値が大幅に上昇する。

 ◆魔眼:この目で射抜かれた者は普段押さえつけられている欲望が強制的に引き出される。その際その欲望はスキルレベルに比例して膨れ上がる。


 パッシブスキル

 ◆欲望:ほしがる心。不足を感じて満たそうと望む心。

 ◆邪心:悪い心。邪悪な心。

 ◆悪女の心得5:嘘5、狡猾こうかつ5、悪巧み5、そそのかし5、誘惑5、愛想5、常識5、礼儀作法5

 ◆姫の心得5:気品5、高潔5、学識7、言語5、話術5、交渉6、茶道5、華道5、書道5、舞踊5、礼儀作法8、夜伽作法5

 ◆ユラリ感知:どこにいてもユラリの居場所を知る事ができる。

 ◆悪魔の身体:精神や肉体への苦しみや痛み等の不快感を快楽に変える身体。その快楽が絶頂に達すると何かが起こる。


=====



 なんだか凶悪なキャラだな。

 うわ、【媚薬びやく作成】もできるのか。

 興味はあるが手を出してはいけない気がする。


 この【魔眼】は普段抑圧されている欲望を増大させるスキルか。

 俺に使われたら手当たり次第に女を襲うようになったりして。

 まさかな……。


 こ、これからすぐに理性君の猛特訓をはじめなければ!


 心得スキルの【悪女の心得】とか内容が怖い。

 というか、【ユラリ感知】って俺を感知するだけのスキルじゃないか。

 嫌〜な予感がする。


 あ、オウカが俺に冷たくされて喜ぶようになったのは、この【悪魔の身体】というパッシブスキルのせいだな。

 嫌な事があっても快楽に変わるなんてエムっ娘まっしぐらだ。

 絶頂に達すると何かが起こるって……何が起こるんだよ。

 アウレナに詳細を出してもらおう。


=====

 ◆絶頂に達すると何かが起こる:その何かとは、ヒ、ミ、ツ♥

=====


 え? 秘密って何だよ。

 それにアウレナの説明表示でハートマークなんて初めて見たよ。

 妖しい。

 妖しすぎる。


 これは絶対にやってはいけない事だろう。

 オウカをいじめるのは程々にしておくか。

 あんまりいじめると快楽を感じて絶頂に達し碌でもない事になる。


 そういえばオウカの首にあった死の奴隷紋が消えてる。

 ということは、死の奴隷紋を施した相手の正体を話せるのでは?


「なあオウカ。お前に奴隷紋を施した奴は誰だ? そいつらの居場所は? そいつらの目的は何だ?」


 オウカは俺の足に踏まれているのに、にやけた顔で答えた。


「はぁ、はぁ、ど、奴隷紋? ああ、それは〜、え〜と〜、何も思い出せぬ」


「おいおい、この期に及んでごまかすなよ」


「い、いや、そうではないのじゃ! 死の奴隷紋というのは記憶にも作用するかなり強い奴隷紋なんじゃ。たぶんじゃが、もしも奴隷紋が消された場合に特定の記憶も一緒に消えるという契約に妾は同意したんじゃろ。覚えておらぬがの」


「つまり大事な事は何も思い出せないと?」


「そうじゃ。思い出そうとしても名前はおろか顔さえも覚えておらぬのう。う〜む、やはり駄目じゃな。何もわからぬのじゃ。まあ、心当たりが無いわけでもないがのう」


 という事はオウカを操っていた奴らの正体は分らないのか。


「そんなことよりも妾をもっと蔑んだ冷たい目で見ておくれ! そうじゃ! そのゴミ虫を見るかのような冷酷な目っ! た、堪らんっ! はぁ、はぁ」


 最近俺の周囲に『はぁ、はぁ』言う奴が増えてきている気がする。

 ニゲレナといいオウカといいこれ以上変な奴が増えない事を祈ろう。


 寝所の外からまだ戦闘音が聞こえている。

 ギンコとコチョウの戦いはまだ続いているようだ。

 コチョウはさっきオウカを殺そうとしていたな。


 あいつはオウカに奴隷紋を施した奴について何か知っているかも。

 情報を聞き出す前に自害されると手がかりが無くなる。

 ここは裏技を使わせてもらおう。


「なあ駄目姫」


「あふぅ、いいのう、お主に駄目姫と呼ばれると感じてしまうのじゃ」


「俺の言う事を聞けば、もっと踏みつけてやってもいい」


「ほんとうかっ!? なんじゃ!? 妾は何でも言う事を聞くのじゃ!」


「だったらこの城を俺にくれ」


「ほえっ!?」




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