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第一回、妻会議開催

 



 ※ペティ視点


=====

 午前零時三十分

=====


 旅館のお客さんや従業員が寝静まったある日の深夜。

 従業員寮の私の部屋では、ご主人様の奥さん達だけが集まって会議が始まりました。

 その名も『第一回妻会議』というんです。


「皆さんにこんな時間に集まって頂いたのは他でもありません。今日はユラリ様と夫婦生活を送る上で大切な事を話し合わなければなりません」


 この会議の司会進行役は美人で気が利くセルフィナさんです。

 今日のセルフィナさんも綺麗だな。

 私もセルフィナさんみたいに強く優しい大人の女性になりたいな。

 でも、今日のセルフィナさんはちょっと真剣な表情になってる。


「アサハナさん以外の方々は既に何度もユラリ様との夜を経験なさっているかと思いますが、懐妊された方はおられますか?」


 え? 懐妊って妊娠するって事だよね。

 そっか、ご主人様と夜に気持ちいい事すれば子供ができちゃうんだった。

 でも、ご主人様にはいままで何度も優しくしてもらったけど、妊娠してないのはどうしてかな?


 イチゴさんが手を挙げてる。


「はいどうぞ、イチゴさん」


「あたしは妊娠してないけど、それがどうかしたの? 子供なんてそのうち自然にできるものでしょう?」


「わたくしが王女として受けた教育の中に【夜伽の作法】というものがあるのですが、それによると避妊しない場合は一ヶ月から二ヶ月程で妊娠し、その兆候が早いうちに現れるとありました」


「そうなの? つまりここ四ヶ月ほどユラリと夜に抱き合っているあたしたちは、妊娠していないとおかしいという事?」


「はい。そろそろ妻のどなたかが妊娠している頃かと思ったのですが」


「わ、私もまだ妊娠してないと思います……たぶん私が下手なせいで……」


 いつもご主人様に良くしてもらっているだけなのが駄目なのかな。

 今度こういう事に詳しいセルフィナさんに、ご主人様にもっと喜んでもらえる方法を聞いてみないと。


「あたいにもまだその兆候はないです。セルフィナさんはどうですか?」


「カエデさんもですか……実はわたくしもまだなんです。という事は皆さんまだという事なのですね」


「それって、ユラリに原因があるという事?」


「それは分りません。もしかしたらわたくし達に原因があるのではと……」


 アサハナさんが腕を組んで唸りながら発言した。

 はわわ〜、腕を組むとアサハナさんの大きな胸が強調されてすごいな〜。

 私にもアサハナさんみたいな胸があったらご主人様をもっと喜ばせてあげられたのかな。


「う〜ん、たぶん原因はユラリさんであってユラリさんではないっすね」


「アサハナ? それはどういうことなの?」


「たぶんユラリさんが異世界からやってきた異者ことものだからだと思うっす」


「アサハナさん。その話を詳しく聞かせて下さいませんか?」


「もちろんっす。おいらも人ごとじゃないっすからね。東江の都では多くはないっすけど異者ことものの人達も暮らしているっす。おいらは仕事上妊娠できないで悩む夫婦の相談に乗るんすけど、その中に夫婦のどちらか片方が異者ことものだった相談も三組受けたっす」


 あ、それって今の私達と状況が似てるかも。


「そ、それで何がわかったんですか?」


「普通の夫婦に関しては生理周期を意識したり、栄養のある物を食べさせたりしてほぼ全ての夫婦が妊娠できたんすけど、夫婦のどちらかが異者ことものだった場合、何をしても子供はできなかったっすよ」


「……それはつまり、異者ことものであるユラリ様はこの世界では子供を成せないという事ですか?」


「たぶんそうっすね。これはおいらの推測なんっすけど、異世界からやってきた異者ことものは、この世界のことわりの外にある存在だからだと思うんす」


「世界のことわりの外にある存在……ですか。あたいには難しい話しです」


「たしかにユラリはこの世界にきて老化しなくなったって言ってたわ」


「あ、この前旅館に宿泊してたご主人様のお友達のチドリさんも、昔の姿のままって言ってましたよね」


「あたいの知る異者こともののイメージは、誰にも使えない特殊な能力を持っている事くらいです。そう考えると確かにユラリさんは人族なのに魔物のスキルを使える特殊な人ですね」


