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獄門の刑




 俺は懐から花の紋様が刻まれた根付を取り出した。


「そ、その根付はっ!?」


「その反応を見るとやっぱりお前のか。俺の知り合いがこの根付をお前達の元アジトで拾ったんだ。一度は逃げる事ができたようだが残念だったな」


「その根付は、あのお方に……」


 イワクラが何かを言いかけたとき只ならぬ殺気を感じた。

 俺は咄嗟にイワクラの拘束を解き後ろに飛び退いた直後、イワクラの身体がバラバラに切断されてしまう。


 俺の前に現れたのは黒装束に身を包んだ一人の忍者だ。

 この忍者がトラキチ親分に重傷を負わせカジを殺した奴か?


 イワクラを殺したってことはこの忍者はイワクラの手の者じゃない。

 じゃあ一体この忍者は誰の命令で動いているんだ?


 ん? この倉庫に向けて大勢の人が向かって来ているな。

 忍者もそれに気付いたのか倉庫の外へ逃げて行った。

 俺は忍者の気配が完全に消えたのを確認し警戒を解く。


「ふぅ〜、襲われるのかと思ったぜ」


 たぶんあの忍者は相当な手練だ。

 覚醒して能力が上昇しているとはいえ、俺は左腕が使えなくなっているから、もし戦闘になれば勝てるかどうかわからない。


「ユラリ殿。今の忍は一体何者でござろうか?」


「俺にもわからない」


 それから少しして黒い羽織を着て十手を持った男達が、部下を大勢引き連れて倉庫に入ってきた。

 倉庫に近づいていた大勢の気配は東町の役人達だ。


 独自にアフヨウの捜査をしていて、この倉庫を探し出したのかもな。

 十手を持った同心や拘束用の術具を持っているようだ。

 同心の一人が信じられない言葉を口にした。


「日乃光旅館の総支配人ユラリ! お前をアフヨウの密輸と販売、並びにイワクラ様殺害の罪で捕らえる! この場に証拠がある以上言い逃れはできんぞ! 神妙にお縄につけいっ!」


「え?」


 ど、どうしてそうなった!?


「ユラリ殿っ!?」


 なにがどうなっているのかわからない。

 アフヨウの犯人を追いつめたと思ったら、いつの間にか俺がアフヨウを密輸した張本人になっていた。


 辻斬りのときみたいにまた疑われてるのか?

 俺を捕らえにきた同心が叫ぶ。


「捕らえろぉぉぉぉぉっ!」


 俺は抵抗せずに捕らえられた。

 

「ユラリ殿は何もしていない! 某と共にアフヨウ密輸犯を追っていたのでござるよ! 今すぐ解放するのでござる!」


「リンドウ。俺は大丈夫だ。前みたいに何かの間違いだよ」


 だって本当に俺何も悪いことしてないもの。

 ちゃんと調べてくれれば分る事だ。

 ここは大人しく捕まったほうがいい。


 それから俺は数日間東町の牢屋敷に厳重に監禁された。

 俺が脱獄するのを防ぐ為かこれでもかと念入りに俺の自由を奪う。


 魔物を入れる為に製作されたアダマンタイトという硬い金属でできた檻の中に、術を使えなくさせる手錠。


 さらにこれまたアダマンタイト製のでかい球体を、足枷として両足に鎖で繋がれてしまった。


 妻達との面会も許されず数日間を牢の中で過ごしていると、ギンコが忍び込んできて俺の様子を聞いてきた。


「師匠。ご無事ですか?」


「心配ない。身体には異常はないよ」


「我にできる事があればなんなりと」


「そうだな……ちょっとマコトと協力して情報収集をしてくれないか?」


「お安い御用です。して、どのような情報をお望みですか?」


「それはな……」


 俺はある事を調べるように頼み大人しく牢の中で待った。

 たまにリンドウが俺の様子を見にきてた。


「ユラリ殿。申し訳ござらぬ。某が東町奉行に掛け合っているが話を聞いてくれぬでござるよ」


「気にするなリンドウ」


「しかし……」


「俺の事は心配するな。俺は俺でなんとかしてみる。お前は自分の信じる正義を貫けばいい」


「某の正義……」


 俺はいつ取り調べが行われ弁解の機会が与えられるのかと、牢の中でさらに数日待っていた。

 ようやく奉行からお呼びがかかり、俺は手錠や足枷をつけたままお白州へ連れていかれる。


 しかし、東町奉行から開口一番言い渡されたのは獄門ごくもんの刑、すなわち死刑の宣告だった。


 獄門ごくもんとは、庶民に科されている死刑の一つで、斬首刑の後、刎ねた首を台に載せて3日見せしめとして晒しものにする公開処刑の刑罰だ。

 付加刑として財産は没収され、死体の埋葬や弔いも許されなかった。


 俺は再び牢の中へ戻された。

 そこで俺はずっと考えていた。

 ギンコやマコトに調べてもらった情報や、今までの出来事と断片的な幾つかの証拠から、ある事実が浮かび上がる。


 それはイワクラが言いかけていた『あのお方』の正体だった。

 そいつが俺を陥れた張本人という事だ。




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