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報酬はボロッボロの……

 



 地上生活、百三十六日目。


 俺とカエデが『世界料理戦技大会』で優勝してから二週間が過ぎた。

 俺と【守護者契約】を結んだカエデは前にも増して料理の腕を上げたようだ。


 宿泊した客が料理のあまりの旨さに叫びをあげ、夕食時になると旅館のあちこちから感激の奇声が聞こえくるようになってしまった程だ。

 それでも元々職人気質なカエデは、さらに料理の腕を磨こうと研鑽を続けている。


 新しい料理の開発やこの世界に元々あるレシピの改良といった研究を続けているんだ。

 たまに俺もアウレナの情報検索をフルに活用し地球の料理を教えている。

 だから料理の味見や意見を求められる事も多くなった。


 カエデの守護属性である『戦車』は新しい世界を開拓しようとする守護属性だ。

 カエデならば料理の新境地を切り開き、世界一の料理人になってくれるに違いない。


 カエデとはすでに夜ラブな関係になっている。


 鬼人族の特性なのかは知らないけど、夜ラブ中のカエデは普段は髪に隠れて見えない二本の角が伸びてきて、その角が赤く光りを発するんだ。

 その姿がまた妖艶で美しく、角を優しく撫でるとくすぐったいらしく、小さく声を漏らすのがまた可愛らしい。


 角が光りだすと途端に夜ラブ行為に積極的になるのも大変喜ばしい。

 普段は押さえ込まれている鬼人族の本能が活発になるのかもしれない。

 この時ばかりは料理を作る側の立場から、俺を食べちゃう側に豹変するカエデだった。



 アサハナが提案した遊技場に賭場を設ける工事と並行して、広いロビーの一角を喫茶コーナーにする工事も進行中だ。

 ミチサブロウとかいう大工のおっちゃんが頑張ってくれてる。

 どちらの工事も来週には完成するだろう。


 モミジにはその喫茶コーナーで甘味や軽食、飲み物なんかを出してもらう予定だ。

 モミジはよっぽどカエデの事が好きなのか、仕事以外でもカエデにべったりで常に一緒だ。

 姉妹が仲良くする姿はいいものだ。


 ただ、俺がカエデに話しかけると殺気を放ちながら睨むのだけはやめてほしい。



 旅館の来客数も順調に伸びており、一日の客数が七十人を超える日が続いている。

 賭場や喫茶コーナーの完成で一日の客数が九十人を超えるだろうと、イチゴが得意の計算で割り出してくれた。


 今までいろいろ問題があったけど、なんとか旅館の経費を引いても利益を出せるまでになった。

 これも優秀な従業員達のおかげだ。


 そういえばアサハナを妻にすると決めてから一度も夜ラブしてないな。

 それも仕方が無いか。

 賭け事が好きな彼女は夜な夜な西町の賭場に出かけるので、あまり夜は旅館にいないからな。


 アサハナが遊び歩くのは特に気にしてない。

 他の妻達に対してもそうだが、俺は彼女達の自主性を尊重している。

 俺自身束縛されるのは嫌いだからな。


 そのうちアサハナのビック胸プリンを堪能できる機会もあるだろう。

 そのときまでのお楽しみという事だ。


 アサハナは女なのに柄の悪い奴らが集まる賭場に行っても大丈夫なのかって?