「みなさんの言う通りっす。老化せず人智を超えた異能を持つ存在。だからこそこの世界の住人であるおいら達とは夜に愛し合うことはできても、子供まではできないんじゃないかと考えてるんすよ」


「……確かにアサハナさんの考える通りかもしれませんね。異世界から来たユラリ様はこの世界に異物として認識されているのかもしれません」


「え!? そ、それじゃあ一生ユラリとの間に子供が産まれないの!?」


「残念ながらそうなるっすね」


「そ、そんな……ねえアサハナ。何か解決策はないの?」


「おいらは医者っすから異世界の事とか異者ことものの身体の事とかまではどうしようもないっす」


「う、そう、よね……」


 イチゴさんがかなりショックを受けたみたい。

 すごく悲しそうな顔してる。

 その気持ちは私もわかる。

 だって大好きな人との間に赤ちゃんができないのは辛いよね。


「イチゴさん。諦めるのはまだ速いかもしれませんよ」


「え? セルフィナさん?」


「セルフィナさんは何か思いついたんすか?」


「イナンナさんの話しを思い出したんです」


「イナンナちゃんの? あ、そういえばご主人様の世界に行って長い間暮らしていたんですよね?」


「そうです。わたくしはイナンナさんに、世界を超えた事で体調を悪くしませんでしたかと聞いたんです」


「それでイナンナはなんて答えたの?」


「何も変わらなかったと。体調だけでなく特殊なスキルも何も増えていなかったとおっしゃっていたんです。それに彼女は向こうの世界で成長しています」


「それってつまり、ご主人様の世界へ私たちが行っても、その世界の異物にはならないって事かな?」


「ペティさんの言う通りだと思います」


「じゃああたし達がユラリの世界に行けば子供が産めるって事ね?」


「そういう事っすね」


「あたいはユラリさんの世界に行けるならすぐにでもいきたいです。この世界にない食材や料理が沢山あると聞いたので」


「おいらも行ってみたいっすよ。らすべがすっていう賭け事だらけの都があるらしいっすから」


「わたくしも同感です。ユラリ様の暮らしていた町で子供を沢山もうけて、死ぬまでユラリ様の側にいたい……。それには世界を渡る手段を探さないといけませんけれど」


「世界を渡るなんて事できるの?」


「ご主人様がこの世界にこれたんですから、私達が他の世界に行く事だってできると思います!」


「あたいもそう思います。諦めずに探し続ければきっと」


「そうですね。ですけれど世界を渡る手段についてはわたくし達だけで調べたほうが良さそうですね」


「それはどうしてなの? ユラリに協力してもらえれば調査も捗ると思うわよ」


「あ〜、私はどうしてかわかっちゃいました」


「え? どうしてなのペティ」


「だってご主人様の事だから、この話をすると子供ができない事を自分の責任だと感じて悩んで、いつもみたいにがんばりすぎちゃうと思うんです」


「た、確かに。ユラリはあたし達の為なら左腕を犠牲にするくらいだから」


「その通りです。ユラリ様に負担をかけないよう、私達にできる事は私達でするべきでしょう。それが夫を支える良き妻というものです」


「おいらも賛成っす。ユラリさんがまた無理をして右腕まで使えなくなったら、せっかくユラリさんに揉んでもらう為に大きくしたおいらの胸も、意味がなくなるっすからね」


「あたいもユラリさんにはずっと元気でいて欲しいです。あたいの料理を死ぬまで食べたいって言ってくれたから……」


 みんなご主人様の事がすごく好きなのが伝わってくる。

 ご主人様を好きな人が増えると私も嬉しくなるのはどうしてかな?


 それからセルフィナさんが会議の内容をまとめてくれて、この日の『第一回妻会議』は終わりました。

 ご主人様の為にも今まで以上にがんばらなくちゃ!




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