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イナンナとの契約

 



「そうですね……空船の船員として働いてもらうというのはどうでしょうか?」


「空船の船員か……」


「はい。すぐにとはいきませんが。将来的には空船を使った日乃光国観光ツアーや、他国からの団体客の送迎、その他にも旅館の集客に繋がる企画を沢山できると思います。その為には空船に詳しい船員が必要かと」


「なるほどな。確かに今の旅館の従業員には空船に関わった事がある者はいないな」


イチゴも赤縁眼鏡の位置を指で直しながら意見を述べた。


「あたしもそれがいいと思う。今から船員を捜すとなると時間も費用もかかるし、船員として働くなら乗客には目立たない仕事も多いから丁度いいわ」


「ぼ、ぼぼ、ぼくも大賛成ですっ! 伝説の空賊が船員として働いてる事を売りにすれば、間違いなくお客さんが増えますよ! あっ!! 閃きましたよ! 『骸骨達が蠢く禁断の巨大空船の中では、夜な夜な大勢の男女が禁断しながら入り乱れた。そこはあたかも美しい禁断の花が咲き乱れる淫美な花園!』 どうこれ?」


「き、禁断はともかく、俺としてはこいつらに裏方の目立たない仕事をして欲しいな。旅館の従業員に骸骨がいるなんて噂になったら、客が怖がって寄り付かないからさ」


「で、でもお兄さん! 伝説のキャプテンバンジー空賊団ですよ!?」


 マコトの尻尾がこれでもかという程に回転している。

 かなり興奮しているようだな。


「だとしてもだよ。こいつらは死人の記憶が再現されているだけで、実際は生き返っているわけじゃない。それにこの日乃光の国では骸骨を縁起の悪いものとして考える人も多いしな。その辺は元瓦版屋のお前なら知ってるだろ?」


「た、確かに……。お兄さんの言う通りですね。すみませんでした。なんか舞い上がっちゃって……ははは」


「俺様は空船で働けるのなら願ったり叶ったりだぞ。地面より空の上で生活している方が落ち着くからな! ふはははははっ!」


「船長。いかした空賊を気取るのもいい加減にして下さい。空の上で一週間も過ごすと『持病の地面を踏みしめたい病が!』とか言うんですから」


「うはははははっ! 俺様は空で暴れ大地に抱かれて眠るスケールの大きい男なのだ!」


 空船を動かすには大零石を取り込んだイナンナがいないと駄目だ。

 こいつらはイナンナの僕だから、彼女の近くに置いておけば問題を起こす事もないだろう。


「そうか。じゃあ決まりだな。イナンナはこいつらの面倒を見てくれ。それに引き続き旅館の警備も頼むからな」


「うん、わかった。ユラリの幸せはイナンナが守る」


 マコトが怪訝な表情でイナンナの全身を舐めるように観察している。


「というか本当にイナンナちゃんなんですよね? 身長も少し伸びて表情も豊かになってるし、認めたくはありませんが胸もぼくより少し大きくなりましたよね」


「ユラリの暮らしていた世界でいろんな人と出逢って、別れて、そしてまた出逢った。イナンナは沢山の人達から沢山の幸せをもらった。だから成長したんだと思う」


 イチゴが机に身を乗り出した。


「人との出会いは胸を大きくするって言った!?」


「うん?」


「あたしも沢山の人と出逢えば……きっと……」


 会議はそこで終了し、みんなにはそれぞれの仕事に戻ってもらった。

 イナンナが俺の着物の袖をひっぱった。


「ユラリ」


「どうした?」


「契約したい」


「え、契約って【守護者任命】の事だよな?」


「うん」


「お前は契約しなくても十分に強いし、旅館の役にも立ってる。だから無理にしなくてもいいんだぞ」


「無理じゃない。イナンナはユラリと契約したい。そして妻になりたい」


「つ、妻に!? その意味を分ってて言ってるのか?」


「分ってる。地球でいろいろ学んだ。その為にユラリの事をずっと待ってた」


「そ、そうか。妻になるかどうかは一先ず置いといて。一度守護者になってしてしまうと元の身体には戻れないぞ。本当にいいんだな?」


「うん。ユラリはイナンナの幸せ。死ぬまで一緒にいたいから」


「わかったよ。俺もイナンナとはずっと一緒にいたいからな」


「うん」


 イナンナは嬉しそうに微笑み頬を赤く染めている。

 本当に感情豊かになったな。

 こんなに可愛いイナンナにしてくれた、彼女が今まで出逢ってきたという人々に感謝しないと。


 というか俺の中ではイナンナなんだけどウトなんだよな。

 ん? ウトだけどイナンナか?

 あ、あまり深く考えるのはやめておこう。


 【守護者任命】は空船の甲板で行うことにした。

 俺とイナンナと骸骨二人は湖に戻り空船に乗り込む。

 甲板の真ん中に立った俺はスキルを使用する為に意識を集中させた。


 そういえばイナンナの本名は長かったよな。

 長過ぎて逆に印象に残っているからしっかりと覚えている。

 まあ大丈夫だろう。


 俺とイナンナは甲板の真ん中で向かい合う。

 周囲には五十一体の骸骨達が固唾をのんで見守っている。

 肉体はないから唾もでないけどな。


 さあ、始めるか!



「この者の名はイスカンシア・ナザリンディド・ンティピアット・ナーヴァタラマライテル。我が敵を刺し貫く剣となり、我を護り支える盾となれ! 我の元に集いし二十四守護者の一人として、ここに守護者契約を結ぶ! スキル【守護者任命】発動っ!!」


 イナンナの体はまばゆいエメラルドグリーンの光を発し宙に浮き、俺の中の力が彼女に流れ込む。

 名前も問題なく言えた。

 イナンナの額の位置に光が集束し、一枚のカードを形成していく。


 カードの中心には白い馬に乗る真っ黒い貫頭着を着ている少女。

 その少女の右手には漆黒の大鎌、左手には『死者』という題名の分厚い本を持っており、背後には屍人や骸骨の軍勢が地平の先まで列を成している。


「完全な終わりや別れ、死、物事が一度終了し何かがもう一度始まっていくことを意味する守護属性、死神のカード」


 イナンナの全身から放たれていた光は収まり、彼女は地面に着地した。


「……」


「イナンナ、身体の調子はどうだ?」


「……」


「ん? おい、大丈夫か?」


「理由……」


「理由?」


「イナンナがここに来た理由を思い出した」


「それって、天界からこの世界に来た理由だよな?」


「うん……イナンナは……」


 イナンナは俯き表情を暗くして言い淀んでいる。

 何か言い辛い事なんだろうか。


 そういえばイナンナと妖精の森で初めて出逢ったとき、アマルテアって人に幸せになれって言われたと話していた。

 この世界に来た理由にその人が関係しているのかもしれない。


「まあ今日は永い眠りから目覚めたばかりだろ? その話はまた今度でいいよ。話したくなったら言ってくれ」


「……」


 イナンナがこの世界にやってきた理由は気になるが、本人が言いたくないようだから無理には聞かないでおこう。


 それより、契約後のステータス確認をしなきゃだな。

 アウレナ先生の久しぶりの出番ですよ。

 一緒に分り辛いスキルの情報も表示だ。




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