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心の中で土下座




「なあ。その三十両、俺が肩代わりしてやってもいいぜ」


「ほう。それで代わりに何を我が輩に求める?」


「話が早くて助かる。お前ら二人一緒でいいから、うちの旅館で働かないか?」


「旅館? もしかして君は日乃光旅館の総支配人ユラリか?」


「ああ、よく分ったな。どこで俺の名前を?」


「借金取りに追われる毎日で食うに困り、口入屋へと職を探しに行った際に日乃光旅館の従業員募集を見たのだ」


「そ、そうか。なんか大変そうだな」


「誘ってくれるのは嬉しいが、我が輩は旅館の従業員として有用なスキルを持ち合わせていないのだが?」


「それなら心配ない。お前には酒を造って欲しいんだ」


「酒か……なるほど。旅館で出す酒類を充実させたいという事か」


 本当にこのヒラガは話が早くて助かるよ。


「そうだ。お前の残りの借金も旅館で働きながら返せばいい」


「うむ。それは良い。我が輩もここ三日は水しか飲んでいなかったので渡りに船とはこの事だ」


 三日間水だけか。

 借金だらけで金が無いとはいえ可哀想だな。

 俺は成金に向き直りスフィアカードを懐から出した。


「という事だ。ほら、こいつの借金の三十両、俺が払ってやるからお前のスフィアカードを出しな」


「うぐぐ……俺達は金さえ貰えれば文句は無い」


 成金男もスフィアカードを取り出した。

 二枚のスフィアカードを重ねて三十両の受け渡しを済ませる。

 成金男は借用書を俺に渡して来た。


「どこの商家のボンボンかは知らねえが、その二人を囲っても良い事はねえぜ。東町では有名な金喰い発明家とはこいつの事だからな」


 そう言い放った成金男は三人の用心棒を引き連れて去って言った。

 金喰い発明家?

 間違いなくヒラガの事だよな。


 ヒラガがお礼を言ってきた。


「君には感謝する。我が輩はヒラガ・ドルフ・ガンゲルート。発明家だ」


「発明家? 今までどんな物を発明したんだ?」


「何もない」


「え?」


「何も発明した事はない」


「それなのに発明家なのか?」


「我が輩の頭の中に構想は幾つもあるが何も形にできた事はない。発明するには莫大な研究費用が必要なのだ。今までは大きな商家に住まわせてもらい、研究費用を出してもらっていたのだが、いつも我が輩の発明品が完成する前に追い出されるのだ」


 開発のために資金を出してもらっても、完成する前に見切りをつけられて今まで何も成果を残せなかったんだろう。

 金喰い発明家って言われていたのはそういう事か。


 研究というのは時間のかかるものなんだよ。

 俺の親父が研究者だから分るんだ。

 親父は研究の為に文字通り人生の全てをかけている。

 それ位時間を費やさないと新技術なんて作り出せない。


 という事はこの二人は今宿無し金無しか頼れる者無しか。

 もしもヒラガの研究とやらが旅館の為になるものなら、俺のポケットマネーから資金を出してもいいけど、どんな物を研究してるんだろ。


「それで、どんなものを研究してるんだ?」


「最近では零石を動力にした術具や、からくり全般である」


「からくりか」


 う〜ん、どんな物かよくわからないな。

 急いでアウレナ先生に聞こう。


=====

◆からくり

種々のエネルギーを機械的な力または運動に変換することにより、それを動力とする機械人形や装置の事。

=====


つまり機械的な仕掛けを作ることができるんだな。

成金男が去った事で周囲の人混みは無くなっている。

俺がヒラガと話しているとセルフィナがやってきた。


「ユラリ様? この方達は?」


「ああ、この小さいほうはヒラガでそっちの背の高い方は……」


「私の固有名称はストレンジレッドです」


「彼女はセルフィナ。俺の旅館で副支配人をしてもらっている」


「ふむ。という事は彼女が我が輩達の上司となるのだな?」


「そういう事だ。セルフィナには負担をかけるかもしれないけど、このヒラガはこれから俺の旅館で働く事になった発明家だ」


「発明家ですか? それはまた個性的な従業員が増えて楽しくなりそうですね、ふふふっ」


「これからよろしく頼むよセルフィナ君。ほれ、お前も挨拶をしろ」


「私への命令権の一部をあなたに委譲します。指示をどうぞ」


「申し訳ない。ストレンジレッドは不器用なのだ。許してやって欲しい」


「気にしていませんよ。わたくしの方こそよろしくお願いしますね」


さてと、これからどうしようかな。

今の時刻は?


=====

 午後十二時三十一分

=====


いつの間にか十二時を過ぎてた。

セルフィナと一緒で楽しかったから二時間なんてあっという間だったな。

観賞魚市も一通り回ったし昼飯にするか。


俺達は近くのうなぎ屋で昼食をとる事にして四人で店の中に入る。

丁度昼時という事もあってそれなりに混んでいる。

それでもすぐに席に着く事ができた。


当然の事ながら客のほとんどはセルフィナの美貌に目を奪われている。

たぶん彼らのテンションはうなぎ登りに上がっている事だろう。


うなぎ屋だけに……。


お、結構上手い事言えたんじゃないか?

これはまた新しい冗談スキル獲得かも?

さあ来い!

俺の冗談センスもうなぎ登りに上昇中だぜ!


予想通りにアウレナの管理AIがスキル獲得を告げた。


=====

◆パッシブスキル【自信過剰】を獲得しました。

◆パッシブスキル【勘違い】を獲得しました。

=====


す、すんません!

お、俺、調子に乗ってました!

だからそれ以上変なスキルを獲得させないでっ!


俺が心の中でこの世界のスキルシステムに土下座していると、ヒラガが背中に背負っていた大きな箱を卸し座席に座る。


「なあヒラガ? その木箱はなんだ?」



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