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空賊団と造船所

 



「お、お前はキャプテンバンジーの骸骨っ!?」


 どうしてここにバンジーの骸骨がいるんだよ。

 船長室の椅子に座ってたはずじゃ!?

 それ以前に骸骨がしゃべってるし。

 異世界って本当にスゲー。


 俺は抱えていたイナンナを地面に下ろす。

 俺達が出て来た空船用の出口が閉じて完全にただの草むらになった。

 するとすぐに周囲を囲まれている事に気付く。


 なんだこの気配。

 まえに何処かで同じ様な気配を感じたな。

 確か妖精の森で戦った屍人と似ている。


「ほう。少年の【気配感知】は団員達の【気配遮断】を凌駕するか」


「団員達?」


「お前ら! 死んでから鈍ったんじゃないか? 少年に気配を悟られてるぞ!」


 バンジーの呼びかけに応じ、周囲の樹々の影から数十の武装した骸骨が俺達を囲むように姿を表した。

 その骸骨達の服装を見ると財宝部屋に埋もれていた船員の骸骨達だ。


「こいつら……お前の部下か?」


「ああ、その通りだ! こいつらは俺様と七つの空を股にかけ、共にお宝を盗みまくったキャプテンバンジー空賊団の団員達だ! うはははははっ!」


 こいつ、いちいち高笑いしないと気が済まないんだろうか。

 あんまり笑い過ぎると顎が外れるぞ。


「うがっ! あががあぐえがあごがはずれた!」


 ほれみろ!

 バンジーは自分で顎の骨を元に戻し咳払いをする。


「ゴホンッ!」


 すると紫色のバンダナを首に巻いた団員の骸骨がバンジーに話かける。


「船長……相変わらずですね。高笑いしすぎて顎が外れるのは死んでも変わらないようで安心しましたよ、そろそろ本当に引退したらどうです?」


「くはははははっ! ダイヴも相変わらずの物言いだな。高笑いは俺様のチャームポイントの一つだ。死んでも変わらないぞ!」


 俺はすぐにでも戦えるように構える。

 目的は何か知らないけど警戒しないとな。


「俺達を助けてくれた事には感謝するが、お前達の目的は何だ? まさか俺から金目の物を奪おうとか考えてんのか? 今の俺は財宝どころか金貨も持ってないぞ」


「ん? 少年は何か勘違いをしているな」


「勘違い?」


 その時俺達を取り囲んでいた骸骨達が全員跪いた。


「我らに第二の人生を与えて下さり感謝します。イナンナ様」


「イナンナだって?」


 俺はイナンナに振り向く。


「どういう事なんだ?」


「この骸骨達はイナンナの僕」


「もしかしてお前のスキル、【屍人招き】で?」


「違う。【屍人招き】は意思の無い屍人を招くもの。この骸骨達に使ったのは【冥府からの帰還】というスキル。このスキルは死体に宿る生前の記憶を甦らせて自分の考えで動くようにするもの」


