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財宝と大零石

 



「うおっ!! 、す、すげぇ……」


「キラキラ、沢山」


「わっ! わわわわ! すごいでふ! 本当に財宝があったでふっ!! き、金貨もザックザク、ザクザックでふよっ!! この金貨、た、食べてもいいでふよね?」


「あ、ああ。こんなにあるんだ。好きにしろ」


「やたーっ! でふっ!!」


 ほ、本当にあったよ。

 この財宝部屋の広さは学校の体育館四つ合わせたくらいの広さだ。

 こんなに広い部屋の中に金貨や金製品だけでなく、宝石や高級そうな調度品の数々、それに絵画や彫刻などの芸術作品も山積みだ。


 強そうな武器防具や妖しい術具なんかも沢山転がっている。

 これだけあれば妻達と一生働かずに暮らしてもお釣りがくるな。


 お? 財宝に埋もれるように骸骨もあるぞ。

 数は数十ってところか。

 この骸骨達の服装を見るに空賊団の船員だろう。


 何処かにキャプテンバンジーの骸骨もあるはずだ。

 俺の頭にタライを落とした罰として額に落書きしてやる。

 『愛』って書いてやる!


 まてよ、それだと俺がキャプテンバンジーを愛してるみたいだな。

 やっぱりやめにしよう。


 俺は財宝部屋の中を見回す。

 船員達の骸骨しかないな。


 もしかしてキャプテンバンジーの骸骨は空船の中かもしれない。

 船長なら自分の船の上で人生の最後を迎えたいと思うだろう。

 この財宝部屋の奥にまだ道が続いている。

 二人を連れて船を探しに奥に行ってみるか。


「おい、二人とも。まずはお目当ての大零石を探しに行こうぜ」


 イナンナを見ると何かを見つけたのか大きな宝箱に頭を突っ込み、可愛いパンツを丸出しにして足をバタバタさせている。

 一方ツクモはというと、こいつも金貨の山に頭を突っ込んでいた。

 金貨を食べているんだろう。


「まあいっか」


 俺は一人で財宝部屋を通り過ぎ、奥の通路を進んで行く。

 しばらく進むと真っ暗な場所に出た。


「ここは……?」


 ここには『逆さ光茸』が生えていないようだ。

 という事は人工的な空間か。

 それに俺の声が反響しているから、それなりに広い空間だろう。

 ん? あれは何かの術具?


 これってたぶん、この場所の照明スイッチだな。

 俺はその装置に術具を使う要領でMPを注ぎ入れてみた。

 すると今まで暗闇だった空間に光りが灯され、ある物が姿を照らした。


「やはりあったな。大型空船!」


 そこには地面に着地していてボロボロの大型空船があった。

 船首から船尾まで約二百メートルくらいの巨大船。

 元々船体の色は白だったのだろう。

 塗装が剥げているけど全体的に白っぽく見える。


 俺は大零石を探すべく、空船の底に開いていた穴から船内に入る。

 ここは船底か。

 想像以上にボロボロだな。

 やっぱり三百年前の船体は再利用できないか。


 俺は腐っていて踏み抜きそうな床板に注意しながら船内を歩き回る。


 そういえば俺って空船の零石がどこにあるか知らないな。

 オウカに前もって聞いておくんだった。

 仕方が無い。

 しらみつぶしに探して行くか。


 俺はそして三十分程船内を大零石を探しまわった。

 船員の寝室や食堂と思われる場所。

 空っぽの倉庫や動力室らしき場所も見つけた。


 「たぶんここが動力室だろうけど、この世界の術具や装置の知識が皆無な俺には何が何やら……」


 動力室を奥に進むと球体を設置してあったと思われる装置を見つけた。

 しかし目的の大零石は設置されていないようだ。


「ここにはめ込む窪みがあるから、本来ならここにあるはずなんだけど、どこにもっていったんだよ。仕方ない。上も探すか」


 俺はさらに船内を探し続け甲板に出る。

 それから操舵室に入り、さらに奥へ進むと豪華な内装の部屋を見つけた。


 たぶんここが船長室だろう。

 内装が豪華で高級感を感じる。

 そこには俺が探していたものがあった。


「あ、見つけた!」


 宝石のエメラルドのような明るく爽やかな緑色に艶めく、直径二メートル程の美しい球体。

 間違いなくこれが大零石……だ、ろう……?


 俺は目的の物を見つけた達成感を感じる間もなく自分の目を疑った。

 なぜなら、その大零石の中には膝を抱えて目をつむる全裸のイナンナが入っていたからだ。


「え、え? どうしてこの中にイナンナが入ってるんだ……?」


 イナンナはさっきまで財宝部屋にいたはず。

 俺より先にここまで来て大零石の中に入った?


 いやいや、そもそもここまで一本道だったし、この中に入る意味もわからない。

 そこまで考えた時ようやくある事に気付く。


「もしかして……ウト、なのか?」


 よく見るとイナンナより身長が少し高く、俺の記憶の中にあるウトの印象そのままだ。


「まじかよ……。この中に転移してたのかよ。ウト……」


 俺はどうにかしてウトを大零石の中から出せないかと、大零石の表面に触れてみたけど、その表面は硬く冷いだけで何の変化もない。


 どうすればいいかわからない。

 壊すか?

 いや、それはだめだろう。


 もしも転移の影響で身体が大零石と融合してたら、割るとウトも同時に粉々だ。

 下手に壊さない方がいいな。

 この世界には様々なスキルがあるから、もしかしてウトを助けられる特殊なスキルもあるかもしれない。


 俺は冷静さを取り戻し周囲の状況を確認した。

 エメラルドグリーンの大零石の背後には古ぼけた机があり、その奥には椅子に座る骸骨が見えた。


 俺はその机に近づく。

 椅子に座る骸骨は濃い紫色の軍服のような服装だ。

 頭には海賊映画でよく船長が被っている黒い三角帽子というやつだ。

 何かの鳥の羽飾りもついている。


 たぶんこいつがキャプテンバンジーだな。

 財宝部屋の骸骨達より上等な服装だ。

 その骸骨の腹の位置には、直径三十センチ程の象形文字が刻まれた球体が大切そうに抱えられている。


 え、これってスフィアじゃないか?

 親父の研究室で見た、光りを放つ前のスフィアだよな。

 どうしてこいつがスフィアを持っているんだ?


 大零石の中のウト。

 光を失ったスフィア。

 それにキャプテンバンジーか……。


「ん? 本が一冊置いてある」


 骸骨の前の机にはホコリを被った分厚い本があった。

 もしかして航海日誌じゃないか?

 海賊の出てくる映画では、船長の骸骨の側によくあるやつだ。


 あ、でも俺、島文字読めないんだった。

 航海日誌を持って帰って、後でツクモに解読してもらうか。

 そう思って本のホコリを払ってから手に取り表紙を見て驚いた。

 なんと日本語で『俺様の航海日誌』と書かれていたんだ。


「に、日本語っ!?」




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