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久しぶりの帰還




=====

 地上生活、二百二日目。

 午前二時五分

=====


 俺はリンドウと共に旅館の従業員用入り口から寮の建物へ向かい、妻達とニゲレナの部屋へと行き、眠っていた彼女達を起こしロビーに集まってもらった。


「心配をかけたな」


 ペティは俺の右腕に抱きつき頬擦りする。


「ご主人様がお元気そうで良かったです! ご主人様が処刑されるその前に奥さん皆で東町奉行所を襲撃しようかと考えていたんです」


「お、おいおい。気持ちは嬉しいがそんな事をしたら、皆お尋ね者になってこの国にはいられなくなる所だったぞ!?」


セルフィナが俺の目を真っすぐに見つめてさも当然のように言う。


「わたくしたちはユラリ様の為ならば全てを捨てる覚悟です」


他の妻達も同時に頷く。


「あたしはユラリが処刑されるなんて絶対に許さない。逃亡者になってでも助け出すつもりだったわ」


「イチゴ……」


「あたいも死ぬまでユラリさんにご飯を作ると誓いました。どんな苦境に陥ろうと死ぬまで一緒です」


「カエデにも心配をかけたようだな」


「おいらは思ってましたっす。ユラリさんは脱獄してでも返ってくるって」


「まあな。愛する妻達を残して一人で死ねないからな」


 ファンタが真剣な表情で頷いた。


「本当に心配しましたわよ! ペティなんか総支配人さんの事が心配で心配で仕事が手についていませんでしたし」


「そういうファンタちゃんだって、さっきご主人様の顔を見た時に泣いて喜んでたよね?」


「な、泣いてなんていませんわ! 嬉しい事があると涙がでてくるアレルギーなんですのよ!」


妻達は俺の帰りを喜んでくれている。

彼女達は逃亡者として不自由な生活を余儀なくされるとしても、強引に俺を奉行所から脱獄させようとしていた事を知り、俺は彼女達の思いの強さに胸の奥が熱くなった。


「ありがとな。みんな……」



 ニゲレナは目を擦りながら床に横になり眠たそうな声で言った。


「ピョン子はまだ眠いよ〜」


俺はペティとファンタに向き直る。


「ペティとファンタに頼みがある」


「ご主人様の為ならなんでもします!」


「わたくしにできる事ならなんなりと!」


「ピョン子は眠いのでお部屋に帰りま〜す。ばいば〜い」


「ちなみにピョン子は強制参加な」


「え〜そんな〜」


ニゲレナが泣きそうな顔になっているが無視して話を進める。


「まずはペティとファンタのスキルについて確認したい」


「ご主人様? スキルがどうかしたんですか?」


「ファンタが俺の守護者になった時にスキルが増えたって言ってたよな?」


「そうですわ。ですけれどあの時使った【太陽極大爆発たいようふれあ】は使えませんわよ」


「ああ。あのスキルは【守護者激成】状態じゃないと使えないんだよな。それとは別にもう一つ増えてただろ」


「あ、そうでした。【追憶ついおく残滓ざんし】の事ですよね?」


「そう、それだ。そのスキルは今でも使えるんだよな?」


「使えますけれど、わたくしとペティの合成術ですので、二人同時に詠唱しないといけませんわよ」


「分ってる」


「じゃあ〜ピョン子に用事は無いということで〜」


「これから転移して貰いたい場所があるから、お前はここにいろ」


「あう〜ユラ子ちゃんはピョン子使いが荒いよ〜」


「お前は立場上俺の奴隷だ。我がまま言うと人参やらんぞ」


「え〜そんな〜」


「あ、リンドウ。ここまで助かったよ。ありがとな」


「こちらこそユラリ殿の役に立てて良かったでござる。これから黒幕の所へ行くのでござるか?」


「おう。……それでなんだけど」


「どうしたのでござるか?」


「い、いつまで手を繋いでるんだ?」


「手?」


リンドウは今までずっと俺と手を繋いだままなのに気がついていなかったらしく、つながれている自分の手を見てから顔を真っ赤にし慌てて手を離す。


「す、すまぬ! なんだかユラリ殿と手を繋いでいると、不思議と心地よく安心できるというか何と言うか……」


「俺もお前と手を繋いでいて安心するし、恋人同士みたいでドキドキした」


「ええっ!? 某の事を女子と思ってくれていたのでござるか!?」


「は? 当たり前だろ。お前は魅力的な娘だと思うぞ」


「み、魅力的ですとっ!? な、ななな、なな、何も世辞を言わなくとも」


「世辞じゃないって。それに俺はお前と肩を並べて悪者退治なんかをしたいな。二人の正義が悪を断つ! なあ、すごく格好良いと思わないか?」


「そ、某を女として……それに魅力的……!」


リンドウは虚空を見つめて放心状態になっている。

どうしたんだろうか。

あ、もしかして女扱いされるのが嫌だったりするのか?


「某はなんだか熱があるようなので屋敷に帰って休むでござるっ!」


「え、ああ。お大事にな!」


リンドウは顔を赤くしたまま逃げるように自分の屋敷へ帰っていった。

あ〜、なんか俺まずい事言ったのかもしれない。

後でちゃんと謝ったほうがいいのかも。


リンドウが旅館から出て行ったすぐ後にギンコが天井板を外して現れた。


「師匠」


「ん、ギンコか。どうした?」


「我も今回の黒幕の元へ連れて行ってはもらえませぬか?」


「お前がどうして」


「師匠から聞いた手練の忍者に心当たりがあるのです」


「知り合いか?」


「恐らくは」


「わかった。そいつの相手はお前に任せる。一緒に来い」


「感謝致します師匠!」


 こうして俺とペティとファンタ、それにギンコはニゲレナの転移で目的の場所へと向かった。


 そしてそいつが寝ている布団の横に立つ。


「よう。よくも今までさんざん俺を玩具にしてくれたな……」


 黒幕は目を覚まし俺達の姿を見て驚いている。


「俺を陥れようとした黒幕、そして」


 俺は殺気をそいつに向けて怒りを込めて言い放つ。




「日乃光国将王の一人娘、オウカ・ヒノミツっ!」




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