 それについては心配ない。

 アサハナ行きつけの賭場は白虎会傘下の賭場で安全だし、トラキチ親分の計らいで常に数人の厳ついボディーガードも同行しているからな。


 俺も聞いて驚いたけど、アサハナは東江の都では名の知れた闇医者で、裏の世界じゃ引っ張りだこなんだとか。

 アサハナに何かがあったら沽券に関わるとか言って、トラキチ親分が子分を護衛に付けてくれているというわけだ。




== 10時28分 ==


 旅館で朝礼を終えた俺は、オウカに呼ばれ城に来ている。

 チドリの護衛が終了したので、その見返りとして報酬をもらうためだ。


「アイゼナーグの特使の護衛、まことに大義であったなユラリよ」


「報告書に書いた通りだ。ほんと死ぬかと思ったよ、まじで」


「うむ。まさかお主でも苦戦する程の奴が現れるとはの。ほんに世界は広いのじゃ」


「それで、俺が今日呼ばれたのは報酬の件だろ? 約束通り大型空船をもらえるんだよな?」


「そ、それがじゃな……」


「まさか今になって無理だなんて言うんじゃないだろうな?」


「い、いや、一国の姫ともあろうものが、そ、そのような事あるわけないであろう?」


「ちゃんと俺の目を見て言ってくれ」


「だ、だだ、だいじょうぶなのじゃ! 船は用意できておるぞ!」


「ほんとかよ」


「本当なのじゃ! 客船にしようと最近完成した大型旅客船があるのじゃ!……しかし、ちょ〜とした問題があってのう」


「問題?」


「そうなのじゃ……。船はあるのじゃが、その船の動力となる大零石がないのじゃよ」


「え、つまり、動かないという事か?」


「おお! なんと察しの良いやつじゃ! ユラリは頭の回転が速いのじゃな! 賢いのう! 妾は賢いやつは大好きじゃ!」


「お世辞よりも動く船をよこせ」


「ぬぬ……他に動く船はないのじゃ……」


「日乃光の国にだってまともに動く大型軍艦は何台もあるんだろ? チドリを見送りに行った時にも見たけど、港の空船発着場に大きいのが何台も停泊していたじゃないか」


「それがのう。妾には軍艦をどうこうできる力はないじゃよ。権限は妾の父上にしかないのじゃ。父上は今病気で意識が戻らぬ状態じゃから、軍艦をお主が使えるようにする手続きは現状不可能なのじゃ」


「姫ちゃんよ、始めからそのつもりで俺をチドリの護衛につけたんだな?」


「ゆ、許せユラリ。妾も切羽詰まっておったのじゃ。他に頼めるやつもおらなんだし大型旅客船で許しておくれぬか?」


「動かない船をもらってもどうしようもないんだけど?」


「ならば他の物でどうじゃ? 領地や金か? 大名の身分か? それとも……妾、か?」


「最後のは無いな、無い」


「なんじゃとっ! 妾の何処が不満じゃと言うのじゃ!? 自分で言うてしまうが、こんなに可愛い女子は何処を探しても見つけられぬであろう!?」


「え、いや、俺の妻達はみんなすごく可愛いけど」


「はっ!! そ、そうじゃった! お主の妻はみな美人ぞろいじゃったっ!」


「しかし、参ったな。動かない船をもらっても邪魔になるだけだしな」


「それについては良い考えがあるのじゃ」


「何だ?」


「大昔に大陸中を荒し回った空賊が、盗んだ財宝を大型の空船とともにこの東江の都の近くに隠したという伝説があっての。なにぶん大昔の事じゃから空船は朽ちて使えんじゃろうが、動力に使われておる大零石は無事なはずじゃ。その零石を見つけ出し大型旅客空船に乗せ変えればいいのじゃ。のう? よい考えじゃと思わぬか?」


「空賊って海賊のように盗みを働くやつらのことだよな。そんな話は初めて聞いたよ。……まさか、テキト〜な作り話じゃないだろうな」


「作り話ではないのじゃ! この城に保管されている古文書に確かにそう記されておったのじゃ! 数千人の調査隊を動員し何度も探索したのじゃが、結局何も見つける事ができなかったらしいがのう」


「国が数千人を動員して見つけられなかったものを、俺に見つけろっていうのかよ」


「お、お主ならお茶の子さいさいじゃろ? なんせ手配人を容易く見つけ出し海竜さえ倒してしまう男じゃからの!」


「ん〜、まあ楽しそうではあるな」


「そうじゃろ、そうじゃろ。空船の変わりに財宝の手がかりが記されておる古文書をやるから、それで許してくれぬか?」


「仕方が無いな。それで手を打つか」


「さすが物わかりのいいユラリじゃ! 妾はお主のそういうところも大好きじゃ!」


「お世辞はいいから、早く古文書をくれ」


「すぐに従者に持ってこさせるのじゃ。ちょっと待っておれ」


 それからオウカの従者が恐る恐るといった様子で、今にも崩れそうなボロッボロの古文書を持ってきて俺に渡した。


「おい。この古文書の巻物大丈夫か? 開いた瞬間に崩れ落ちないだろうな?」


「だ、大丈夫だと思うのじゃ。妾の父上がまだ元気だった時に、あと一回は開けるだろうと言うておったし」


「あと一回!? 少なっ!」


「という事で妾はこれからお茶やお花や、踊り? の稽古の時間なのでこの件は終いなのじゃ」


なんだ今の踊り? の疑問符は。

嘘っぽいな。


「ではの! 財宝が見つかるとよいな!」


 オウカは逃げるように座敷を出て行った。

 なんかオウカにうまく丸め込まれたような気がしてならない。

 実は大型空船をもらえるなんて期待はしてなかったからいいけどさ。

 国の軍艦級の空船をほいほいと渡すわけがないからな。


 それにしても。国の調査隊が探して見つけられなかったのに、俺が探して見つけられるのか?

 まあ、可能性はゼロじゃないから、やるだけやってみるけど。

 その為にはこの巻物を崩れないように旅館まで運ぶ必要がある。


 確か古くから使われてきた日本の和紙の三大原料は、木の皮の部分の繊維を利用していたはず。

 つまりは植物。

 植物ならば俺の【食料庫】に入るという事だ。


 俺はその場で巻物を【食料庫】に入れた。

 こうすれば持ち歩いている間に朽ち果てることはない。

 その後俺は城を出て旅館へ帰った。


 まずは頼れるセルフィナに【天占術】を使ってもらうところからだな。




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