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現状報告

ヒラガのスキルを修正しています。

ご確認下さい。

【高速醸造】→【高速酒造り】

 



=====

 地上生活、百六十二日目。

 午前七時五分

=====


「ではこれから朝礼を始める。賭場や喫茶店が完成してから約二週間になる。それぞれの担当者から現状報告して欲しい」


 俺と旅館の各部門の代表者達が集まり毎朝恒例の朝礼が始まったところだ。

 各部門の従業員も増えてきたので、ここでおさらいをしておこう。


=====

 ◆副支配人:セルフィナ

 ◆経理:イチゴ

 ◆仲居頭:ペティ

 ◆仲居頭:ファンタゼシル

 ◆料理長:カエデ

 ◆掃除洗濯:ギンコ

 ◆宣伝営業:マコト

 ◆警備:イナンナ

 ◆賭場:アサハナ

 ◆喫茶店:モミジ

 ◆庭師:エウロピス

 ◆施設維持管理:ツクモ

 ◆酒造り:ヒラガ

 ◆髪結い:ストレンジレッドの予定

=====


「はい! 賭場担当のアサハナっす!」


 始めにアサハナが手を挙げて報告を始める。


「始めの一週間は周知が不十分だったのかお客さんはまばらでしたっすけど、一週間過ぎたあたりから急に混雑して来たっす。今のところはお客さんも楽しく遊んでいて問題ないっすよ」


「そうか。マコトがトラキチ親分に掛け合ってくれたおかげで、賭け事が好きな客も来てくれるようになったからな」


「宣伝ならボクに任せてくださいよ! 今日も都の大通りで賭場や喫茶店の宣伝をする予定です。ボクも給料分はしっかり働きますからね!」


「頼むよマコト。それで喫茶店はどんな調子だ? モミジ」


「ふんっ。仕方ないわね、仕事だから報告してあげるわ。わたしの喫茶店では甘味を中心に軽食やお茶を出しているけど、売り上げのほとんどはお茶ね」


「ん? 本来の目的である甘味は売れていないのか?」


「そうね。今は夏だから水羊羹や氷菓子などの日乃光菓子が中心だけれど。大陸の冷たい菓子もそれに加えたほうがいいかもしれない。東江の都には日乃光菓子の美味しい店はすでに沢山あるもの」


「なるほどな。確かに言われてみればその通りだ。モミジは大陸の菓子も作れるよな?」


「あたしを誰だと思ってんの? できないわけないじゃないの! わたしは世界料理戦技大会決勝まで残った料理人よ!? その意味も理解できてないなんて、やっぱり料理人じゃない人がカエデ姉の夫になるのは間違いなのよ」


 カエデはモミジに強めに注意した。


「モミジ! ユラリさんになんて事を言うの!?」


「で、でも、カエデ姉……」


「ユラリさんはね。この旅館で飛び込みで働こうとしたあんたを快く迎えてくれたばかりか、あんたに喫茶店を任せてくれてるんだ。あんたの料理人としての腕を見込んだからこそだろう?」


「そ、それは……その通り……ね」


「いいよカエデ。俺が料理に関して素人なのは事実だ。モミジの言う事も間違いじゃない」


「でもユラリさん……」


「喫茶店のお品書についてはモミジに一任する。お前の思うようにやってくれ」


「え、あたしなんかにそんな大事な事を任せてもいいの?」


「ああ。お前は俺を認めていないようだけど、俺はお前の能力を評価してるから任せる。お前ならやれるさ」


「……お人好しな総支配人ね」


 モミジは朝礼の途中なのに事務室を出て行った。

 顔が少し赤くなっていたように見えたけど気のせいだろ。


 俺は一週間前に旅館の従業員となったヒラガに声をかけた。


「ヒラガの研究室兼醸造室はどんな調子だ?」


「うむ。昨日醸造樽の組み立てが終了し今日から酒造りの仕込みが始まる」


「よし。予定通りだな。俺が教えた通りの酒はできそうか?」


「結論から言うと全て醸造可能だ。確か名前は焼酎、日本酒、ビール、ラム、ワイン、ブランデー、ウイスキー、ウォッカ等とまだ他にもあったな。それにしてもあのように様々な酒の造り方を何処で知り得たのか不思議でならない」


「まあ、その辺は内緒だ。客に出せるようになるにはどのくらいかかる?」


「うむ。ビールという酒は三日、ウイスキーでは一ヶ月というところだな」


「み、三日に一ヶ月!? めちゃくちゃ早くないか?」


「我が輩には酒の完成を早める【高速酒造り】というスキルがあるのだ。我が輩の元いた世界のドワーフ族の間では常識なのだよ。そうしなければ我が輩達の飲む酒が無くなってしまうからな」


 あ〜、酒好きのドワーフは浴びるだけ飲むっていうからな。

 そうしないと酒の消費量に対して供給が間に合わないんだな。


 それにしても通常は完成まで十二年はかかるウイスキーが一ヶ月で飲めるようになるって、馬鹿みたいに早いよな。

 それだけドワーフ達は馬鹿みたいに消費するって事だ。


 ドワーフ族は俺のイメージを数段超える大酒飲みの種族だな。

 まあ、酒の完成が早いのはこの旅館にとって好都合だからいいけどさ。

 すぐに客に様々な酒を振る舞えるならそれに越した事は無い。


 この世界の酒文化は思ったより発達していない。

 日乃光の国では日本酒の味に近い濁った純米酒が一般的で、大陸から輸入されてくる酒を見てもワインしか無い。


 という事はこの旅館で個性豊かな酒を飲めるとあれば、日乃光中や大陸中から酒好きが集まるに違いない。


 酒の製法を盗まれないよう注意しないとな。

 まあ、この旅館はイナンナに警備を任せているから不法侵入できる奴はいないだろうけどさ。


 そういえば最近イナンナの元気がないな。

 始めは長い眠りから目覚めたばかりで本調子じゃないと思っていたけど、そうでもないらしい。


 やっぱり、イナンナがこの世界に来た理由と関係があるのだろうか。

 後で腹を割って話をする必要があるだろう。


 イナンナからどんな話をされるにしても、俺が彼女にして上げられる事は何でもするつもりだ。

 もうイナンナは俺の、そして俺達の家族の一員なんだから。



 俺は従業員達から身長が頭一つ高いストレンジレッドに声をかけた。

 彼女の名前は長くて言いにくい為、勝手にストレッドと省略して呼んでいる。

 彼女も許可してくれたのでこのままの呼び方でいいだろう。


「ストレッド。口入屋での職業訓練は順調か?」


「問題ない。現在髪結いの訓練は最終フェイズに入っている。私の能力を活かせる時も近いだろう」


「そうか。そのまま続けてくれ」


「了解した」


「後は……ファンタ。ここでの仕事にはもう慣れたか?」


「もちろんですわ。ペティには負けていられませんもの!」


「ファンタちゃん。がんばりすぎて病気にならないでね」


「体調管理するのは仲居頭として当然ですわ。心配はありませんわよ!」


 ファンタにはペティと同じく仲居頭として働いてもらっている。

 人数の増えてきた仲居達を二つのグループに分け、彼女達への指導や指示をこの二人に任せているんだ。


 だから自然とペティチームとファンタチームに別れて、いい意味でのライバル関係になっていた。

 緊張感を維持しつつ切磋琢磨する事で仲居の接客力がさらに上がるだろう。


 それから俺は朝礼を励ましの言葉で締めくくった。

 皆はそれぞれ自分の仕事に向かっていく。

 だんだんと旅館の設備やサービスも増えてきたな。


 目指せ! 一日の来客数、百!




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