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湖へ行こう

 



 地上生活、百三十七日目。


== 8時32分 ==


 朝礼を終えた俺は、オウカからもらった財宝の在処を記した古文書を【食料庫】から取り出し、事務机の上に丁寧に置きゆっくりと広げた。

 経理仕事をしていたイチゴが興味深そうに古文書を眺めている。


「ねえユラリ。なんなのこの虫食いだらけのボロ紙」


「オウカ姫からもらって来たんだけど、宝の地図だってさ」


「ふ〜ん。そう」


「なんか反応悪いな」


「そういう地図ってよくあるのよね。殿様が秘密裏に隠した埋蔵金の在処だの、伝説の空賊が隠した財宝の地図だの。土産物屋とか古美術を取扱う店に沢山売ってるわよ」


「え、まじか」


「あたしはたまに掘り出し物がないか店に行ったりするんだけど、いままで見た宝の地図は複製どころか全部偽物だったわ」


「イチゴの【観察眼】を使ったんなら間違いないだろうな。という事はこの古文書も偽物かもな。念のために本物かどうか見てくれないか?」


「いいけど、期待はしないほうがいいわよ」


 イチゴは古文書を見つめ集中している。


「その物の真の価値をここに示せ、【観察眼】!」


 イチゴの両目が淡く光を放つ。


「え!?」


「どうなんだ?」


「……本物、みたいね」


「え? じゃあオウカ姫の言っていた事って」


「嘘じゃないわ」


 よし! 俺もイチゴが【観察眼】で判断してくれるまで半信半疑だったけど、地図が本物だとしたら実際に宝があるという事だ。

 地図は本物でも財宝を見つける事ができるかは別だけどな。


 俺はツクモを【念話】で事務室に呼び出した。

 するとすぐにツクモが壁をすり抜けて現れた。


「なあツクモ。この古文書を【修復】してくれ」


「これまた古い巻物でふね〜。まあブーにかかれば朝飯前でふよ」


 ツクモは【修復】使った。

 虫食いだらけだった古文書の穴がみるみるうちに塞がり、完全な地図の絵柄が姿を現した。


「ふ〜。【修復】完了でふ!」


「おお。判別し辛かった地図がはっきりと見えるようになったな。ん? でもこの地図が表してるのはどこなんだ? イチゴは分るか?」


「……いいえ。あたしは価値は見抜けても古いものの知識は無いの。そういうのって古美術商や考古学者のスキルだから」


「それもそうか。ん〜、この地形……どこかで……」


「ユラリは地図も読めないんでふか?」


「む、じゃあお前はわかるのかよ」


「ふふんでふ! この地図は約三百年前の地図でふ。場所は、そうでふね〜……ちょうどこの旅館の周辺でふね」


「え!? 間違いないのか?」


「ぶーをなんだと思ってるでふか? ツクモガミでふよ。上位の魔物でふよ!」


「そういえばお前の年齢って三百十二歳だったな。だからその当時の地形も知っているという事か」


「その通りでふ! ぶーは長生きで偉いんでふよ。だから金貨を沢山貢ぐでふ!」


「わかった、わかった。それはまた今度な。それよりも空賊が隠したって言う財宝の在処もわかるのか? どうなんだ?」


「ん〜、財宝の隠し場所の入り口って書いてあるでふ」


「入り口か……それだけ分れば十分だな!」


「場所はこの近くの湖の中でふね」


「え? 湖? この近くに湖なんてあったか?」


 そのときちょうど事務室に入って来たイナンナが教えてくれた。


「イナンナ知ってる」


「本当か?」


「うん」


「イナンナ。そこまで連れて行ってくれないか?」


「わかった」


 今回はセルフィナの手を煩わせることはないようだ。

 今日は団体のお客が宿泊中だから彼女は忙しい。

 セルフィナの事だから俺のために喜んで手伝ってくれるだろうけど、だからといって何でもかんでも甘えるのはよくない。


 こういうトレジャーハントでは罠が仕掛けてあったり、魔物が出る場所を移動したりと危険が付き物だ。

 だからイチゴは旅館に残ってもらった。

 というかあまり興味なさそうだった。

 胸躍る冒険が俺達を待っているというのに残念な事だ。


 こうして有力な手がかりを得た俺とイナンナとツクモは旅館の北西にある林を抜け、さらにその先にある湖にやってきた。


「お! 見えて来たぞ!」


 俺達は遊歩道を歩き続け、林を抜けると開けた場所に出た。

 そこには透明度が高い水深十メートル程の湖があったんだ。

 湖の底まではっきりと見える程に透明度が高い。


 青空が湖の中に溶け込んでいるように、水深が増すほどに濃い青色になっていく。

 淡水魚も沢山いて太陽の日差しを反射し時々キラキラと光っていた。


「お、旅館近くにこんなに綺麗な湖があったんだな」


「イナンナは知ってた」


「そうなのか。よくここに来るのか?」


「水浴びしに来る」


「水浴びか。気持ち良さそうだな」


 イナンナはおもむろに服と下着を脱ぎ出した。


 イナンナは仕事以外では貫頭衣を着ている。

 貫頭衣とは一枚の布を二つに折り,折り目の中央に頭が通るだけの穴を開けて着る衣服で、ポンチョなどもその一例だ。

 

 イナンナと初めて出逢った時も着ていたけど、脱ぎ易い服が好きなようだ。


「お、おいイナンナ? まさか今から水浴びするのか?」


「うん。ユラリも入る?」


「いや、俺はまた今度にするよ」


「わかった」


 イナンナは全裸になり湖に飛び込んだ。

 俺は気持ち良さそうに泳ぐイナンナを草むらに腰掛け眺める。

 まあ、俺にとって宝探しは急ぎじゃないしゆったりやろう。


 それにしてもイナンナってば、俺の前で全裸になっても恥ずかしいという気持ちはないようだ。

 俺が自分の部屋で昼寝をしていると、たまに全裸で布団の中に入ってくるし、露天風呂に入ったあとに服を着ていると、女風呂から裸で走ってきて俺に抱きついてきたりする。


 その目的はもちろん俺の臭いをクンカクンカする為だ。

 ああ見えて人じゃなく神族だからな。

 人とは違う価値観を持っているのかもしれない。


 俺は改めて湖を見回す。

 旅館の周囲を散策した事がなかったから、こんな湖があるなんて気付かなかった。


 この湖も俺がオウカから知行でもらった土地だ。

 確か旅館の土地は一キロ平方メートルの広い土地だったはず。

 その広さはどの位かというと、有名なネズミさんの『ランド』と『シー』をたした位のひろさになる。

 そう考えるとかなりの広さだな。


 後で妻達を連れて来て一緒に水遊びをするのも楽しそうだ。

 そう言えば、この世界に水着はあるのか?

 そもそも泳ぐという習慣自体あるんだろうか?

 もし無いなら、俺が第一人者となって水泳や水着を広めてやろう。


 全ては妻達の水着姿を見たいがために!


 俺が可愛い水着姿の妻達を妄想し始めたとき、突然、水中から体長十メートルはある巨大な魚が飛び跳ねた。


「えっ!? 錦鯉にしきごい!?」



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