「え、という事はこいつらは人格を持ってるのか?」


「うん。記憶の再現だから、実際に甦っているわけではないけど」


 なんちゅうチートスキルだ。

 骸骨なのは問題あるけど、擬似的に死者を復活させているようなものじゃないか。


「あの骸骨騎士達と同じようなものか?」


「あの子達は魔物。バンジー達とは別の存在」


「俺様達はイナンナ様の力により死骸に記憶が宿っただけのまがい物。しかし、生前の記憶がある以上甦ったも同然なのだ! ぶはははははっ!」


「船長。そんなに笑うとまた顎外れます」


「おお、そうだったな。おほ、おほほほほほっ」


「船長。貴婦人っぽく笑うのキモイんでやめてもらえませんか?」


「おほっ? という事だ少年よ。これから我らキャプテンバンジー空賊団をよろしく頼むぞ! うはっ……おほほほほほっ」


「え、よろしく頼むってどういう事だ? 話が見えないんだけど?」


「それはイナンナが説明する。【冥府からの帰還】で甦った死者の記憶は、術者が死ぬか亡骸が完全消滅するまで消えない。だからそれまでずっと亡骸のまま動き続ける」


「は? という事は何? お前ら俺の旅館にやっかいになろうとか考えてるの?」


「俺様が少年の為に働いてやろうというのだ。光栄に思ってもいいぞ!」


「船長。そこは威張るところじゃありません」


 俺は周りの骸骨達を見回す。

 バンジーを含めて五十一体の骸骨。


 いくらイナンナの僕で言う事を聞くといっても骸骨だからな。

 旅館の従業員に骸骨が混じっていたら客は怖がって来なくなるよ。

 かといってここに捨てていくわけにもいかないしな。

 どうすればいいんだよ。


 俺はふと上空を見ると他国との貿易から帰ってきた空船が、着陸しようと高度を下げているところだった。


 そういえばここって東町の外れにある海沿いの林の中だ。

 という事は空船発着場の近くだな。

 オウカの話では俺が報酬として貰い受けた新造の大型旅客空船が、発着所近くの造船所に格納されているらしい。


 その空船で旅館まで帰れば楽でいいな。

 だけど骸骨達は目立つから造船所には連れて行けない。

 仕方が無いから空船を操縦できるイナンナだけを連れて造船所に行くか。


 その大型空船に骸骨の団体さんを乗せて旅館まで帰れば、都の人々を怖がらせないで済むだろう。

 細かい手続きはまだしてないけど空船は俺のものなんだし大丈夫だよな。

 旅館に帰ったら骸骨達の処遇をみんなで考える。



 それから俺とイナンナは空船の造船所に向かった。

 波が岸に打ち付ける音やカモメの鳴き声が聞こえる。

 すぐ近くに浜辺があるんだろう。


 造船所に入るとすでに完成していた大型空船が格納されていた。


「おいおいおい。なんだこの豪華で大きな空船は……」


 造船所にあったのは全長は二百メートル、横幅三十メートル程の空船。

 空中分解してしまったバンジーの空船と同じくらいの大きさだな。

 日乃光国が所有する軍艦の全長は約百メートル程だから、二倍は大きい事になる。


 その空船全体は白く塗装され、上品に和風な意匠で装飾されている。

 旅客空船という事で砲門は無いが客室の窓は幾つも見える。


 俺はこの船の管理を任されている役人を探し出し、オウカからもらった家紋入りの印籠を見せて事情を説明した。


 俺達は空船に乗船し操舵室へと向かう。


「じゃあお願いするよイナンナ」


「うん。わかった。【空船浮遊】、【空船操舵】」


 イナンナの全身からエメラルドグリーンの光りが放たれる。

 バンジーの船を浮かせた時のように空船は徐々に浮上した。


 造船所の巨大な扉が開き、俺の空船はゆっくりと外に向かって進み始める。


「よし。問題なく操船できているようだな」


 俺は光り輝くイナンナの様子を伺った。

 目をつむり浮遊と操船に意識を集中させているようだ。

 イナンナは目をつむっているけど周囲が見えているんだろうか。


 そういえば空船が造船所を出る時に何処にもぶつからなかったな。

 もしかすると何らかのスキルの効果で見えているのかもしれない。

 このままバンジー達の待つ林まで行ってもらおう。


