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死の奴隷紋

 



「それだと死んだイワクラが報われないな。ちゃんとお前の好みにあうように綺麗なサクラの紋様を彫らせたのに」


 オウカの顔からゆっくりと笑顔が消えていった。

 さらに俺は続ける。


 これまでの全てがイワクラが遺したオウカちゃん記録に書かれていたんだ。

 ここからはイワクラが倉庫に入った時、奴を犯人だと決めつけていた俺とリンドウが突入し、話し合いどころの騒ぎじゃなくなった。


 イワクラはアフヨウとオウカの繋がりを俺達に気づかせまいと、自分が黒幕であるかのように振る舞っていたが、オウカの為に彫らせた根付を見て思わずオウカの事を口走りそうになり、口封じの為に何者かによって殺された。



「イワクラを殺した忍はお前の差し金か?」


「……」


「ちなみにオウカちゃんの記録と俺が調査させた内容を照らし合わせた結果、もっとおもしろい事がわかった。俺が地上に出て来てから今までに解決してきた問題の幾つかにお前が関わっていたという事実だ」


 俺は怒りを抑えつつ黙るオウカに説明を続けた。


 まず始めに旅館を私物化する元副支配人の男を俺に始末させた。

 今になって冷静に考えれば分る事だが、国営の旅館が業績不振なのに今迄何年もてこ入れが行われないのは変だ。


 つまりあの時のオウカは現状を改善できる力がなかったという事。

 例えば犯罪を取り仕切る奉行が副支配人と裏で手を組んでいたのは知っていたが、それをどうこうできる権力をもっていなかったとか。

 だから俺を旅館の総支配人に抜擢して力づくで対処するように仕向けた。


 それからセルフィナをいたぶって殺そうとしたあの変態大名は、オウカとことあるごとに対立していた派閥のトップだった。

 だからオウカは変態大名にセルフィナの存在をわざと知らせ、俺より先に身請けをさせた。

 そうなると俺が変態大名の屋敷へ行き大暴れするのは目に見えているからな。


 遊郭にある『一葉』の精算所の女から受け取った煙管きせるも、お前の仕組んだ罠だった。

 実はあの変態大名は大の甘党で煙草は嫌いだったらしい。

 あんな玉のように太っていたんだから事実だろう。


「……」



 まだあるぞ。

 商人組合の商人の中にお前の息のかかった者がいた。

 イチゴの父であるタケゾウが言うには、その商人の強い勧めで旅館の従業員への嫌がらせを白虎会に依頼したらしい。


 つまり従業員に手を出した相手には容赦しない俺を利用し、都の裏社会の組織をまとめて始末せようとした。


 ヤクザ者達が壊滅する事で空白地帯になった裏社会の縄張りを、吸血族達の犯罪組織に与えると約束していたんだろ。

 それがうまくいけば大陸からアフヨウを密輸しやすくなるからな。


 あいにく潰れたのは東町を牛耳っていた青龍会だけだったけど、それでも吸血族達との取引には十分な環境が揃ったというわけだ。



 俺が宝の地図をもらった時、デバガメに俺の後を付けさせ財宝を横取りさせようとしたのもオウカだ。


 デバガメはしきりに出世をするためと言っていた。

 実はあのデバガメはオウカの派閥に属する大名でかなり身分も高い。

 そんな奴をさらに出世させる事のできる存在は限られる。

 つまり現段階でその派閥の最高権力者であるオウカしかいなかった。


 そのときのデバガメは危険な『衝波爆弾』をもっていた。

 バンジーの財宝を俺に見つけさせてから、その『衝波爆弾』で俺を殺し、財宝を横取りしてアフヨウの購入資金にでも当てようとしたんだろう。

 結局それは俺が死ななかった事で失敗に終わったけどな。


 最後に反乱が起きるように手引きしたのもオウカの仕業だ。

 その理由はただ一つ。

 オウカはわざと反乱が起きるように影で糸を引き、意図的にそれを見逃すことでこの国を蝕む腐った権力者共を一網打尽にしようと考えていたんだ。


 一万五千人以上もの戦死者を出して。


 オウカとディナク達の関係性はまだわからない。

 しかし、今回の戦では多くの人が死んだ。

 危うく俺の家族や旅館も失いそうになった。

 その元凶が今俺の前にいる。


「オウカ。どうしてこんな事をした?」


「……よもやイワクラに妾の行動が筒抜けだったとはのう。もてる女子は辛いものよな」


 オウカは魂の無い人形のように無表情だ。

 それから桜の絵柄が美しい着物の襟を開き首を俺に見えるようにした。


「奴隷紋?」


 ペティやセルフィナの首にあったものとは紋様が少し違う。

 アウレナにその紋様の情報を表示させた。


=====

 ◆死の奴隷紋:数種類ある奴隷紋の中でも最も拘束力の高いもの。主人の言う事に一度でも反論したり逆らうと即死してしまう奴隷紋である。

=====


「その奴隷紋がどうして姫であるお前の首に?」


「妾はのうユラリ。この日ノ光の国を守らないといかんのじゃ」


 オウカは俺に奴隷紋を見せたというのに、その話題には触れなかった。

 故意に俺の質問を無視したのか。


「母上は暗殺され父上も毒を盛られて意識不明の重体じゃ。もう妾がやるしかないんじゃよ」


 もしかしたらオウカはこの奴隷紋を施した奴について話す事を禁止されてるのかもしれない。

 俺にその正体を言ったらアウレナの説明にあったように即死するんだろう。


 つまり、今回の騒動の黒幕はオウカだと思っていたが、まだ背後に何者かがいるということじゃないのか?

 それを俺に知らせる為にわざとこいつは俺に奴隷紋を見せたのか。

 その奴隷紋については聞くのは今はやめておいた方がいいな。


「お前はその為にアフヨウをこの国に蔓延させ金を稼ごうとしたのか? そんな事をしたら国を守るどころか内側から腐っていくぞ」


「父が倒れた今、妾の権力を手っ取り早く高めるにはこれしか方法がなかった。それにアフヨウは妾にも必要なものじゃった」


「お前にも必要?」


 そう言うとオウカはおもむろに側においてあったランプのようなものと、翡翠ひすいでできた筒状の器具を手に取った。

 俺はすぐにアウレナで何の道具かを確認した。


=====

 ◆アフヨウの吸引パイプ:オイルランプの上で長いパイプを支え、ランプの熱でアフヨウを気化させ吸飲可能にするための道具。アフヨウの粉に直接火を付けるわけではなく、練り香のように丸めたアフヨウをじりじりと熱し、その立ちのぼる煙を一気に吸う。

=====


 あのパイプはアフヨウを吸う為の道具か。

 オウカはランプに火を付けてパイプについている小さな皿の上に、白い練り物を置いて炙り、出てきた煙を吸い込んでいる。

 パイプを持つ彼女の手をよく見ると小刻みに震えていて、アフヨウの禁断症状

 が出ているのがわかった。


「いつからだ」


「父上が倒れたあたりからかのう」


「どうして」


「民の上に立つというのは中々に辛いものでの。興味本位で吸ってみたのがきっかけで、もうこれなにしは生きられぬようになってしもうた」


「お前の母親はお前が薬漬けになる事を望んでいないんじゃないのか?」


「ん? お主に妾の母上の話をした事があったかのう? まあどうでもよい事じゃな。もう母も妹もおらぬ。もうすぐ父上もこの世から去るじゃろうし」


「このままじゃお前もアフヨウに殺されるぞ」




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