 俺はイナンナにバンジー達のいる林へ進路をとるように指示した。

 それからバンジー達を空船に乗せ旅館に向かう。


「おおっ! おいダイヴ! 海だ! 海だぞ! 海が見えるぞっ!」


「見れば分ります。海ぐらいではしゃがないで下さい」


「お前は感じないのか!? 無限の可能性に満ちる大冒険の香りをっ!」


「それはただの塩の香りです。そういう熱苦しいのはずいぶん前に卒業しましたので」


「ダイヴは相変わらず冷めてるな。面白くない! 面白くないぞ! だはははははっ! お前にもいずれ分る時がくるだろう男のロマンってやつがな!」


「はぁ……一度死んでも本当に相変わらずですね船長は。もう一回死んだら少しはまともになりますかね?」


 ダイヴと名乗った紫のバンダナの骸骨は俺に答えを求めて来た。

 頼むから俺に振らないでくれ。


 そうこうしているうちに空船は旅館の敷地上空に到着した。

 歩きだと三時間はかかるんだけど東町からここまで約三十分しか経っていない。

 空船での移動は早くていいな。


 旅館の周辺には大型空船が着地できる発着場はないので、敷地内の湖に着水させることにする。

 空船は淡水や海水に着水しても大丈夫なように設計されているので心配は無い。


 俺はイナンナとバンジーとダイヴだけを連れて旅館に戻る。

 他の団員達全員を連れて行くと目立ってしまうからな。

 俺達四人は人目につかないよう用心しながら事務室に入ると、セルフィナとイチゴ、それにマコトがいた。


「お帰りなさいませユラリ様」


「セルフィナ。【念話】で一通り伝えた通りだ。紫の軍服を着ているのはバンジー。こっちの首に紫のバンダナを巻いているのはダイヴっていうんだ。他にも同じのが四十九人いて」


 俺とセルフィナの会話を遮ってバンジーがセルフィナの前に跪く。


「なんとお美しい娘さん方だ! 俺様の名はバンジー。キャプテンバンジーとは俺様の事だ! 以後お見知りおきを。くはははははっ! というか俺様の妻になってくれ!」


「え、あ、あの……お気持ちは嬉しいのですけれど、すでにわたくしはユラリ様と夫婦の契りを結んでおりますし、ユラリ様以外の殿方の妻になる気は一切ございません。申し訳ないのですがお断りさせて頂きますね」


「な、なんとっ! すでに結婚されていたか! それならば俺様を下僕にっ! 使いっ走りにっ! 玄関マットのように足げにっ!!」


 ダイヴはどこから取り出したのか、スリッパでバンジーの頭蓋骨をパンッ! と良い音を響かせて叩いた。

 バンジーの頭蓋骨が横に高速回転している。


「目〜が〜回〜る〜」


「私の名前はダイヴ。この五月蝿い船長の尻拭いを仕事にしています。うちの船長がウザく感じる事が多々あるとは思いますが、どうか我慢してやってください」


「愉快な船長さんなのですね」


 セルフィナが美しい笑顔で微笑みかけたのとは対照的に、イチゴは顔を引きつらせて後ずさる。


「頭の骨が回転してる!? ほ、本当に骸骨なのね……それに会話ができるのも驚きだわ」


 今度はイチゴとは対照的に、マコトが目を輝かせ尻尾をヘリコプターのように高速回転させて骸骨二人に詰め寄り、息継ぎ無しの早口でまくしたてる。


「うわっ! キャプテンバンジーとダイヴといったら伝説の大空賊の船長と副長じゃないですか!? ぼくはキャプテンバンジーの冒険物語が大好きで、小さい時からよく貸本屋で借りてたんですよ! ドラゴンを倒した事があるっていうのは本当なんですか!? 雲の上に浮かぶ幻の浮遊遺跡にも入った事があるって本当なんですか!? 大昔に勇者が使ったとされる聖剣を盗み出したというのは本当に本当なんですか!?」


 バンジーは回転していた自分の頭蓋骨を手で押さえてから腰に両手を起き胸を張る。


「そうかそうか、俺様達が伝説になっていたか! なにせ超絶凄い俺様だからな。伝説になるのも当然だな! ふはははははっ! 」


「船長。あまり胸を張ると腰の骨がポッキリいきますよ」


 こいつらをどうするかセルフィナ達に意見を聞いてみよう。


「という変な奴らなんだけど、どうしたらいいと思う?」




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